フェイバーはドイツのスパイ。連合軍の上陸地点を探る任務を与えられた。予想地点はノルマンディかパドカレー。パドカレーに対応する東アングリアの基地に潜入。多くの爆撃機が並んでいたが、それらはハリボテ。上陸地点はノルマンディと判明。
小舟を盗んで出航した。途中で潜水艦と落ち合う手筈。しかし嵐の中で遭難した。ストーム島に流れて気を失って倒れているところを牧羊を営むローズ夫婦に助けられた。他には灯台守のトムがいるだけ。
夫のデイヴィッドに見破られライフルを向けられたが崖下に落として殺害。灯台に行って無線機で潜水艦に連絡しようとしたがフェイバーの時計がわずかに遅れていたために不成功。
妻のルーシーはデイヴィッドの死体を見つけたが気づいていない振りををした。夜になって灯台に車を走らせた。無線機で当局に状況を報告。フェイバーが侵入しようとしたので、斧を叩きつけてフェイバーの手首を切断。
フェイバーが放火し、その対応をしている間に、フェイバーは無線機で潜水艦に連絡しようとする。ルーシーが停電させて無線機は使えなくなった。
朝になってフェイバーは沖に見える潜水艦に向かって崖を降りていく。ルーシーが追いかけて拳銃を撃つ。フェイバーは浜辺のボートに乗り込んだところで絶命。
製作:1981年、脚本:スタンリー・マン、監督:リチャード・マーカンド
■ はじめに
登場人物(キャスト)
ハインリッヒ・フェイバー(ドナルド・サザーランド) 「針」、ドイツのスパイ
デイヴィッド・ローズ(クリストファー・カザノフ)
ルーシー・ローズ(ケイト・ネリガン)
ジョー・ローズ(?) デイヴィッドとルーシーの息子
トム(アレックス・マクリンドル) 灯台守
ルーシーの父親(ジョージ・ベルビン)
ルーシーの母親(フェイス・ブルック)
デイヴィッドの母親(Barbara Graley)
ガーデン夫人(バーバラ・ユーイング) 下宿の主
ビリー・バーキン(フィリップ・マーティン・ブラウン) 駅員
本作には原作がある。非常によくできた小説である。主人公はドイツのスパイ。原作者はイギリス人のケン・フォレットだが「ドイツのスパイ」との単語から連想されるステレオタイプの人物ではなく、きちんと個性をもった人物として描かれている。
原作では、最後のストーム島の場面に至るまでの展開がかなり長いが、本作ではストーム島の場面が半分以上を占めている。ストーム島の部分も、それなりに改変されている。ただし本質的な改変はない。どちらが良いとかは別にして本作は非常に良い。
東アングリアに偽装基地を作り、その指揮官がパットンというのは史実。
■ あらすじ
◆ デイヴィッドとルーシー
1940年、デイヴィッドとルーシーは結婚した。デイヴィッドは戦闘機パイロット。しかし二人は結婚式の後で乗っていた車が事故を起こし、デイヴィッドは車いすの生活となった。
後の展開を先取りしておけば、二人はストーム島に移住し羊を飼っている。息子のジョーがいる。
島には灯台がありトムという人物が働いている。二週間に一度フェリーが来るのみである。
ルーシーの母親が訪ねてきて心配するが、ルーシーは「ここが私の居場所よ」と決意を示す。デイヴィッドは怒りっぽく、また厭世的になっているが、それは無理もないことである。
◆ 戦局が変わった
ハインリッヒ・フェイバーは、イギリスに潜入したドイツのスパイ。暗号名は「針」たが、それは左腕に長い針を隠しており、それを武器にしているからである。
最初は鉄道員として潜入していた。鉄道の状況は重要情報である。下宿に戻って本国に無線で報告していたところを下宿の女性に見つかってしまい、針で殺害して姿をくらます。
戦局は転換した。ドイツ軍はロシアではソ連軍の反攻に合い敗退し、また西部戦線でも一時の勢いはなくなり、連合軍がフランス上陸をうかがう情勢となった。
◆ 上陸地点はノルマンディー
フェイバーは連合軍の上陸地点を掴む任務を与えられた。予想地点はノルマンディかパドカレーのどちらか。
同僚のスパイが訪ねてくる。「情報を得た後、本国に戻り直接総統に報告すべし」という命令である。潜水艦がストーム島の近海で午後六時から午前六時に一週間の間、待機するという。
しかし同僚は尾行されており、秘密の露呈を恐れたフェイバーは、同僚を刺し殺して逃走する。
フェイバーは、モーターボートを借りて運河を移動し基地の偵察を行う。場所は東アングリア。パドカレーに対応する基地である。基地はパットン軍団のもので、戦闘機や爆撃機などが多数配置されていた。
基地に潜入して、そばに近寄ると、それらはハリボテ。上陸地点を偽装するためである。これでパドカレーの線はなくなり、連合軍の上陸地点はノルマンディと判明した。
◆ 出航
