「映画についての用語」ではなく「映画に出てくる用語」の解説。すこしずつ追加していく。



■ アイアイサー/aye aye sir
元は船乗りの用語。軍隊でも使われるようである。上官の命令を肯定する返事であるが、「イエス」よりも強い肯定である。「イエス」は「上官の命令を聞き取った」と言うことだが、極論すれば「命令には必ずしも従わない」「いやいやながら従う」というようなことも含む。
「アイアイサー」は上官の命令を聞いて、強い意志をもって、それを実行するという返事。


■ アメリカ連合国
南北戦争当時の南部の国家名
南部:アメリカ連合国/Confederate States of America/CSA
北部:アメリカ合衆国/United States of America/USA
南北戦争の文脈で「ユニオン/Union」と言うと北部側を指す。
北軍の軍服は暗いブルー(紺)で、南軍の軍服はグレイ。


■ 駅馬車(Stagecoach)
駅馬車自体はアメリカ以外にもあり、また旅客輸送ではないものも存在する。
西部劇に出てくる駅馬車は、長距離の乗合馬車で、いくつかの駅を経由して終点の駅まで走っていく。


■ エスクロー/Escrow
商取引の証拠を保全する業者。契約書などをエスクローを介して、相手とやり取りする。それで商取引の証拠(契約内容や相手)などが、後からでもきちんと確認できるようにしておく。


■ オートマット/automat
1.自動販売機
2.自動販売機を並べたセルフサーヴィスの食堂


■ ガトリング銃(砲)/Gatling gun
複数の銃身を纏めて自動給弾して、順番に発射することで、銃弾を短い間隔で発射できるようにした銃(砲)。最初の試作品は南北戦争中。「ガトリング」は発明者の名前。


■ ガレー船
地中海地方で古代から近代まで使われた船。帆も備えるが、主動力をオールとする船。船の形や大きさで名前がいろいろある。
オールの漕ぎ手は奴隷であって、戦争で捕らえられた相手側の船の捕虜だったりする。多くの場合は漕ぎ手は鎖で船底に縛り付けられている。
その船が敗北するとかしない限りは漕ぎ手は一生使われる。注、古代においては、必ずしも奴隷ではなかったらしい。


■ 壁の穴強盗団/The Hole-in-the-Wall Gang
西部劇映画に頻出する実在の強盗団だが、多くの場合は名前を拝借しているだけ。
実際は複数の強盗団の連合体。ワイオミング州のジョンソン郡ホール・イン・ザ・ウォールが名前の由来である。


■ カンザスシティ
カンザスシティは西部劇映画に多出する。「カンサス」ではなく「カンザス」が正しい。
カンザスシティはミズーリ州とカンザス州にあるが、実は同じ都市。ミズーリ州の西端とカンザス州の東端にあり、市の真ん中を州境が走っている。
もちろん行政としての市は別である。


■ 郡(County)
日本の郡は単なる地域による町村のまとめである。
アメリカには次のような郡の形態がある。
1.郡制度がない州。
2.日本のように単なる地域のまとめの州。
3.郡政府があって行政機能を所有している州。
大きさはさまざまのようである。例えばロスアンジェルス郡というのはロスアンジェルス市とその周辺を含んでいるので非常に大きい。


■ 結婚許可証(Marriage License)結婚証明書(Marriage Certificate)
アメリカでは結婚する場合に、事前に「結婚許可証(Marriage License)」を取得する必要がある。
取得には身分証明が必要だが、州によっては、二人ではなく一人で行っても良い州がある。また証人が必要な州もある。
ラス・ヴェガスがあるネヴァダ州では、これが簡単なのでラス・ヴェガスで結婚するカップルが多い。
許可証を貰って牧師、神父、判事などで結婚式をしてもらう。
その結果として結婚証明書(Marriage Certificate)が発行される。


■ ゲームキーパー
「ゲーム」とは狩猟のこと。狩猟の森の管理をする人。狩猟者にアドヴァイスや不正な行為の禁止をする。結果として森の動物の正常な構成を維持する仕事。


■ サンタフェ街道(Santa Fe Trail)
西部劇によく出てくる街道。
ミズーリ州フランクリン ⇔ カンザス州 ⇔ コロラド州 ⇔ ニューメキシコ州サンタフェ
南北戦争頃にはカンザスシティくらいまで鉄道が敷かれており、さらに西方に行くには馬車を使う。


■ ジェシー・ジェイムズ、フランク・ジェイムズ、ヤンガー兄弟
実在のアウトロー一味。ジェシー(1847年9月5日?~1882年4月3日)が有名だが、フランクは兄。ヤンガー兄弟と組んでいた。
ヤンガー兄弟→コール、ジム、ジョン、ボブ。
西部劇映画にも多出するが、単に名前を拝借しただけの映画が多い。
ピンカートン探偵事務所は、彼らを追いかけた私立探偵として有名。


