■ 組立型製造業の在庫管理の視点
・組立型製造業の在庫管理には、いろいろと注意すべき点があり、これらを概観する。
◇ 管理の対象が広い
・小売業ならば基本的には、商品となるものを仕入れて販売するだけで、この間の在庫を管理すればよい。
・製造業の場合には、部品を仕入れて組み立てて製品とする。
・製造業の場合には、次のようなものを管理する必要がある。
・部品、仕掛品、中間製品、製品
・中間製品とは製品を構成する部品ではあるが、外部から購入するものではなく、自社で組み立てるものをいう。オプション部品をつけるだけで、各種の製品を構成するような基礎的な製品も含まれる。
・仕掛品とは製造工程にある製造中の製品のこと。中間製品とは異なる。
・部品、中間製品、製品を在庫管理する必要があるのは論を待たないが、仕掛品を管理する必要があるのか?これを厳密に管理するには、かなりの手間がかかる。
・個人的には、仕掛品を管理する必要はないと思うが、完成までの日数が長い場合には、建設業で言う進行基準管理と同じで、管理する必要がある。
◇ 在庫場所
・小売りでは在庫場所は、店舗の倉庫、店舗の棚やあるいは流通センターなどが考えられる。
・製造業の在庫場所は、もっといろいろなものがあり、さらに単に場所がいろいろあるだけではない。
・工場の倉庫、工場の中の作業場所、協力会社の倉庫、協力工場の中の作業場所
・協力工場は一般には複数あり、作業場所は工場の中のいろいろなところに存在する。
・倉庫から出庫したら、在庫が引落されるのではなく、このような場所に移動する。
・それぞれの場所にある在庫を管理できなければならない。
・注、この問題は倉庫の中のロケーション管理とは別の問題。
◇ 不良品の管理
・部品の不良であれば納入業者に戻すことになるが、製造途中で不良が発生した場合には、次のような処理バターンがある。
・廃棄
・当該工程でやり直す
・前の工程に戻す
・これらの場合もきちんと、どのような状態かを含めて在庫管理される必要がある。
◇ 在庫引落タイミング
・倉庫から出庫された時点で在庫の引落を行ってはいけない。
・部品は倉庫から出庫され、工場内のある場所に置かれて、あるタイミングで仕掛品に取り付けられる。
・厳密に言えば、ここで在庫の引落が行われるべき。
・そしてこのタイミングで仕掛品の評価替えをする。
・教科書的に言えば、この通りだが、実際には難しいだろう。
・現実案としては、部品が取り付けられた(中間)製品が完成した時点で、部品の在庫が引落されることになる。
・(中間)製品が在庫システムに登録されたと同時に、使われた部品の引落が行われるようにする。
・注、倉庫出庫で、在庫引落をしている企業は、おそらくかなり多いはずで、このように処理していれば、在庫は過少に計上されることになる。
・この問題は、また別に解説する。
◇ 協力会社への支給
・必要な部品を協力会社が調達するのではなく、自社から支給することが広く行われている。
・支給には、有償支給と無償支給がある。
・経理の原則から言えば、有償支給したものは管理する必要はないが、生産管理の都合から言えば、個数は管理する必要がある。
・無償支給であれば、自社の財産なので当然管理する必要がある。
◇ 顧客からの支給
・同様に顧客から支給される部品がある。
・経理の都合から言えば、有償支給されたものだけを管理すればよいが、生産管理の都合から言えば、無償支給されたものも管理する必要がある。
◇ ロット管理
・納入された部品は検査に合格したものであるが規格内でも微妙な違いがある。また検査をすり抜けた不良品が混じっているかもしれない。
・製造工程でも機械の設定の微妙な違いや作業者に起因する違いがある。
・製品のロット番号を元に製造時の条件や部品のロット番号が分からなければならない。
・顧客に販売した製品に問題が発生した時には、この情報を元に製造時の条件や部品の納入ロットが分かる必要がある。
・部品の納入ロットを元に自社の記録や業者の記録を調査する。
◇ 発注の根拠
・製造業の部品の発注は、教科書に書いてあるような定期発注、定量発注などの方式で行われるものではない。
・需要予測なり顧客からの発注にもとづいた製品の生産計画をもとに部品展開したものである。
◇ 在庫評価
・期末には在庫金額を計算して経理システムに流す必要がある。
・部品の在庫金額は、移動平均法なり先入れ先出し法なりの採用している方式で計算される。
・(中間)製品の在庫金額は、原価管理システムで計算された金額を使用する。
・原価管理システムからのデータが信頼できるものかは、多くの企業では怪しいものであるが、これが正式なやり方。
・一方顧客仕様で生産している場合などは、納入価格は決まっているだろうから、これを元に計算する方式もありだと考える。
・仕掛品の在庫評価は、かなり難しいだろう。先ほどの在庫引落を(中間)製品完成時に行うということであれば、仕掛品はなく部品として在庫評価を行うことになる。
・注、在庫評価は、同一年度では、複数の評価方法を使うことは許されない。仕掛品の評価はこちら、部品の氷菓はあちらといったこと。
◇ 製番管理
・製番管理で生産している場合は、製番ごとに部品を管理する必要がある。
・最下位の部品まで製番にしているならば、当然製番ごとに管理する必要がある。
・多くの生産管理システムでは、上位では製番であっても、下位ではMRPで回せるようになっている。
・特殊な部品でなければ、部品レベルでは、MRPでやるのがよいように思う。
・製番で管理している場合は、製番を指定して製品・部品が分からなければならない。
◇ 在庫管理システムのキー項目
・ざっと荒っぽい説明だったが、製造業における在庫管理システムのキーとなるのは、どのようなものだろうか?
・以下のものがキーとして考えられる。
1.製品・部品のコード
2.在庫場所(自社工場、協力会社工場や工程の場所)
3.製品・部品の状態(良品、不良品(不良の状態、処置の方法))
4.ロット番号
・原則は、このようになるが、これを緻密にやろうとすると、多くの場合は破綻する(と思う)。
・生産している製品の種類によるが、2,3はある程度まとめてコードを割り振るのが現実的かと思う。
・製番管理をしている場合は、製番をつける必要がある。
・ロット番号は現品をみれば分かるようにし、製品の生産記録につけておく。
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