■ Nocturne
悪名高いプレイボーイの作曲家キースが死亡した。状況からみると自殺のようである。
しかし刑事のジョーは、キースは自殺するような人間ではなく、また何人もの女性から恨みを買っているので、自殺説に疑問を持つ。
関係がありそうな女性を一人ずつ調べていく。アリバイがない女性フランシス。ジョーはフランシスを好きになる。
怪しい大男、フランシスの妹、ピアニスト、そしてキースの家政婦...。


製作:1946年 脚本:ジョナサン・ラティマー 監督:エドウィン・L・マリン 


真相だけを知りたければ「補足」を参照。


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 ジョー・ウォーン(ジョージ・ラフト) 刑事
 ウォーン夫人(メーブル・ペイジ) ジョーの母親
 キース・ヴィンセント(エドワード・アシュリー) 作曲家
 フランシス(リン・バリ) 女優
 キャロル(ヴァージニア・ヒューストン) 歌手、フランシスの妹
 ネッド・フォード(ジョセフ・ペヴニー) ピアニスト、通称フィンガーズ
 エリック・トルプ(バーン・ホフマン)キーボードクラブの従業員
 スーザン・フランダース(マーナ・デル) ヴィンセントの家政婦
 グレイス・アンドリュース(?) ダンス教師、フランシスの知人
 クララ(グレタ・グランステット) 壁の写真の女性の一人
 ビリングス夫人(リリアン・ボンド) ジョーの母親の友達
 


■ あらすじ

◆ キース・ヴィンセントが死亡

プレイボーイとして悪名高い作曲家キース・ヴィンセントが自宅で死亡した。頭を拳銃で撃たれたもの。そばには拳銃が落ちておりヴィンセントの指紋があった。また手には硝煙反応があった。自殺のようである。

ビアノにはまだ作成途中の曲の楽譜があった。部屋の壁には9人の女性の写真が並べて飾ってあった。しかし一つだけ間が抜けていた。

住み込み家政婦のスーザン・フランダースは「自分は寝ていたので、知らなかった」と言う。

警察幹部は自殺との判断だが、刑事のジョー・ウォーンは疑問を抱いた。金、女に不自由しておらず、立派な自宅があり、また性格的にも自己反省するような人物ではない。

◆ 目撃者がいた

実は目撃者がいた。我々である。

冒頭、キースがピアノを弾いている。そばに女性がいる。足だけが見えている。キースはピアノを弾きながら、壁に飾ってある女性のことも引用しながら「君とはもう終わりだ」と言っている。その嫌みが長々と続いていく。

そして突然銃声がしてキースが床に崩れ落ちた。キースの手は鍵盤に置いており、自ら拳銃を握ったりしていない。

犯人は不明だが、自殺でないことは明白である。

◆ アリバイを当たる

ジョーは写真の九人の女性のアリバイを当たった。それぞれを訪ねて行く。

その過程で、キースの女性に対する態度が酷いことが暴露される。しかし絶対に確実とは言えないものの一応みんなアリバイは確認できた。

だが、その過程で怪しい大男がジョーの周りをうろついた。署で調べるとキーボードクラブに勤務しているエリック・トルプ。

◆ フランシス・ランサム

女性たちの写真の中で一つだけ開いている女性は?ジョーは女性たちの写真を撮影したチャールズ・ショーン・スタジオに出かけた。次に飾られるはずの女性である。

フランシス・ランサムという女優と判明した。しかし、フランシスを訪ねて行くと、事件当時の行動をスラスラと述べた。

9:45、ゴッサム惣菜店。10:00に劇場、自分が出演した映画を見た。50ドルを崩したので記憶にあると思う。20分で映画館をでて、友達のグレイス・アンドリュースと会った。その後に帰宅。

