目次:組み立て型製造業の生産管理と在庫管理


■ はじめに

組み立て型工場である製品をある数量、指定された日までに生産する計画があったとする。

MRPとは、この計画を実現するために、必要な部品の発注をどのようにすれば良いかを決定するロジックである。

ここで説明するものは「狭義MRP」と言われるもの。
 


■ 概要

製品を作るためには、いろいろな部品が必要である。その部品は部品業者に発注する。

部品は注文したら、すぐに入荷するものではなく、部品ごとに決まった日数が必要である。発注リードタイム。

製品は部品が揃ったら即座に生産できるものではなく、ある日数が必要である。生産リードタイム。完成日(の最後)が決まっているので、生産を開始する(最も遅い)タイミングが決定される。

製品一個を生産するための部品の型番と数量は、あらかじめ登録してある。部品表。

製品の生産数量が決まったら、部品表を参照して、必要な部品の型番と数量が計算できる。部品展開。

現在、在庫している部品の数量を引き算して、部品を発注する。生産開始のタイミングが決まっているので、部品の発注タイミングも決まる。
 


■ 補足

上記の説明を理解できない方はいないと思うが、正確にはかなりのコメントを必要とする。以下のコメントを挙げておくが、その詳細な展開は別途のところで行う。

部品の中には、さらに小さな部品から自社で生産するものがある。中間製品。中間製品も部品表に登録されており、こちらも部品展開する。

部品展開のロジックはいくつか考えられるが、実際には「レヴェル・バイ・レヴェル(Level by level)展開」というロジックが使用される。この時に生産リードタイムと発注リードタイムを引き算していく。結果として部品の発注タイミングが計算できる。

部品の発注リードタイムについては、特に大きな問題はない。部品のリードタイムは部品表に記述されている。細かく言えば、休日の問題とか、同じ部品が複数の業者に発注する時のリードタイムと価格の相違の問題とかがある。

他の製品の部品展開も同時に行っているので、同じ部品が発生することがある。同時期に発注される部品は数量をまとめる。同時期というのは、タイムバケット=time bucket(=時間バケツ)という単位。ただ製番管理という手法では、このまとめは行われない。

部品の注文は、一個単位でできるわけではなく、業者と部品によって決まる最低発注数量が決まっている。この数量に切り上げて発注する。発注ロットまとめ。

また製品の生産も効率的な行うために、生産の最低数量が決まっている。この数量に切り上げる必要がある。生産ロットまとめ。当然、部品の発注数量に影響する。

部品の発注は、在庫している部品数を減らして発注するのだが、他の製品に使用する予定の物があって、引き当てされている場合がある。補足、今回のMRP以前にMRPされた製品の部品。

生産リードタイムは部品表に記された数値が使用される。この数値は「過去の実績値から得られた、当該製品の生産を指示してから出来上がるまでの日数」である。過去の実績値であるが、問題発生を防ぐために、だいたいは過大な数値が記されている。この日数には他の製品を生産する日数も含まれている。

生産リードタイムの本質的な問題点は「工場の稼働状況を考慮していない」ことである。他の製品の注文が多量に発生しているかも知れないし、また製品がほとんど流れていないかも知れない。

本来は稼働状況を考慮して計算する必要があるる。だが、これを解決するためには、工場の各設備の能力、各作業者の技能、他の製品の生産計画を考慮して処理しなければならず、かなり大変なロジックが必要である。

上記のロジックはすでに知られたものが存在するが、それにしても基礎データの取得・設定に手間がかかる。

自社工場で生産する場合と協力工場で生産する場合がある。この問題自体はMRPの問題ではないが、生産リードタイムに影響する。部品表に長めの数値が登録される理由の一つ。

製品の生産計画が変更になった場合。変更とは数量あるいは納期の変更。この時MRPでは「正味変更/Net Change」というロジックが使われる。だが他の製品との絡みで部品の競合が発生する可能性がある。当然、納期の前倒しはできない場合がある。

前述のとおりMRPで作成された計画は、稼働能力・稼働状況を考慮していないので、実施不可能な場合がある。これについてはMRPの後工程で「能力所要量計画/CRP/Capacitance Requirements Planning」というものを実施してチェックすることになっている。

安全を見て部品表に長めの生産リードタイムを設定しがちになるのだが、それではゆるゆるの生産計画ができる。生産リードタイムを短めに設定して、MRPを部品発注タイミング決定のみに使用し、MRPの外で製品の生産計画を作れば、この問題は解決できる。
 


■ おまけ

今回の画像はジョーン・フォンテイン

(1944)情炎の海/若き人妻の恋/Frenchman's Creek