■ Doctor Bull


製作年:1933、監督:John Ford


■ はじめに

多くの映画は、ラストの場面に向かって突き進む。しかし本作は、このような映画ではない。

◆ 登場人物(キャスト)
 ジョージ・ブル(ウィル・ロジャース) 医師
 ミューラ・ブル(エフィー・エルスラー) ジョージのオバ
 ジャネット・カードメイカー(ヴェラ・アレン) 未亡人、牧場経営
 チャールズ・カードメイカー(-) ジャネットの夫、すでに死亡
 メイ・タッピング(マリアン・ニクソン) 電話交換手
 ジョー・タッピング(ハワード・ラリー) メイの夫、足がマヒ
 ヘレン・アップジョン(ヘレン・フリーマン) 郵便物取り扱い
 Mr.アップジョン(Charles Middleton) ヘレンの夫
 ラリー・ウォード(アンディ・ディヴァイン) soda jerk
 ヴァーニー医師(ラルフ・モーガン) 他の町の研究所の医師
◇バニング一族
 バニング氏(Rochelle Hudson) ジュネットの父親
 バニング夫人(Tempe Pigott) ジャネット母親
 パトリシア・バニング(Elizabeth Patterson) ジャネットのオバ
 エミリー・バニング(Nora Cecil) ジャネットのオバ
 ハーバート・バニング(Berton Churchill) ジャネットの兄
 Mrs.ハーバート・バニング(Louise Dresser) ハーバートの妻
 ヴァージニア・バニング(?) ジャネットの妹
 


あらすじ

◆ ジョージ・ブル医師

場所は(たぶんコネティカット州)ニューウィントンの中の村。

ジョージ・ブルは村の中の唯一の医師。一人しかいないので外科、内科、産科など、なんでもやっている。近くにいないので獣医もやっている。

独身。オバと二人で住んでいる。

医師としての腕は確かなようだが、みんなの評判はあまりよろしくない。個性が強く声が大きいとか、忙しい時には居留守を使うとかいう理由もある。

もう一つの理由はジャネット・カードメイカーと付き合っていること。ジャネットは、この村に多くいるバニング一族の一人だが、結婚した後、夫が死んでしまい、今は独身。牧場を経営している。

ジョージは、わりとジャネットの家に入り浸っていたりするが、きちんとして付き合っているわけではなく、二人はグダグダの関係。診察依頼で家に電話していない時は、ジャネットの家に電話がかかってくる。

◆ ジョー・タッピング

ジョー・タッピングとメイ・タッピングは結婚したが、一週間後にジョーは仕事の時に事故にあってケガ、今は足がマヒしていて、ベッドに寝たきり状態。

メイは電話交換手、村の電話一人でつないでいる。かといって暇な時もあって、その時は本を読んでいる。

メイと背中合わせで仕事をしているのは、郵便を扱っているヘレン・アップジョン。郵便が列車で届けられると、これまた同じ部屋にある郵便受け箱に振り分ける。郵便は個々の家には配達されずに、取りに来るシステムである。

◆ ラリー・ウォード

店でsoda jerkをやっている。soda jerkとは、飲み物をサーヴィスする係。

彼がジョージの悩みの一つである。いつも何らかの症状を訴えて、夜昼お構いなく、ジョージを訪ねて来て「調子が悪いので見てくれ」と言う。ジョージの見解では何も悪くない。

先日は左下腹を押さえて「盲腸が痛い」と言ってきた。「盲腸は右側だ」と言うと「僕の盲腸は左側」と言う。

ジョージはラリーを無視しているが、それでも訪ねて来て、いろいろ症状を訴える。

しかしある日、可愛い女性を連れて来て「結婚する」と言うので、ジョージは牧師に電話をかけて結婚式をさせた。

◆ ヴュージニア

ジュネットの妹。家族からはハモンドという議員を勧められている。しかし他に好きな人がいるらしい。

店の片隅でヴァージニアがヤケ酒を飲んでいる。それを見たジョージは「送っていこう」と言うが、ヴァージニアは拒否して自分で運転する。

酔っ払い運転なので柵にぶつかる。後を追いかけてきたジョージが助ける。大したことはなく、足に包帯を巻いたくらいですんだ。

その後ヴァージニアの話を聞く。大学の友達のジョン・ミラーというアメフト選手が好きらしい。しかし今は喧嘩をしているとのことで、自分からは話しずらい。

ジョージが電話してジョンを呼び出す。ちょっと話してヴァージニアに代わった。二人は元通りに修復した。「先生は私の親友」と言われた。

後ほどヴァージニアの婚約が新聞に載った。ヴァージニアの家族は「裏でジョージ・ブルが動いた」と不満顔。

◆ ヴァーニー医師

出産が一件あった。命が危なかった少年を徹夜で診た、朝になって熱が下がって回復した。病名不明。それとメイミーという少女が死亡した。家族からは非難されるが「この病気は三割は死ぬ」と言う。

家に戻って休んでいると、オバが腸チフスではないかと言ってくる。急いで行ってみると発疹がでている。さらに11人が同様の症状。

ジョージは血液サンプルを持って別の町の設備が整っているヴァーニー医師を訪ねた。

結果は明日出ると言われる。またジョーの足のマヒの件も相談した。

◆ ジョーに注射

戻ってきてジョーの状態を見た。そしてジョーに注射をする。

「何の薬か?」聞かれるとなぜかジョージは、すこし躊躇した後に「長いラテン語の名前の薬だ」と言う。明示はされてないが、ヴァーニー医師の指示と思われる。

妻のメイに「体を温めてマッサージを続けろ」と指示をする。メイは仕事を休む。

◆ チフス

ヴァーニー医師の検査結果が届いた。チフスとの診断。ジョージは「おそらく建設現場からの水が原因」と言う。

学校に行って子供たちにワクチンを打った。「今日は帰ってよい」と言うと大喜び。

しかし親の一部からワクチンに反対する声がでてくる。

◆ 保健委員

そしてジョージがやっている保健委員を解任するという意見が出て来て教会に集まっている。注、保健委員と医師の仕事は関係ない。解任されても同じように医師の仕事はできる。

ジャネットはみんなに向かって解任反対意見を述べる。賛成も反対もいるが、ジャネットの出身であるバニング一族は解任派なので、睨まれる。

この話を掴んだジョージが登場。売り言葉に買い言葉状態となるが、ジョージは言いたいことを言って出ていった。

ジャネットは「一族の恥」と言われた。

◆ ジョーの足が動いた

ジョージはジョーの家に行った。まだメイが付ききりで看病している。

ジャネットが追いかけて来て、先ほど解任採決の件を伝えた。解任。ジャネットは怒った。「挫けないで戦うのよ」。

ここでジョーの足が少し動いた。また注射をした。「引き続き体を温めろ」と指示。

ジョーは車を走らせながら「ジョーの足が治ったっ!」と叫ぶ。

◆ ジャネット

ジャネットの家

ジョージは「(解任の)集会であんなことを言ったらみんなに睨まれる」と言うが、ジャネットは「あなたは鈍いのね。帰ってちょうだい。家で酒を飲めばいいでしょ」と反撃。

ジョージは帰ろうとする。ジャネットは知らん顔のまま。すると「帰りたくない気がしてきた」。

ジャネットはベッドの下から、死んだ夫が使っていたスリッパを出した。ジョージは靴を脱いでスリッパを履いた。

◆ ラスト

列車が到着し郵便物と新聞の荷物が下ろされた。

ジョージとジャネットが乗り込む。新婚旅行。杖をついているジョーとメイが見送った。