先を急がないと、又もや深みに嵌まってしまいそうだな・・・(汗)
実父、市郎右衛門との徹夜の論談の末、ついに、
『澁澤家の惣領の立場・・・』
から解き放たれた澁澤翁とその仲間たちは、いよいよ、血気に逸って
『攘夷決行・・・』 (=横浜焼き討ち・・・)
を謀ろうと画策し始めるのだが、此処で、京都に逃して居た
『尾高長七郎・・・』
を呼び戻し、その謀略への加勢を談じると、京都で、天下の趨勢(=空気)を吸い嗅いで来た長七郎が、自らの身を張って、
『無駄死になるから、止めろ・・・!』
と論じ、結果、決行寸前で、この謀略は潰(つい)えてしまう訳だ・・・。
そして、その意気消沈の中で、澁澤青年と従兄の喜作は、一介の書生と云うか浪士のような不安定な身分となって、江戸へ出て、更には京都へと上ることを目論見む訳だが、ここら辺りの有為転変を、澁澤翁は、この自伝の中で、血洗島の実家の生業で有った『養蚕業』での、
『蚕の生育・・・』
に喩えて、
≪あたかも 蚕 が 最初 卵 種 から 孵化 し て 四度 の 眠食 を かさね、 それから 繭 に なっ て 蛾 になり、 再び 卵 種 に なる あり さまで、 二十 四、 五 年間 に、 ちょうど 四 回 ばかり 変化 し て い ます。≫
(渋沢栄一・自伝 雨夜譚 ; 東林出版・ Kindle 版)
と表現して居る・・・。
つまりは、青年期の24、5歳までに、
『四回ばかりの大変化が有った・・・!』
と云って居る訳だが、その大変化の一つが、何と、自分たちが倒そうと目論んで居た幕府側の、大重要人物だった
『一橋家(慶喜公)の用人・平岡円四郎・・・』
との出逢いで有った訳だ・・・。
大河ドラマでは、この仁の役を、
『堤真一さん・・・』
が、如何にも鷹揚な江戸っ子気質口調で演じ、その女房役を、ジジイも昔からファンである
『木村佳乃さん・・・』
が演じて居たが、そんなことは、どうでも善いことだな・・・(汗)
天下に一大事を成す人間と云うのは、その人生の何処かに、天が配材したとしか想えない、
『鍵を成す人物との出逢い・・・』
と云うのが仕込まれて居る気がするが、澁澤翁にとっては、この平岡円四郎との出逢いが、当に、その人物だったと云っても善いだろう・・・。
平岡との出逢いで、
『一橋家の用人の家来(=武士)・・・』
の身分を得た澁澤青年と喜作は、元々は、武州の一介の百姓だった身が、あの身分制度の厳しかった武家社会の中で、今や、堂々と、
『名字帯刀・・・』
を許されて、動乱の気配の燻る京都へ上ることが適った訳だが、その成り行きを読むと、
『話が、出来過ぎて居る・・・⁈』
と想えるほどに、
『奇縁奇遇の連続・・・』
になるのだから、面白いと云うか何と云うか・・・(笑)
こう云う人物の人生を、
『(強運を)持って居る・・・!』
と云うのだろうな・・・!
そう云う『奇縁奇遇』に、半ば弄ばれるようにして、
『身を賭して、幕府を倒さねば・・・!』
と息巻いて居た、血気盛んな
『尊王攘夷論者・・・』
だった二人が、いつの間にか、
『一橋家の家臣・・・』
へと身を転じて行くのだから、人生とは、何とも面白く奇妙なモノなのだな・・・(笑)
ただ、此処で断って措かなければならないのは、澁澤青年と従兄の喜作は、この
『平岡円四郎の家来の身分を得た・・・』
と云うことで、決して満足したのでは無くて、これは、あくまでも、京へ上る上での
『誠に都合の善い方便・・・』
としてしか考えて居らず、その心根の奥は、やはり、
『幕府を倒して、新しい世の中を創らねばならない・・・!』
と云う志は、微塵も変わっては居なかったと云うことだ・・・(笑)
『将を射んと欲すれば、先ずは馬を射た・・・!』
と云ったところか・・・(笑)
(つづく・・・)