その裏を取りに行く。ゴッサム惣菜店でフランシスの容貌を伝えると「そんな人はいっぱいいる」。

映画館では50ドルを換えた記憶はないとのこと。

グレイスはダンス教師。ダンスを教えてもらいながら聞くと「刑事がきたら、劇場で会ったと言ってちょうだいと頼まれた」と重大証言。

「俺が刑事かも?」「いや刑事なら帽子を被ってるはずよ」。

以前としてトルプがうろうろしている。

◆ キャロル

ジョーはフランシスの部屋を訪ねて行って「キーボードクラブ」に行こうと誘った。

そこではネッド・フォード、通称フィンガーズという男がピアノを弾いてキャロルという女性が歌っていた。フランシスの妹だそうである。

ジョーが事件現場から持ち出していた未完成のヴィンセントの曲をフィンガーズに演奏してもらうと「ヴィンセントの曲か?」と当てた。

その後別のところでキャロルと会って話すと、キャロルはフランシスが現場にいたことを認めた。

「(フランシスは)ヴィセントに惚れてたのか?」「姉に不利な話はしたくない」「フランシスが犯人か?」「勝手な解釈をしないで」。

キャロルがはっきりとは答えないので「俺たちは味方同士、俺はフランシスを好きだ、助けたい」というと「半年前、姉は彼を好きになった、しかし彼は冷めた、他の女と同じように捨てられて、姉は腹を立てた、火曜日の夜、姉は写真を取りに行って、別れを告げた」。

「銃は持ってたのか?」「それは姉に聞いて」。

◆ フランシスは否定?

キャロルから聞いたことをフランシスに裏をとると、フランシスははっきりとは答えない。しかし「ヴィンセントが死んでよかった」というようなことを言う。

ここで重大事件発生。なんと二人がキスをしたっ!

◆ 自殺偽装のからくり

ジョーの家。母親の友人がきていて、二人で事件のことを話している。

二人で拳銃を持っての実演。「犯人は自殺を強要する」「でもそれでは指紋が乱れるわ」「後で指紋をつけたのかも?」。

ジョーが帰ってきて、慌てて二人を止める。「銃で遊んだら危険だ」「空砲だから心配ないのよ」。

ジョーは母親に助けられて自殺が偽装されたからくりを理解した。

まずヴィンセントを射殺する。拳銃の指紋をふき取って、拳銃に空砲を入れて、死亡しているヴィンセントの手に掴ませて引き金を引かせる。これで拳銃に指紋が着き、手に硝煙反応が出る。

母親が「食事は?」と言ったが「殺人犯と食べてくる」と言って飛び出した。

ジョーは撮影所を訪ねてフランシスを追求したが、これまたはっきりとは答えない。さらに追及すると両手を前に差し出して「逮捕しなさいよ。できるなら」と切れる。

◆ ショーンが殺された

ジョーが帰宅すると、母親がショーンからの伝言を伝えた。「(夜)10時にスタジオに来てほしい」。

もう時刻をすぎているので、慌ててスタジオに行った。ショーンの死体を発見した。そして「フランシス、大至急」とのメモを発見しポケットに入れた。

さて警察がきた。ジョーは別の出口から抜け出して、空になっていたパトカーに乗った。

◆ フランシスが殺されかけた

ジョーはフランシスの家に行った。閉まっていたので、外にあったイスを投げつけてガラス戸を破って入った。

フランシスが倒れていた。フランシスをソファに寝かせた。「大丈夫か?ショーンが死んた」。

ヴィンセントの写真が飾ってあり、「ヴィンセントは死んで当然だった。でもねショーン、私はもう無理だ」とのメモがあった。

こちらにも警察が来たが、ジョーは抜け出した。

◆ キーボードクラブ

フィンガーズとキャロル(とトルプ)がいた。

キャロルに「君が撃ったんだろう」。キャロルは「半分は当たり。現場にいたわ。彼に会いたくてな何度も電話した、銃を持っていたら撃ってたわ、でも撃ってない」。

「では誰が?」「知ってるでしょ。自殺したの」。ここでジョーは自殺に見せかけたメカニズムを説明した。

ここまで聞いていたフィンガーズが「撃ったのは自分」と前に出た。拳銃を構えた。しかしここで警察が来て、フィンガーズとキャロルは連行された。

フランシスが現れて、ジョーと抱き合う。
 


■ 補足

本作には原作がある。フランク・フェントン & ローランド・ブラウン。原作題名は不明。本作を見てみると、場面が抜けていると思えるところが、いくつもある。原作ではきちんとつながっているのかも?