証拠写真を撮影してボートに戻ると、警官二人に職務質問され、二人とも刺し殺して逃亡。
同僚のスパイと一緒にタクシーに乗って打ち合わせ。同僚はタクシーを下りるが直後に逮捕。車も尾行されている。駅でタクシーを下りる。さらに追跡されるが、うまく追跡をかわす。
列車に乗って移動する。フェイバーが列車に乗ったことを掴んだ追跡陣は、途中で列車を止めて乗り込み発車させた。一両ずつチェックしていく。追跡陣の一員には、駅員時代の同僚ビリーがおりフェイバーの顔は知っている。注、この時ビリーは軍に入っており、捜査のために呼び出された。
ビリーを連結器部分で殺害、列車を飛び降りる。バイクを盗んで移動するが、しかし途中でバイクが故障し車に乗せてもらう。
夜まで待って港で船を盗んで出発する。しかし嵐になった。追跡陣はフェイバーが車に乗せてもらったことを掴む。船を盗んだ者は不明だが、フェイバーであると推測する。
◆ ストーム島に漂着
夜にルーシーは玄関先に男が倒れているのを発見する。助け入れるがデイヴィッドはフェイバーを怪しむ。第一スーツを着ている。「天気予報を見たのか?」「同乗者はいないのか?」「沿岸警備隊に連絡したのか?」と聞く。ルーシーも「手がきれいなので船員ではない」と判断する。
フェイバーは次の夜まで眠って目を覚ます。デイヴィッドは体がつらいようで早々に寝る。ここでなんとフェイバーとルーシーが関係を持つ。次の朝デイヴィッドは出かけて、二人は手をつないで散歩するが「これっきりにしよう」と話す。
◆ デイヴィッドと格闘
さらに次の朝、デイヴィッドとフェイバーはトムのところにでかける。トムが見当たらないのでフェイバーが様子を見にいく。フェイバーは無線機があるのを確認する。
帰ってくると、デイヴィッドがフェイバーに銃を構える。「フィルムを出せ」。注、ここでデイヴィッドがフィルムがあることまで、なぜ把握しているか不明。ストーリーが省略されているのか?
フェイバーは銃を奪ってデイヴィッドと格闘する。デイヴィッドは障害者にしては強いが、結局崖下に落とされる。ここでルーシーが車で近づいてくるが、ジョーと三人で家に帰る。
◆ 潜水艦との連絡が失敗
潜水艦が浮上して連絡を待つ。一方再度フェイバーとルーシーが関係を持つ。朝になりフェイバーが灯台に行って、勝手に無線機を操作して連絡を試みる。
しかし実はフェイバーの時計は潜水艦にある時計と比べて少し遅れており、時間切れで潜水艦は潜航する。ここでトムに発見されてトムを殺す。
◆ ルーシーがデイヴィッドの死体を発見
ルーシーがジョーと車できて崖下にデイヴィッドの死体があるのを発見する。とりあえず家に戻る。フェイバーが戻ってくる。「デイヴィッドはまだトムのところ」と言う。ルーシーは知らないふりをする。
ルーシーはジョーを連れてトムの所に行こうとするが、フェイバーは「ピクニックに行こう」と誘う。トム(とデイヴィッド)の殺害がバレるからである。三人で出かけて、また家に戻る。この間ルーシーはずっと知らないふりをしている。またフェイバーの主導で二人はセックス。
夜中になって、ルーシーは拳銃を取り出してコートのポケットに入れて、ジョーを連れてトムのところに行く。雨が降っている。夜中に雨の中を出かけたので、フェイバーはルーシーが事態を把握したことを認識し、走って後を追う。
◆ ルーシーが無線連絡
ルーシーは灯台まで来てトムが殺害されているのを発見する。無線機で連絡しようとするがフェイバーが家の外まで来たので拳銃を取り出そうとするがポケットに入れたはずの拳銃がなくなっている。
灯台に備え付けの銃を取り出してフェイバーを撃つが弾がなくなる。フェイバーがドアを開けようとするので、そばにあつた斧を叩き付けてフェイバーの左手首を切断する。
ルーシーは無線で連絡し状況を報告するが「無線機を壊せ」と指示される。連絡手段がなくなるので怖くなる。
◆ ルーシーがフェイバーを撃つ
フェイバーが放火し、それに対応している間にフェイバーは無線機で連絡を始める。
ルーシーが無線機のところに行くと、フェイバーはジョーを抱えている。「ウィスキーを持ってこい」と言う。手首の傷を消毒をするためである。注、この時なくなっていた拳銃がフェイバーのそばにあるのを発見する。
ルーシーは仕方なくウィスキーを探しに行くが、電球を外し金属棒を使ってショートさせる。無線機は使えなくなった。
フェイバーは外に出る。すでに明るくなっている。沖には潜水艦が浮上している。そして岸に小さなボートがあった。フェイバーはボートに向かって降りていく。
ルーシーはフェイバーを追いかけて拳銃を撃つ。四発目と六発目が命中し、フェイバーはボートに乗り込んだ状態で絶命した。