Another Earth

もう一つの地球が肉眼で見える位置に現れた。一方、ローダは交通事故を起こして相手の家族が死亡してしまった。


製作:2011年、脚本:マイク・ケイヒル、監督:マイク・ケイヒル


■ はじめに

登場人物
 ローダ(ブリット・マーリング)
 ジョン(ウィリアム・メイポーザー)

「もう一つの地球があって、それが肉眼で見える距離にある」というわりと大胆な設定。しかしテーマやストーリーは個人的・心理的なものである。
 


■ あらすじ

MITに進学が決まったローダは車を運転していた。車のラジオから「地球とそっくりの惑星が上空に現れた」というニュースが流れた。空を見上げると確かに大きな星が浮かんでいた。しかしそれに気を取られたローダは運転を誤り、衝突事故を起こした。

相手は家族が乗った車で、妊娠中の母親と中の子供、息子が死亡した。父親は病院に運ばれた。

ローダは刑務所に入り、四年後に出所した。「もう一つの地球」は、まだ空に浮かんでいた。

ローダは清掃業者に入社し学校の清掃を行うようになった。入社する時に「せっかくいい頭してるのに、なぜ、こんなところに?」と聞かれるが「誰とも接触しない仕事がいい」と答える。

本作は、カラー映画ではあるが、あまり色彩を感じさせないような風景が写される。清掃作業の時はそれらしい服装なのは当然だが、他の時もずっとズボンを穿いている。メイクもしていない。ローダはいつも暗い顔あるいは無表情な顔をしている。ローダのセリフは比較的少なく、(最初のうちは)ローダ自身のナレーションが流れる。

学校の清掃の現場に年を取った男性がいる。目が見えない。この男性は後ほど自分の耳に漂白剤を入れて耳が聞こえなくなる。同僚に聞けば、目が見えないのも自傷の結果。その男性の素性は明らかにされないが、自責するような事情があるようである。

スーパーで学生時代の友達と会うが、ローダが清掃をしていると聞いて、早々に話を打ち切って立ち去った。

事故の犠牲者の男性ジョンを探し出して訪ねていく。本当は謝罪のために行ったのだが、正直に謝罪ができずに「清掃作業のお試しで無料で清掃します」と言ってしまった。「営業区域が違うのでは?」と言われたが「会社が営業範囲を広げたいので」と弁解。

週に一度ジョンの家の清掃をすることになった。次回もジョンに謝ろうと思っていたのだが、同じように言いそびれてしまった。清掃作業が毎週続く。ジョンからは小切手を渡されるが、それは破って捨ててしまう。

二人は次第に親しくなってきた。しかし自分が事故の加害者であることは話さなかった。ジョンが事故のことを話した時は、後でトイレで泣いて吐く。

「もう一つの地球」は相変わらず空に浮かんでいた。ある科学者が通信を試みた。返信が戻ってきた。その相手はなんと、その科学者と同じ名前で、同じ組織に属していた。出生した病院も誕生日も同じ。相手の星にも、こちらと同じ人間がいるらしい。ローダは外に出て、もう一つの地球を見上げた。

「双方の地球は、お互いの出現後は影響を及ぼし合って少しずつ別の方向に変化しているのでは?」と主張する者もいた。これはローダにとっては「人を死なせてしまった」「取り返しがつかない間違いをしてしまった」という自責の念を和らげるものとなった。

「もう一つの地球に行こう!」のある会社が企画し応募者を募っていた。ローダは応募作文を書いて応募した。

ローダはメンバーに選ばれたが、その権利を譲ろうとジョンを訪ねて行った。「もしかすると奥さんや子供さんは、向こうでは生きているかも?」。この時に事故の加害者は自分であることを明かす。ジョンは怒るが、権利書を置いて出てくる。

今までは自宅の屋根裏部屋にマットレスだけを置いて寝ていたが、ベッドを入れて飾り付けをした。女性の部屋らしくなった。この頃からローダの顔が明るくなり、仕事以外の時はスカートを穿くようになる。

出発前にジョンのインタヴューが放送され、ローダは学校の清掃をしながら、その様子を見た。ジョンは期待しているようである。結果ジョンがどのような体験をしたかは提示されない。それは無用なことであろう。

最後の場面。四か月後、ローダの前にもう一人のローダが現れた。二人は無言で見つめ合う。現われたローダが一歩前に踏み出しローダに近づいた。