9月1日 火曜日

 9月だ。今年の夏は、マイルドでとても過ごしやすかった。もうすでに、昼間でさえ涼しいな、と思える位で、秋の気配を感じる。感じたと思ったら、すぐに去ってしまう。

 彼の放浪癖に戸惑いながらも、すぐに後を追いかけようとするけれど、道に迷ってその場に立ちすくんでしまう。このままでは、すぐに夜が更けて冬に包まれてしまう。けれど、ちゃんと僕のことを気にかけてくれていて、通った道のガス灯にあかりをつけて行ってくれる。涼しげな顔で、人の気も知らずに勝手に行ってしまうけれど、冷たくはない。それが秋だ。


角田光代『愛がなんだ』 読了

 友人の勧めで角田光代の書籍を読むことに。とりあえず4作紹介されて、その一冊を読む。面白い。
 恋愛の話ではあるけれど、ここには理想的なイメージが何一つ無い。夜景の綺麗な高層ビルのレストランで頬を赤く染めながら、二人でシャンパングラスを傾けるなんて夢は、微塵も感じさせない。皆が愚かで、自分勝手で、愛していて、愛されない。でもそんな彼女(彼)らが愛おしい。と思ったけれど、やっぱりこうはなりたくない。でもちょっとだけ、ほんのちょっとだけ自分に似ているかも。なんて事は絶対に認めたくない、けれど知らぬ間に惹かれている自分がいて、そんな自分に気付いてゾッとする。
 そんな、平和で不穏な愛の話。