ELISA

マリーの父親は売れない音楽家で、母親はデパートに勤めていた。
父親は姿を消し、生活に困った母親は、マリーを抱いて拳銃で自殺した。マリーは孤児院で育った。
マリーは18歳になって、孤児院を出て、父親を捜しにサン島に向かった。


製作:1995年、脚本:ジャン・ベッケル他、監督:ジャン・ベッケル


■ はじめに

1995年のフランス映画。孤児院で育ったマリー(ヴァネッサ・パラディ)が孤児院を出て父親を捜しに行く。マリーは17歳(途中で18歳)。ヴァネッサ・パラディは1972/12/22の生まれなので本作製作時には22歳。

115分の長さだが、半分過ぎのところでマリーは父親を探しに出がける。陽気にふるまっている場面と、そうでない場面が、わりとはっきりしている。意図的にやっているのだろう。
 


■ あらすじ

◆ パリ

マリーの父親ジャック(ジェラール・ドパルデュー)は元作曲家あるいは売れない作曲家であった。母親のエリザ(フローレンス・トマシン)は、家計を助けるために働きに出ていたが、それでも生活は苦しかった。ジャックは姿をくらまし、エリザはマリーを横に抱いた状態で拳銃で自殺した。エリザは二十歳。マリーは孤児院で育った。

同じく孤児院で育った同年代のソランジュ(クロチルド・クロー)と言う女性と10歳すぎくらいのアーメッド(セクー・サル)というアラブ系の男の子と仲が良い。だいたいは三人で悪いことをしている。例えば泥棒したり、結婚式に入り込んでぶち壊したり...。楽しそうである。このあたりはすっ飛ばしておく。

三人でしばらく孤児院を飛び出していたが、マリーは孤児院に戻ってきて、管理者にいろいろ文句を言って、自分の書類を貰って読む。母親や父親のことも書いてある。「半年もどこに行ってたの?」と詰問されるが平然と煙草を吸っていたりする。

その後、街中にあるロッカーから箱を取り出してトイレに入る。箱の中に絵葉書があった。絵葉書は(フランス北西部の)ブルターニュのサン島から出されており、ジャックからエリザに宛てたもの。絵葉書の裏はエリザという曲の楽譜。その他にエリザとマリーの写真。他のものは便器の中に投げ捨てた。それから自分のバッグの中から拳銃を取り出して眺める。なぜ拳銃を持っているのかは不明だが、エリザが自殺に使った拳銃。注、このロッカーの位置づけが不明。また後でソランジュに拳銃のことを聞かれて「遺産ってとこね」と答えている。

アーメッドを知人に預けてお願いした。「私は子供が欲しかった。喜んで面倒をみよう」との返事。ソランジュにはヴィデオメッセージを残した。「簡単に男について行ったらだめよ」などとだいたいは忠告する内容なのだが、それにはソランジュに対する親しみが込められており、ソランジュは泣き出した。

◆ サン島

マリーはサン(Sein)島に渡った。目的は母親エリザを自殺に追い込んだ父親ジャックに復讐するため。酒場に入って一人一人を見回す。女性の眼からすれば、野卑な感じの男性ばかりである。それでも一人一人を観察した。ジャックらしき人物は、すぐに見つかった。「ジャック」もみんなと同様に卑猥な話をしている。マリーは、確認するように「ジャック」を見た。

「ジャック」は喧嘩をして外に出た。マリーも外に出た。雨が降っている。「ジャック」はよろけながら歩いていくが倒れる。マリーは泣きながら近づく。そして拳銃を「ジャック」に向けるが、撃てないので拳銃を投げ捨てる。

次の日はマリーは一転して明るい表情。「ジャック」の家を訪ねてきて勝手に自転車を乗り回してはしゃいでいる。「ジャック」は、マリーが何者か分からず不思議な顔。「どこかで会ったか?」「昨日酒場で」。二人で自転車に乗る。名前を聞かれたので「エリザ」と答える。

「ジャック」の家には女性がいるので「結婚してるの?」と聞くが答えない。夜になって「ジャック」は海岸を飲みながら散歩。その女性が「体に悪いよ、戻ろうよ」と家に戻そうとする。マリーは二人を見ながら「ママ、(父親を)見つけた」とつぶやく。注、その後、この女性は登場しない。

次の日ジャックは海岸にいる。マリーが自転車で来て二人で寝転がって話す。マリーが裸になる。ジャックは自分の上着を着せる。「俺の前で尻を出すな」。「子供はいるの?」と聞くが答えない。ジャックの家に帰って食事をする。ジャックがもう一度名前を聞く。「言ったでしょ」「嘘だろ」。

ショーの会場。ジャックがピアノを弾いている。マリーが入ってくる。他の男から「(ジャックは)父親?」。「巡業でフランス中を周っている」。演奏が一段落してジャックと話す。ジャックと踊る。ジャックがマリーを見つめながら踊っている。

再びジャックはピアノ。ある男とダンスをしながら「(私と)デートするならピアノの男に500(フラン)」と囁く。その男がジャックに近寄っていく。ジャックとその男が喧嘩になる。マリーはさっさと逃げ出す(笑)。

ジャックが家に戻ってくるとマリーが中にいる。「一緒に住むわ」。ここでいろいろ口論。やっとジャックは自分の娘であることに気がついたようである。注、言葉では言わない。マリーは涙を流している。マリーは裸になる。「私を愛せる?」「愛してるよ」。

朝、ジャックが外にでる。マリーは家に残る。マリーはエリザ宛の手紙を見つける。受取人死亡で返送されてきたもの。それを読んで泣く。

最後は灯台の近くの岸壁。マリーが座っている。ジャックが寄ってきて抱きしめる。
 


■ 蛇足

ソランジュと二人で酒場に行って、その後男性二人と車に乗っていく場面がある。男性二人がいやらしいことをするので、拳銃で脅して車を奪う。その後駐車する場所がないので、他の車にぶつけて場所を空ける。二人は大喜び。

エリザが勤めていたデパートの売り場主任をラヴホテルに誘って中に入って「私はまだ未成年、犯罪よ」と脅して、服や下着を奪って、窓から投げ捨てる。売り場主任の言葉を信用すれば、エリザとは性的な関係はなかったらしい。