■ 爵位
爵位は高位な順番に次のようになっている。イギリスの場合。
公爵(Duke) → 侯爵(Marquess) → 伯爵(Count) → 子爵(Viscount) → 男爵(Baron) → 準男爵(Baronet) → 騎士(Knight)


■ 準州(Territory)
州に昇格する前の状態。


■ 私掠船
私掠船は海賊船と同じようなものだが、国家の許可を得て敵国の船を襲撃するもの。


■ 神父と牧師
神父(father)はカトリック。牧師(pastor,minister)はプロテスタント。
神父は独身が要求されるが、牧師はそのような制限はない。
カトリックはイエスだけでなく聖母マリアも大きな信仰対象。


■ スクーナー船
マストの数が少ない(3~5くらい)の小型の帆船。マストは中央線上に配置される。
 


■ 戦略情報局(Office of Strategic Services/OSS)
第二次大戦中のアメリカの情報機関&特務機関。CIAの前身。


■ ソング・プラガー(song plugger)、ソング・デモンステレーター(song demonstrator)
レコードが普及する以前の時代に、新曲の宣伝をする歌手や演奏者などを言う。


■ ダイナー(diner)
プレハブ式レストラン、あるい軽食レストラン。主に街道沿いにあるもの。


■ 地区看護師/district nurse
イギリスの制度。住民の健康管理を行い、簡単な治療をして必要ならば医師に連絡する。


■ 地方検事/地区検事(District Attorney)
各州には地方検事がいる。地方検事には選挙で選ばれる「州地方検事」と連邦政府から任命される「連邦地方検事」がある。
州地方検事は各州内の事件を担当し、連邦地方検事は複数州にまたがる事件を担当する。連邦地方検事の元締めがFBI。注、この分担がきちんとなされたのは、リンドバーグ息子誘拐事件(1932)から。
多くの映画には単に「地方検事」とされるが、多くは州地方検事のことだと思われる。
地方検事は管理職であって、個々の事件を担当するのは地方検事補(Deputy District Attorney(Assistant District Attorney))。検事補の中で一番偉いのが筆頭地方検事補(First Deputy District Attorney)。 注意、「Attorney」をよく「弁護士」と訳しているが、そうではない。「検事」「判事」「弁護士」のいずれかである。


■ 天使/Angelと妖精/Fairyの違い
共通点は両方とも性別がないこと。違いは以下の通り。
「天使/Angel」は神の使いであって、善の存在、天上の存在。キリスト教的な存在。
「妖精/Fairy」は人間の姿をした精霊、善悪は無関係、地上の存在、非キリスト教的な存在。
注意、「妖精」はキリスト教以外の間すべてのものを指すので、実際の様相はさまざま。


■ パートナー(Partner)
法律事務所やコンサルティング会社など、いわゆる「ファーム(firm)」での最高位の役職。
由来は「経営者のパートナー」という意味である。
日本では「パートタイマー社員」や「協力会社」の意味で使用されている。
上記の意味のほかに当然「配偶者」「恋人」という意味がある。


■ 陪審員制度
アメリカの陪審員制度は、日本の裁判員裁判と異なり、陪審員は、有罪(Guilty)/無罪(Not guilty)だけを決めて、有罪の場合に量刑を裁判官が決める。
しかし「(1949)陽の当たる場所」では、陪審員が量刑までも決めている。もしかすると州によっては異なっているかも。

補足。アメリカでは民事裁判も陪審員制度によって行われる。


■ 非法人地域(unincorporated area)
人口が少ないため行政組織がなく、上位の行政組織に管理される地域。
アメリカ、カナダ、オーストラリアに存在する。


■ ピンカートン探偵社/Pinkerton National Detective Agency/Pinkertons
1850年代創業の実在の探偵社。名前を変えて現在も存続している。
東部においては、警備会社でスト破りなどを行ったが、西部においては犯罪者の追跡などを行った。


■ ファーム(Firm)
工場や店舗を持たない会社。物品やサーヴィスではなく、知識を提供する会社のこと。
典型的には法律事務所(Law firm)、会計事務所(Accounting firm)、コンサルティング会社(Consulting firm)など。
farmではない。念のため。


■ ペントハウス
ビルの屋上にある立派な家。
それから転じて、屋上にある施設、倉庫などを意味する。
ホテルの最上階の立派な部屋を意味する場合もある。


■ ホームステッド法
1862年に施行された法律。
アメリカ西部の未開発の土地、1区画 160 エーカーを無償で払い下げる法律。
西部劇映画には、牧畜業と開拓者(農場)の争いを描いたものが多いが、この法律が背景にある。牧畜が行われている場所に農場ができて争いになる。
当時の牧畜は放牧であって、誰のものでもない土地に勝手に放している。そこにこの法律で土地を得た開拓者が進出してくる。法的に言えば開拓者が優先する。


■ 魔法使い(magician,wizard)、魔女(witch)、魔男?(Warlock)
magician - 悪意を持った魔法使い。本来男女は関係ないはずだが、男性イメージが付着している。
wizard - 悪意を持っていない(善意の)魔法使い。本来男女は関係ないはずだが、男性イメージが付着している。
witch - 悪意を持った魔女。女性限定。
warlock - 悪意を持った魔男?、男性限定。あまり使用されないが、witchに対応する言葉。


