・外国を識る(大陸編)・・・(47) | 日本哭檄節

日本哭檄節

還暦を過ぎた人生の落ち零れ爺々の孤独の逃げ場所は、唯一冊の本の中だけ・・・。
そんな読書遍歴の中での感懐を呟く場所にさせて貰って、此処を心友に今日を生きるか・・・⁈

 この『R・Sさん』とは、過去三日間で、嫌が上にも気さくに言葉を交わすようになってしまって居たのは、それが、

『義父と娘婿の組み合わせ・・・』

と云う、

『珍しい関係への興味・・・』

が有ったからで、この

『凸凹(デコボコ)コンビ・・・』

が然も面白いらしく、殊有る度に声を掛けて来られるから、

『無口な大正生まれ(=御義父上様)・・・』

に代わって、どうしても、

『軽口・昭和生まれ・・・』

が応じるしか無いのだが、それ故に、どんどん親しみが醸される関係になって居た訳で・・・(笑)

 

 相手が、女性アナとは云っても、『若い・・・』と云う言葉とは縁遠いお方だから、ジジイが、ウキウキとして応えた訳では無かったのだが・・・(笑)

 

 しかし、眼の前に聳え建つ

『64メートルの大雁塔・・・』

を前にして、

『哭檄さん・・・、若いんだから、昇って来てよ・・・?!』

とは、あまりのお言葉である・・・(笑)

 

 それもだが、一緒だったオジサマ&オバサマたちが、この冒険に、二の脚を踏んだのは、

『昇っても善いですよ・・・!』

と云ったガイドさんの、その前の詳しい案内の中に、

『この大雁塔は、イタリアの「ピサの斜塔」と一緒で、片側が、地盤沈下を起こして、一番頂上では、1メートルほど傾いて居ます・・・!』

と云う一言も有ったからだ・・・(笑)

 

 皆が、それを聴いて、一斉に、若干遠目に全景を眺める仕種を試みた訳だが、確かに、塔の丁部が右側に傾いて居るようには、視える・・・(笑)

 

 まあ、今直ぐに倒れる訳では無いだろうが、そんな不安定な建物に、喜んで昇る物好きなど、そうそう多いはずも無ければ、その高さの数字を聴いただけで、誰もが、

『No Thank You ・・・!』

となって、不思議は無いのだ・・・(笑)

 

 簡単に暗算しても、

『20階建ての建物・・・』

なのだから、それを自分の脚だけで昇るなど、考えたくも無い・・・(笑)

 

(画像は、ameblo.jp より拝借)

 

 誰もが、そんな空気を宿す中で、何せ、地元放送局の人気アナとして、

『喋りが商売・・・』

の『R・Sさん・・・』は、咄嗟の機転か冗談かは識らないが、眼の前に居たジジイに、気安く悪戯っぽい口調で、

『昇ってみてよ・・・!』

と嗾けて来た訳だ・・・(笑)

 

 我ながらにも、

『モノ好き・・・』

を否定する資格が無いのは辞任はするが、何も、こんな難儀を、喜んでするほどのモノ好きさまでは無いと想い、戸惑ったジジイが、隣に立って居られた御義父上様の顔を視ると、頼みにするつもりだった御義父上様の眼は、他のオジサマ&オバサマたちの眼よりも嬉しそうな眼を宿して居て、好奇心を宿して、

『さあ、婿殿・・・、どうするな・・・?!』

と、不敵に笑って居るように視えた・・・(笑)

 

 穿った視方、読み方をすれば、我が独り娘を、断わりも唐突に、勝手に奪って云った男への

『意趣返し・・・』

の感情が隠されて居て、ここぞとばかりに、

『江戸の仇は、長崎で・・・!』

と云って居る眼にも視えた・・・(笑)

 

 そうなると、最早、『ぶりっ子婿殿』としては、逃げる訳には行かない・・・(汗)

 

 ここで逃げたら、Nippon に帰ってから、必ず、我が女房殿に、

『おまえの旦那は、昇り切らなかったぞ・・・!』

と皮肉っぽく云われるのは、眼に視える光景だし、それを聴かされた女房殿が、持ち前の負けん気を出して、悔し紛れに、

『どうして、昇らなかったのよ・・・?!』

と突っ込んで来るのは、決まり切って居る・・・(笑)

 

 そこまでの流れを、瞬時に頭の中に描いたぶりっ子婿殿は、最早、

『昇って、来ましょう・・・!』

と応えるしか無かった・・・(汗&笑)

 

 とは云っても、本職が建築屋の『ぶりっ子婿殿』の経験から云っても、

『20階建ての建物・・・』

を、機械を遣わず、自分の脚で一気に昇るのは、

『人生、初の経験・・・』

でも有る・・・(笑)

 

 だが、一度肯った以上は、威風堂々を宿して遣るしか無かった訳だが、その感想を、今、改めて想い出そうとしても、然程善くは覚えて居ない・・・(汗)

 

 薄っすらと憶えて居るのは、中央部に在る四角く囲まれた螺旋状の階段をグルグル廻ったのだけは憶えて居るし、時間にすれば、10分から15分くらい掛ったと想うが、ただ、途中から息が切れるほどに

『きつかった・・・!』

と云うことは、はっきり憶えて居る・・・(笑)

 

 だは、勢いに任せた『ぶりっ子婿殿』は、間違い無く、この

『長安の都の大雁塔・・・』

の最上階にまで昇り、7階の人の高さほどしか無い、細長い開口窓から顔を出し、下から、

『まだかしら・・・?!』

と云う思案顔で視上げて居る『薩摩のオジサマ&オバサマたちの一団・・・』に向かって、上から自慢気に手を振って見せたことだけは、しっかり憶えて居るし、それに向かって、嗾けた、当の『R・Sさん』が、燥いだ笑顔で両手を振って応え、手を叩いて居た光景も、然も蟻のように小さくでは有ったが、しっかり視えて居たにも忘れては居ない・・・(笑)

 

(画像は、ipentec.com より拝借)

 

 お借りした画像だが、息せき切って昇って来て、使命を果たした後、息を調えるようにして、この7階の窓から眺めた、

『長安の都の風景・・・』

は、確かに絶景だったことも、未だ、忘れては居ない・・・(笑)

 

(つづく・・・)