上の通りなので、ある程度の推測が入るが、真相は次の通り。

犯人はフィンガーズとキャロル。紹介はしなかったが、二人は夫婦。結婚しているにもかからわず、キャロルはキースに惹かれてしまう。

フィンガーズは「キースが本気ならば、自分は引き下がってもよい」と考えるが、そうではないので、キースを射殺。自殺の偽装をする。殺害現場にいた女性はキャロル。フィンガーズは窓の外にいた。

フランシスは、キャロルをかばうために、(ある程度は)自分が犠牲になろうとする。そのために「自分の写真がキースの部屋に飾られるはずだった」と写真スタジオを使って偽装する。そしてすぐにばれるアリバイをジョーに教える。

ショーンはフィンガーズとキャロルが犯人であることを知って二人を脅迫した。

フィンガーズとキャロルは、ショーンとフランシス殺しを計画。「ショーンがフランシスを殺し、さらに自殺した」ように見せかけようとした。二人はショーンを殺して首吊り状態にする。その後フランシスを殺そうとしたが、フランシスは軽傷ですんだ。

真相は以上。このような映画にはありがちだが、いくつかつっこみどころがある。目立つところだけ。

スーザン。「事件の時は寝ていた」と証言。紹介しなかったがジョーが捜査している時にスーザンが見え隠れしている。そしてスーザンが何者かに襲われてケガをする。誰に襲われたかの証言は拒否する。詳細は省略されている場面を見ないと分からない。

トルプの行動がかなり怪しい。おそらく我々に対する偽装。

フランシスの写真。ジョーは間に抜けている写真を探すために、スタジオに行って、現像されたばかりのフランシスの写真を発見する。これについては「姉は写真を取りに行って、別れを告げた」とキャロルが説明するが、これはおかしい。「次に飾る写真があるので、間を空けた」としなければならない。

ショーンはなぜジョーにスタジオに来るように伝言したのか?ショーンがしたのではない。これは本当はフィンガーズがジョーの母親に伝言したもの。

キャロルの髪の色。終盤近くにジョーはフランシスの部屋に行ってフランシスが襲われたところを助ける。そこでキャロルの髪の色が金髪の写真を発見する。ジョーはこれを元に「ヴィセントは、君の金髪姿をみていない、撃ってから色を変えた」と言うが、これが意味不明。省略されている場面を見ないと分からない。
 


■ 蛇足

ジョーの母親のキャラクタがなかなか秀逸。ジョーとの会話が面白い。

ジョーは母親に「殺人犯(フランシス)と結婚してもいいか?」と聞く。母親は「性格さえよければ、いいわ」と平然。
 


出演作

◆ ジョージ・ラフト
「暗黒街の顔役/Scarface(1932)」
「ガラスの鍵/The Glass Key(1935)」
「八十日間世界一周/Around the World in Eighty Days(1956)」

◆ リン・バリ
「血と砂/Blood and Sand(1941)」
「ハロー、フリスコ、ハロー/Hello Frisco, Hello(1943)」
「銀嶺セレナーデ/SUN VALLEY SERENADE(1941)」

◆ ヴァージニア・ヒューストン
(1951)追いはぎ/The Highwayman
(1947)過去を逃れて/Out of the Past
(1952)突然の恐怖/SUDDEN FEAR
(1946)殺人夜想曲/ノクターン/Nocturne

◆ ジョセフ・ペヴニー
「深夜復讐便/Thieves' Highway(1949)」

◆ マーナ・デル
「渓谷の銃声/ROUGHSHOD(1948)」