5月25日 火曜日

 僕は、勘違いをしていた。
 よく、誰かの書いた文字を読んで、あ、これは誰々さんの字だ、とすぐに確信が持てる人がいる。結構いる。僕は、それが出来ないのですごいなと思っていた。何がすごいか?その能力を手に入れる為に、努力をしたのだな、という事に対してすごいなと思っていた。
 僕だって、人が書いた文字を観察して、比べて、並べて、記憶する。その作業を努力して繰り返せば、それぐらいの判断は可能だ。でも、そんな事を出来るようになるほどの価値はないと思うから、努力しないし、これからもするつもりは無い。だから、そういう努力を多くの人がしているのだな、すごいなと思っていた。
 ところが、最近の友人との会話で、それが勘違いだと言う事が、判明した。僕は、皆が努力した結果獲得した能力だと思っていたのだけれど、どうやらそんなものは無いらしい。誰も、そんな能力を獲得しようと、意識していないし、出来て当然の事、何気ない繰り返しで苦労する事無く、当たり前のように出来る能力、多分に普通の事、誰でも出来るものらしい。
 僕がその判断が、全く出来ないという事が、冗談だと疑われるくらいに当たり前の事らしい。
 衝撃的な事実。


西尾維新「ヒトクイマジカル」「ネコソギラジカル 上」 読了