『祖母の故郷に立ち、祖母を想う。
尊き祖母の微笑み。
美しき海に垣間見る・・・』
四国の徳島は祖母の故郷である。
祖母は小さい頃から丁稚奉公をしながら
人一倍良く働く人であった。
心優しい人で情に熱く、孫の俺を
心から愛して育ててくれた人でもある。
俺は言う迄もなく
「おばあちゃん子」である。
甘やかされて育ったことを
俺は此れっぽっちも恥だとは思っていない。
逆に心からありがたく思っている・・・
祖母は品のある粋な女性であった。
人を持て成すのが上手で、思い遣り豊かな、
人に好かれる性格の持ち主でもあった。
涙脆(もろ)く、一緒に映画を観ていると
必ず涙を流す人であった。
苦労性で、御人好しで、
人を疑いなく信じては裏切られていた。
晩年は寝たっきりの人のお世話をすることが
彼女の仕事でもあった。
それ故自らが亡くなって行く時は
誰にも世話をかけることなく
鮮やかにこの世を旅立っていった・・・
小学校を卒業して大阪の祖母のもとから
東京の両親のもとで暮らすことになった時、
祖母は大阪から東京迄
一緒に夜行列車に乗って
両親のもとへと連れて行ってくれた。
その満員列車の床の上に
新聞紙を敷いて駅弁を静かに食べながら、
これから互いに別れていくことを
深く惜しんだのである。
「正之、これでお別れやね・・・」
とあの何とも言えない品のある
哀愁ただよう関西弁のイントネーションで
祖母は俺の耳元で優しく囁いてくれた。
その時人生で初めて
心が裂かれる思いがした。
少年の俺には理解できない
淋しい・・・、また悲しい・・・、
言葉にならない、切ない思いに
駆られて涙した。
祖母が生まれたのは
徳島の牟岐という処である。
海がとっても美しくて、
ウミガメが卵を産卵することでも
知られている。
その海を眺めているだけで、
祖母の計り知れない心の広さを
覚えさせられる。
俺の体に流れる母から授かった祖母の血が
今も俺の中に巡っていることを
とっても嬉しく誇りに思う。
今日はその徳島を後にして
東京へと帰路につく・・・
祖母の故郷は
自分の故郷でもあることを確信しつつ、
鉄馬を馳せて
淀んだ娑婆なる都へと戻っていく・・・
祖母のあの優しい思いを胸に・・・
JESUSに感謝しながら・・・
あなたの今日の一日が
思い入れ豊かな一日であります様に・・・
『先祖に感謝することは
自分という存在に感謝することである。
それは大いなる方に
感謝することでもある。』
アーサー・ホーランド
2013.10.27
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