■ THREE STRANGERS
クリスタル、ジェローム、ジョニーは旧暦元日午前零時に観音像の前で、く宝じ馬券に当たることに加えて、それぞれの願いを祈った。
三人はそれぞれ悩み事を抱えていた。クリスタルは夫の浮気、ジェロームは借金、ジョニーは殺人事件の犯人として追われていること。
それぞれの問題が展開・集約された。クリスタルは「自分は妊娠した」と浮気相手を騙して離反させた。ジョニーは真犯人が捕まり釈放された。ジェロームは当てにしていた株が暴落した。
宝くじ馬券の期限を迎えた。宝くじ馬券が当たった。三人が集まった。


製作:1946年、監督:ジーン・ネグレスコ、脚本:ジョン・ヒューストン、ハワード・コッチ


■ 三人の出会い

 クリスタル・シャックルフォード(ジェラルディン・フィッツジェラルド)
 ジェローム・アルバトニー(シドニー・グリーンストリート)
 ジョニー・ウェスト(ピーター・ローレ)

◆ ロンドン1938年春

人通りがない夜の町を女性が歩いている。コートとスカーフ。特に急ぐ様子はなく、むしろ落ち着いてゆっくりと歩いている。

その後ろを男性が歩いている。男性が女性に声をかけた。女性はちょっと会釈をして、また歩いていく。

もう一度男性が声をかけた。すると意外な答え。「あなたを探していた」。

女性は男性を近くのアパートに連れて行き、二階の部屋に案内した。中にはもう一人男性がいた。

あ互いに名前はまだ知らない。しかし出会う必然性があったかのようである。

女性の名前はクリスタル・シャックルフォード、クリスタルと一緒に来た男性はジェローム・アルバトニー、部屋で待っていた男性はジョニー・ウェスト。この部屋はクリスタルの部屋。

◆ 観音様

ジェロームは「帰らせてもらう」というが、クリスタルは「それはないわ、お願いがあるの。座って」。ジョニーはおいてあったピアノを弾き始めた。

「お招きしたのは観音様に会わせるため。幸運と不運の女神、生と死の女神。中国で手にいれたの」。部屋の一角に立派な観音様の像がある。

ジェローム「非常に興味深いが我々と何の関係が?」クリスタル「旧暦元日の零時、三人の前で観音様は目と心を開くのよ。それが今夜なの」。

ジョニーはその話に理解を示す。ジェロームは疑問を呈するがアパートに残る。午前零時まであと五分。

◆ 宝くじ馬券

ジョニーはポケットから「宝くじ馬券」を出す。酒場で10シリングで買ったらしい。「青目が美しい女性だった」。クリスタル「信じれば何でも叶うわ」。

クリスタル「掛け金の総取りの権利が当たっても、売らずにレースの結果を見届ける」。

ジェロームは契約の書類を作る。三人は署名した。宝くじ馬券にも署名する。クリスタルは引き出しに入れた。後2分20秒。

残りの時間を静かにして待つ。開けた窓から風が入ってくる。ロウソクが消えた。ライトをつけた。午前零時。

ジョニー「観音様が微笑んだ」ジェローム「そんなバカな」クリスタル「ちゃんと見たでしょ。観音様は約束を守った、もう一つの願いも叶うわ」。「もう一つの願い」とは、儲かった金を元に何を実現したいかの願い。それぞれの内容は秘密。

補足。私のDVDでは「宝くじ馬券」となっている。詳細は不明だが、最初に「掛け金の総取り(→これもよく分からないけど)」の当たり外れがあり、次に競馬で掛けた馬が勝てば、さらに賞金が何倍にもなるという仕組みになっている。クリスタルが言うように、競馬の結果を見る前に売却することもできる。

後は結果が出るのを待つことになる。ジェロームとジョニーはアパートを出た。入れ違いに男がアパートに入ってきた。ジェロームは「彼女の夫だ。写真が部屋に飾ってあった」。
 


■ クリスタル・シャックルフォード

 クリスタル・シャックルフォード(ジェラルディン・フィッツジェラルド)
 デイヴィッド・シャックルフォード(アラン・ネイピア) クリスタルの夫
 ジャネット・エリオット(マージョリー・リオーダン) デイヴィッドの浮気相手
 ロバート卿(?)