■ マスケット銃
ライフル銃以前の銃。弾は球形で前から弾をこめる。
「三銃士」は「The Three Musketeers」。三人のマスケット銃を持った男。


■ マンション(mansion)、アパート(apartment)
日本語ではマンションは「アパートの上等なもの」だが、英語では大邸宅を意味する。もちろん一戸建て。
英語では集合住宅はすべてapartment。


■ モハーヴェ砂漠
カリフォルニア州、ユタ州、ネバダ州、アリゾナ州にまたがる砂漠。
アメリカの最大の砂漠。映画の舞台として頻出する。
この砂漠の一角に「死の谷/デスヴァレー/Death Valley」がある。世界最高気温を記録した。


■ armory
武器庫


■ buck
「ドル」のこと。
他の意味もあるが、俗語ではドルの意味もある。
20bucksならば20dollars。
他にはgrand,G,largeは1000ドル。50grandsならば50000ドル。


■ bull shit(ブルシット)
直訳すれば「牛の糞」。普通の英会話では使ってはいけないが、映画ではよく出てくる。
検討に値しない話を持ち掛けられた時、不運に会った時、都合がよくないことが起こったときなど。
ジーザス・クライスト(Jesus Christ)も同様の使われ方をする。「イエス・キリスト」のことだが、神頼みをするのは、上記と同様の時なので。
上品に言えば Oh! My God を使う。


■ bullion 地金


■ bullwhip
牛を追うときに使う鞭。


■ bunch
「束」と言うことだが「悪党一味」と言う意味でも使われる。


■ Cattle Drive 牛追い
牛(Cattle)の群れを(売却などのために)遠くに連れていくこと。


■ Certified Accountant/Certified Public Accountant 公認会計士。


■ Dead on arrival/D.O.A.
到着時死亡。事件・事故で救急車や警察などが到着した時に、すでに死亡していること。


■ deserter 脱走兵。


■ DOG&CAT 男性と女性のペアの刑事あるいは警官。


■ dragnet 捜査網
「底引き網」のことだが、映画によく出てくるのは「捜査網」のこと。


■ fence 故買屋
「柵」の他に「故買屋」の意味がある。


■ finishing school 花嫁学校


■ henchman 手下


■ homicide 警察の殺人課


■ John Doe(ジョン・ドゥ)、Jane Doe(ジェーン・ドゥ)
1.名前を特定できない/名前を特定する必要のない/名前を出したくない誰かを表現する時の名詞
2.身元不明の遺体
John Doeの代わりにJohn Smithも用いられる。


■ Jury 陪審員団


■ moll - (誰かの)女
his moll→「奴の女」のように使う。原義は売春婦。


■ Manor House
Manorは荘園。イギリスの昔の荘園の中の屋敷。


■ Mother Mary
カトリックにおいては「Mohter Mary」と最初のMを大文字にすると「聖母マリア」の意味になる。
省略して「Mother」でも同じ。


■ Objection 裁判での「異議あり」


■ one-night stand/one-night love 一夜だけの関係


■ Q Ship
商船を偽装した軍艦。通常は大砲などに覆いをかけて、別の国の国旗を掲げている。
それで油断させておいて突然相手の船を砲撃する。砲撃する時には自国旗をあげなければならない。そうしないと条約違反。
イギリス軍がドイツ潜水艦に対応するために作った。第一次大戦、第二次大戦で登場する。
「(1943)潜航決戦隊/Crash Dive」(ダナ・アンドリュース、タイロン・パワー、アン・バクスター)ではドイツのQ Shipが登場する。


■ search warrant 捜査令状


■ smuggle 密輸


■ settlement house 救護施設
孤児や生活困窮者、ホームレスなどを支援する施設。


■ social security number/SSN/社会保障番号
社会保険関連の番号だが、身分証明になっている。1936年11月から。銀行口座と結びついている。


■ soda jerk
雑貨店や軽食店などで飲み物をサーヴィスする係。


■ spur 拍車
いわゆる「拍車をかける」の拍車。
拍車は馬に乗るときの靴の踵につけた車ないしは突起。形はいろいろあるらしい。
馬に刺激を与えて速く走るように合図するためのもの。馬に苦痛を与えて速く走らせるのではなく単なる合図。
馬がその合図を認識するために、馬を訓練しておく必要がある。


■ stampede 突進、暴走
西部劇においては牛や馬の群れの暴走を言う。


■ Territory 準州
一般的には「地域」の意味だが、(アメリカの)州/Stateに昇格する前の「準州」も意味する。


■ Torpedo Boat 魚雷艇、Patrol Torpedo Boat(PT Boat) 哨戒魚雷艇


■ Undertaker 葬儀屋


■ Werewolf 狼男
 



 


 

おまけ ⇒ 昭和記念公園2019年秋