■ The House on 92nd Street
ビルはナチスに勧誘されてスパイとなった。しかし実はFBIの二重スパイである。
ビルはナチスの命令通り通信拠点を設置してナチスのスパイが集めた情報をドイツに送信した。当然その情報はFBIに傍受され改竄された。
ナチススパイの摘発は進んでいくが、一番重要なMr.クリストファーの正体が掴めない。


製作年:1945、監督:ヘンリー・ハサウェイ、原作:チャールズ・G・ブース


■ はじめに

◆ 登場人物
◇ FBI
 ビル・ディートリッヒ(ウィリアム・アイス) 主人公、二重スパイ
 ジョージ・A・ブリッグス捜査官(ロイド・ノーラン) FBI捜査官
◇ アメリカ内ナチス組織
 Mr.クリストファー(?) ナチススパイ組織の責任者、正体不明
 エルザ・ゲプハルト (シグネ・ハッソ) エルザ洋服店経営
 ハマーソン大佐(レオ・G・キャロル)
 アドルフ・クライン(アルフレッド・リンダー)
 マックス・コーブルク(ハリー・ベラヴァー)
 コンラート・アルヌルフ(ハーロ・メラー)
 ヨハンナ・シュミット(リディア・セント・クレア) ゲシュタポ
 ルイーゼ・ヴァジャ(レニー・カーソン) 美容師
 アドルフ・ランゲ(ブルノ・ウィック) 書店主
 ルエス(-) ストーリー開始時に死亡
◇ その他
 チャールズ・オグデン・ローパー(ジーン・ロックハート) 科学者
 シュトラッセン大佐(?) ドイツでの指示者

◆ 拠点
 エルザ婦人服店/ナチス側
 ランゲ書店/ナチス側
 美容院(名称不明)/ナチス側
 時計店(名称不明)/FBI側
 ビル・ディートリッヒの通信拠点
 


■ あらすじ

◆ クリストッファー

1939年、ニューヨークでナチスのスパイのルエスが交通事故死した。これには事件性はなく事故なのだが、ルエスは暗号化された文書を持っていた。

これを解読したところ「極秘研究プロセス97」の情報を探っていることが判明した。これは原爆開発計画である。それを探っているスパイのボスがMr.クリストッファー。しかしクリストッファーの正体は不明である。

◆ 二重スパイになる

ビル・ディートリッヒはドイツ系アメリカ人の両親を持つ学生である。ディーゼル技士の仕事を希望していた。

卒業後、ナチスの組織から接触があり高給の仕事を提案された。

ビルはこれをFBIに報告したところ、ブリッグス捜査官から「二重スパイに」と提案された。ビルはこの話を引き受けた。

ハンブルグに渡り、スパイとしての訓練を受けた。命令が記されたマイクロフィルムを腕時計に隠してニューヨークに戻った。

◆ ナチスの組織に接触する

命令の内容は次のとおりである。
1.すべての情報はディートリッヒを通じて本国に送信すること。
2.報酬については彼が支払う。
3.(口頭で指定された上司の諜報員以外の)他の諜報員との接触を禁止する。

ニューヨークに戻ったビルは、FBI側の秘密拠点の時計店に出向いて腕時計を渡した。

それを受け取ったブリッグス捜査官は、最後の項目を「すべての諜報員との接触を許可する」と変更してビルに戻した。

注、項目2.の「彼」ははっきりしないが、クリストッファーと推測される。

ビルは東92丁目にある「エルザ洋服店」に出向いた。ナチスの拠点である。FBI側もエルザ洋服店の監視を始めた。

◆ 通信拠点を開設する

ビルは指示に従って通信拠点を開設した。ここを通して各種の情報がドイツに送信される。

しかしここから発信される電波はFBIがキャッチし盗聴した後にドイツに送信される。場合によっては内容が改竄される。ビルの拠点自体もFBIによって盗聴されている。

ナチスのスパイがビルを訪ねて来てドイツへの送信を依頼する。FBIでは、その内容を把握するとともに、次々とスパイをリストアップしていく。

だがしかしクリストッファーの正体については誰も語ろうとはしない。あるいは誰も正体を知らないのか?

◆ プロセス97の実験データ

ビルは呼び出されてエルザ洋服店に出向いた。書類を渡されて送信を依頼される。

エルザと会った時に、エルザはタバコを吸わないにも関わらず、灰皿が置いてあり、口紅が付着した吸い殻があった。ビルはそれを盗んでFBIに分析を依頼した。

ビルは受け取った書類を(FBIを経由して)ドイツへ送信した。FBIでは、それがプロセス97の実験データであることを掴み、改竄の上で送信した。

◆ 実験データを漏らしたスパイを特定した

FBIはプロセス97の研究所にナチスのスパイがいるものとして捜査員を派遣した。

また口紅の分析からある美容院の美容師を特定した。ルイーゼ・ヴァジャ。

ヴァジャの人間関係からプロセス97の研究所のチャールズ・オグデン・ローパーという科学者を探し出した。

FBIはローパーを捕らえた。ローパーは天才的な記憶力の持ち主で、実験データを記憶してヴァジァの家でタイプしていた。

この関連から92丁目のランゲ書店も捜索された。

◆ ビルが捕らえられた

ハマーソンがドイツから持ってきた書類によって、ビルの命令書が書き換えらていることが判明した。

ビルは捕らえられて自白剤を投与されて尋問された。

◆ エルザ洋服店は包囲された

ここまで来て、FBIはエルザ洋服店を包囲して突入の構えとなった。

エルザは書類の焼却を命じた。エルザは事務所の奥に引っ込んだ。男性が出てきた。これがクリストッファー。エルザが男装したものである。

クリストッファーは必須の書類を抱えて非常階段に出るが、非常階段からもFBIの部隊が上がってきた。

エルザ=クリストッファーは射殺されて、ナチスのスパイたちは、逮捕または射殺された。

ビルは助け出された。
 


■ 補足「間諜/Dark Journe(1937)」

本作のエルザ洋服店は、洋服店とはいいながら、鉄柵に囲まれており庭を歩いて建物に到着する。洋服店とは思えない。

「間諜/Dark Journey(1937)」もスパイ映画で洋服店がスパイの拠点となっている。本作と同じように二重スパイ。どう見てもスパイには見えないヴィヴィアン・リーが主演している。

第一次大戦。マドレーヌ(ヴィヴィアン)はドイツのスパイでフランス軍の情報を流している。しかし本当はフランスのスパイでドイツに渡す情報は偽。

これは恋愛映画でもあってマドレーヌは、(相手がスパイであるとは知らずに)ドイツスパイと接触し、個人的な恋愛感情から、自分の素性をばらしてしまう。それでドイツのスパイ組織に捕らえられる。

しかし(フランスではなく)イギリスの諜報組織に助け出される。