◆ クリスタルの夫は浮気をしている

クリスタルの夫デイヴィッドは仕事でカナダにわたっている。自治領省の役人。そこでジャネット・エリオットという女性と浮気をしている。

クリスタルは、それでもデイヴィッドと別れるつもりはない。二人の不仲の原因はクリスタルが過去に浮気をしたせいらしい。

ジェロームとジョニーが出て行った後、デイヴィッドが来た。

クリスタルは「戻ると思ってたの。すごくうれしいわ。すべては私のせいよ。許して」と言う。しかしデイヴィッドは「過去はもう忘れた。新しい人生を踏み出すことになった。モントリオールの旧家の娘と付き合った。彼女はこちらにきている。結婚するつもりだ」と申し渡す。

クリスタルは「絶対に離婚はしないわっ!」と興奮した。デイヴィッドは出て行った。しばらくロンドンに滞在する。

◆ ロバート卿と会う

クリスタルはユニオンリーグ・クラブに出かけてロバート卿と会った。

デイヴィッドが自治領省の役人になれたのはロバート卿の推薦。

クリスタルはデイヴィッドのことを「成功してほしい」とお願いの形で話す。しかしその内容はむしろデイヴィッドのことをロバート卿に告げ口しているようである。

「夫の外での行状やスキャンダル。今日から注意してほしい」と「お願い」する。「夫は私の元に戻る。しかし一時のこと。長くは続かない、そのために人生を振るのには耐えられない」。

◆ 探偵に依頼する

クリスタルはデイヴィッドを呼び出した。デイヴィッドは冷ややかだが「今でもあなたに夢中。離婚なんて考えられない」。

さらに言葉を続けた。「あなたの目を覚まさせたいだけ、私に任せて、愛してるわ、あなたの望むものをすべてあげる、私はジャネットより役に立つわ」。

ここでクリスタルはキスをしようとする。デイヴィッドは拒否した。クリスタルは火が付いたタバコを手首に押し当てた。

デイヴィッドは怒ってクリスタルの首を絞めたが、途中で止めた。「なぜ止めるの?」「やったら君の思うつぼだ、私の破滅のためならば君は命もおしまない」。

デイヴィッドはでていった。クリスタルはドルゥー探偵社に電話した。以前から依頼しているところである。「さらに情報を集めて」。

◆ ジャネットを騙した

ジャネットがアパートに戻るとクリスタルが中にいた。

クリスタル「(訪ねてきたのは)不愉快だと思うけど許して。あなたは想像していたイメージと違うわ」。ジャネットは答えない。

「私には他に誰もいない、彼が戻ることを祈った。そして彼は戻った」「離婚を要求したと聞いたわ」「訪ねてきたときはそうよ、でも翌朝には。彼は私の夫よ」「でも私を愛してる」。

ここまで来てクリスタルは重大発言「彼を取り戻すわ、赤ん坊が生まれる」。クリスタルは答えを聞かないで部屋から出て行った。

ジャネットは泣いた。クリスタルはドアの外から泣き声を確認してニッコリ。

もちろんクリスタルが妊娠したと言うのは嘘である。

後日ジャネットをデイヴィッドが訪ねてきた。しかし管理人は「一昨日、カナダに発たれました」。
 


■ ジョニー・ウェスト

 ジョニー・ウェスト(ピーター・ローレ)
 アイシー・クレイン(ジョーン・ロリング)
 ベットラム・ファロン(バート・シェーン)
 ギャビー(ピーター・ホイットニー)
 検察官(アーサー・シールズ)
 ビーチ少佐(スタンリー・ローガン)
 プロクター夫人(ドリス・ロイド) ジョニーのアパートの大家

◆ ジョニー、アイシー、ギャビー

ジョニーがブルー・クラウンという酒場にいる。閉店間際。女性が入ってきた。アイシー・クレイン。「ここにいたの?戻ってきたのね」。

二人は店を出て、元居たアパートに行った。入り口でアパートの大家のプロクター夫人がいた。新聞を見ている。「ベルトラム・ファロンが共犯者の二人の名前を明かすのを拒否した」との記事。プロクター夫人は「二人」の下に赤線を引いた。

部屋に入るとギャビーがいた。アイシーは酔っぱらっているジョニーをベッドに寝かせて「ここなら好きなだけ飲んでいいのよ。外ではだめよ」という。

ジョニー「俺は無実だ」ギャビー「お前が逮捕されれば、ファロンのように間違いなく有罪だ」アイシー「ここにいれば見張っていられる」。

アイシーは出て行った。

事件はドナルド・フライという警備員が襲われ、その声を聞いてブラウン巡査が駆けつけたが、ブラウン巡査は殺害された。フライは「ブラウン巡査は死亡する前に犯人はベルトラム・ファロンと言った」と証言した。

◆ ジョニーとギャビーはアパートを出た

二人が事件報道の新聞を読んでいると、ノックしてプロクター夫人が入ってきた。

「たまにはカードゲームをしにくるといいわ」とニコニコしながら話すが、家賃値上げの話を出す。週に10ギニー。

ギャビーは一瞬ナイフを手に持つがジョニーが止めた。ジョニーは「少し前払いする。残りは数日後」と言って今までの家賃を出した。

その後、二人は荷物をまとめて出て行った。

◆ ファロンの裁判

アイシーの証言。「ベットラム・ファロンとずっと一緒にいました。ジョージ・A・ビーチ少佐も一緒でした」。

ビーチ少佐の証言。「ファロンの家にいました。ベットラム・ファロン、とアイシー・クレインと一緒でした」。

ここまでは良かったが、ビーチは、少佐は自称であること、医薬品を盗んだことなど、いろいろと指摘された。検事は「これほど信用できない不実な人物はいません。証言を記録から削除を」と要求した。

アイシーは出て行った。

ここで弁護士は「被告は、無罪から有罪に主張を変えました」と方針を変更し、情状酌量を狙う。

◆ ジョニーが逮捕された

アイシーは、二人がアパートから消えたので探した。二人が橋の下にいるところを発見。

アイシーはギャビーがいない時に自分の気持ちを話した。「あなたの半分でも知識があれば、世界は違ったのに」「俺の魂は欠けてる」「ここを乗り切れば大丈夫。私がついてるわ。あなたみたいな人は初めて」。

アイシーは子供の時に虐待された話をして、ジョニーに出会って癒されたことを話した。

アイシーはブルー・クラウンと言う店の前で落ち合うことを約束して立ち去った。

ブルー・クラウンの前。ジョニーが来た。花売りの女性が近寄ってきた。いったん断るがスミレの花を買った。

しかしジョニーは約束と違ってブルー・クラウンの中に入った。バーテンが「後ろに気をつけろ」と囁いた。

誰かに声をかけられた。「どこかであったな、人の顔は忘れない。名前は?」。ジョニーは「ジェームズ、アロイシウス・マーガトロイド」。しかし「ジョニー・ウエストの特徴に近い、近くの警察まで散歩しよう」と言われた。

外ではギャビーとアイシー。「中で飲んでるに違いない」「すぐに来るわ」。ギャビーは店に入ろうとするがアイシーが引き留める。「警察が見張っている」。

ジョニーが捕らえられて出てきた。ジョニーはスミレを捨てた。アイシーはそのスミレを拾った。二人はジョニーを見送った。

◆ ジョニーは釈放された

列車の中。二人がコンパートメントにいる。一人は手首を縛られている。ファロン。

ドアを叩く音。ドアを開けると、入ってきた男はファロンをナイフで刺した。ギャビー。ギャビーは逮捕された。

ジョニーは鉄格子の中。鉄格子が開けられた。「ファロンが殺された。犯人も捕まった。ティモシー・ディレイニーだ」「それはギャビーだ」。「ファロンは死ぬ前にお前の無実を告白した」。

ジョニーは刑務所長のところに連れて行かれる。途中で鉄格子の中からギャビーが声をかけた。ギャビーは「アイシーは偽証罪で投獄されている。しかしすぐに釈放される。二人とも幸せにな」。

ジョニーは釈放された。
 


■ ジェローム・アルバトニー

 ジェローム・アルバトニー(シドニー・グリーンストリート)
 レア・ベラドン夫人(ロザリンド・イヴァン)
 ガイシング会計士(?)

◆ レア・ベラドン夫人

ジェローム・アルバトニーの弁護士事務所。レア・ベラドン夫人が訪ねてきた。

ベラドンは「今日は配当金の支払いでしょ」と言うと、ジェローム「銀行に預けました」と答えたが、実は嘘。支払いの見込みは立っていない。

ベラドンの夫はすでに死亡している。ベラドン「ようやく夫のロビンと意思疎通できるようになった、ロビンがなくなってから二年かかった」。

ベラドンが空間の一点をみつめているので「ご主人の姿が見えているんですか?」「姿は見えないけど、感じるの。でも声ははっきりと聞こえるわ」。

ベラドンは帰った。ジェロームは考えた。ケースに電話を掛けた。「南アフリカ鉱山の株は売るべきか?」「若干の損失が出る」「金が必要だ」「同社の株は上がるはずだ」。

電話を切って、また考えた。「信託の流用に関する法律書」を読んで、また考えた。

◆ 株式が暴落した

株式が暴落した。「火曜までに追加保証金を2000ポンド」の手紙が届いた。ジェロームはガイシングに電話をした。「君の勧めで株を買ったんだ。数日待ってくれ」。

しかし少々時間稼ぎをしたところで見込みはない。顔の汗を拭く。

ジェロームはベラドン夫人と会った。「何か問題があるの?」「とんでもない。ご主人がなくなって二年。あなたは今が女ざかり。ご主人の代役をさせていただきたい」。

ジェロームは切羽詰まって、とんでもないことを言い出した。ベラドン夫人は落ち着いて答えた。「大事なことをお忘れに。夫は今でも生きてるの」「実体がない」「夫が帰ってきたわ」。

ジェロームは追い返された。

◆ ジェロームは拳銃を出した

ジェロームは二人の使用人に「今日は帰ってよい」と言って帰宅させた。

ベラドン夫人に謝罪の手紙を書いた。そして引き出しから拳銃を出した。

床を汚さないように新聞を広げて敷いた。椅子に座った姿勢で、拳銃を自分のコメカミに当てた。

床の新聞を見た。「観音が一番人気の総取り権を獲得」。
 


■ ラスト

◆ クリスタルはジェロームの要求を拒否する

新聞を見て、ジェロームがクリスタルを訪ねてきた。

二人は二つの話をする。一つはジョニーが捕まったので「このニュースをジョニーに知らせるかどうか」と言うこと。二人で分ければ、分け前が増える。注、この時点ではジョニーは釈放されたことを知らない。

もう一つはレースの結果を見ないで権利を売るか否か。最初の約束で、この時点では売らないで、もっと大きく狙うということになっている。もし優勝すれば、さらに取り分が多くなる。しかし優勝しなければゼロ。

しかし金に困っているジェロームは、今すぐ売却したい。クリスタルはジェロームの要求には応じない。

一方、釈放されたジョニーも、この情報を得て、クリスタルのアパートに向かった。

◆ クリスタルは殺された

ジェロームは観音像を振り上げてクリスタルを殴った。クリスタルは倒れて動かなくなった。

ここでレースがスタートした。接戦だったが、コーンクラッカーが一着となったっ!

ジョニーが入ってきた。ジェロームは「二人で分けて15000ずつだな」と言う。ジェニーは「宝くじ馬券の裏に三人の署名がある」。「三万ポンドを捨てるのか?」「今となっては殺人の証拠だ」。

二人は部屋から出た。

その後にデイヴィッドが入ってきて、クリスタルの死体を発見した。

ジェロームは外に出て、頭がおかしくなって叫びまわった。「殺人事件が起こった。俺の頭に悪魔がいる」。

ジョニーがいる酒場にアイシーが入ってきた。「釈放されたわ」。二人は抱き合う。ジョニーは宝くじ馬券を燃やした。
 


■ 出演作

◆ ジェラルディン・フィッツジェラルド
「嵐ヶ丘/WUTHERING HEIGHTS(1939)」

◆ シドニー・グリーンストリート
「壮烈第七騎兵隊/They Died with their Boots on(1942)」
「クリスマス・イン・コネチカット/CHRISTMAS IN CONNECTICUT(1945)」

◆ ピーター・ローレ
「マルタの鷹/The Maltese Falcon(1941)」
「カサブランカ/Casablanca(1942)」
「地球の危機/Voyage to The Bottom of The Sea(1961)」

◆ アラン・ネイピア
「戦慄の調べ/HANGOVER SQUARE(1945)」
「恐怖省/MINISTRY OF FEAR(1944)」
「裏切りの街角/Criss Cross(1949)」
「悲恋の王女エリザベス/Young Bess(1953)」
「追いはぎ/The Highwayman(1951)」
「大城塞/Tripoli(1950)」
「船乗りシンバッドの冒険/Sinbad the Sailor(1946)」
「心の旅路/Random Harvest(1942)」

◆ アーサー・シールズ
「黄色いリボン/She Wore a Yellow Ribbon(1949)」
「わが谷は緑なりき/How Green Was My Valley(1941)」

◆ スタンリー・ローガン
「進め龍騎兵/The Charge of the Light Brigade(1936)」

◆ ドリス・ロイド
「悲恋の王女エリザベス/Young Bess(1953)」
「遥かなる我が子/To Each His Own(1946)」
「まごころ/Devotion(1946)」

◆ ロザリンド・イヴァン
「緋色の街/スカーレット・ストリート/SCARLET STREET(1945)」
「容疑者/The Suspect(1944)」


「アンダーカバーブルース 子連れで銃撃戦/UNDERCOVER BLUES(1993)」
「エイリアンVSヴァネッサ・パラディ(2004)」
「ゲッタウェイ/THE GETAWAY(1994)」
「その女を殺せ/THE NARROW MARGIN(1952)」
「ディナー・ウィズ・フレンズ/DINNER WITH FRIENDS(2001)」