■ 生産管理業務
◇ はじめに
・(組立型)製造業の生産管理業務について解説した。製造業の一般社員の常識、生産管理部門の社員の復習として利用していただきたい。
・内容的には入門だが、一部に書籍では扱っていない実用的な問題にも言及した。参考になれば幸いである。なお、MRPや製番管理、スケジューリングなど生産管理の理論的なことについては記述していない。また品質管理、原価管理、研究開発との関連についても言及していない。
製造業といっても、いろいろな業種があるが、本稿では組立型製造業を念頭に置いた。
◇ 生産管理の仕事-日常業務
・生産管理部門は「製造業の中心」である。製造業の全体は、生産管理を中心に情報交換することによって回っている。生産管理部門の仕事のサイクルは、需要・生産計画→実施計画(plan)→手配(do)→進捗管理(check)→対策(action)と典型的な PDCAサイクルを構成している。
・生産管理部門の仕事の本質は、コミュニケーションである。従って「生産管理部門の仕事は、他部門との関連において明らかになる」とも言える。生産管理部門の担当者には、指導力と気概が求められる。自分から積極的に動くことが必要だ。
・また物事はほおっておけば、だんだん複雑になってくる。生産管理の仕事も、この情報がほしい、あれを管理しなければ心配だと管理していけば、際限なく仕事は増える。もちろんそれは例えば何らかのトラブルがあったりして、そのようになっていったのだろう。しかし管理をするにはコストがかかる。管理を複雑にすれば腐敗する。規則が一人歩きする。当然管理しなければならないものはある。が、個々の企業の事情に応じて省略できるものは省略すべきである。
・ 書籍によっては生産管理業務を非常に広く定義しているものがあるが、通常の生産管理業務は、次の業務を指す。
1.生産計画の立案
2.生産スケジュールの立案
3.スケジュールにもとづいて、関係部門への調整と指示
◇ 生産計画の立案
・目的は、自社で生産している製品の数量と完成時期を確定すること。
・受注生産の場合は顧客からの受注を元に作成する。
・見込み生産の場合は経営計画や販売状況などを元に作成する。
・当然として自社の生産能力や稼働状況から考えて、達成可能な計画を作成しなければならない。
・例えば、重要な顧客が急ぎで大量の注文を出してきた場合は、次のような対応をする。
1.営業担当や経営者に頼んで、納期を伸ばしてもらったりなどする。
2.優先度の低い製品の計画を後回しにする。
3.製造部門や経営者に頼んで、休日出勤などを想定した計画を立てる。
・この計画の立案は、コンピュータシステムでは難しいし、多くの企業ではシステム化していないだろう。
・しかし、自社の製品数がそれほど多くなく、また生産が安定しているようであれば、ほぼ確実な生産計画が作成可能だろう。
・この作業は、企業によっては、生産管理担当の業務ではないこともあるだろう。
◇ 生産スケジュールの立案
・目的は、「生産計画の立案」で作成された製品の生産計画を元に次を確定すること。
1.必要な部品の発注数量とタイミングを決定する。
2.(中間)製品の生産タイミングを決定する。
・コンピュータシステム化されているならば、この作業はほぼ自動的に達成される。
・システム化されていなければ、次のような地道な作業となる。
・必要な部品の計算。生産する製品の種類と数量から必要な部品の種類と数量を計算する。部品数が多い場合はけっこう大変。
・納期の優先順に製品の生産タイミングの決定。製品の種類と数量で、製品に必要な時間は、ほぼ分かるので、それを太子田していく。
・安全を見るためには、ある程度の部品の在庫はやむを得ないだろう。
・ある程度以上の規模の工場であれば、システム化しないと無理な作業である。
◇ スケジュールにもとづいて、関係部門への調整と指示
・「生産計画の立案」と「生産スケジュールの立案」がコンピュータシステムや何らかの自動化によって実行されるならば、さほどの手間はかからない。
・生産管理担当者の業務時間と努力の大半は、こちらに注がれることになる。
・スケジュール通りに生産が進むことはまれで、たいていの場合は何らかのトラブルが発生する。
・トラブルが発生した場合は、関係部門と連携を取って調整する必要がある。
・調整先は、製造部門、協力会社、購買部門(→部品納入業者)、営業(→顧客)など。
・自分で頑張ることも必要だし、上司などをうまく利用することも必要。日ごろから関係を良くしておくことが必要。
・部品の発注は、独立した購買部門がある場合と、生産管理担当者が直接行っている場合があるだろう。
◇ 営業部門との関連
・営業とは、顧客からの注文や納期・数量の変更処理、顧客への納品や納期遅れ・トラブルなどの連絡などの関係がある。
・私が見てきた企業では、定番品は、生産管理の担当者が、営業を通さず直接顧客と連絡を取っている場合が多い。対応のスピードが要求される場面では、それでも良いと考える。ただし営業には確実に伝えておく必要がある。
・細かい話のようだが顧客との関係では、預かり品(顧客からの支給品)の問題がある。管理する上では、ややこしい問題が発生する。有償・無償の区別、どのタイミングで引き落とすか、協力工場に更に支給した場合も含めて正確な預かり在庫の把握が必要である。
・納期遅延や品質トラブルが発生した場合の対応は非常に重要。状況がいろいろ想定されるので一般論は難しいが迅速・確実に対応する。自分も積極的に動かなくてはならないが、上司の力をうまく活用することが大事。納期遅れや部品原因の品質問題の場合は、他の比較して急ぎではない生産予定と調整して、優先的に部品の手配・転用、製造の実施などが必要となる。
◇ 購買部門との関連
・購買部門とは、部品の発注、納期の管理などの関係があるが、生産管理部門と購買部門は、非常に密接に連携を取って動く必要がある。
・購買部門とは、明確に分担が分けづらい部分がある。例えば部品の納期遅れの対応をどうするのか。在庫との関係で、部品の発注タイミング、発注ロットサイズをどちらがイニシアティブを取って決めるのか。生産管理部門の他の担当者が同じ部品を発注することがあるのだが、その調整を生産管理部門で行うのか、購買部門が行うのか。
・重要な部品あるいは納期遅れがみられる業者に対する確認は、きちんと行っておく必要がある。緊急の場合には生産管理部門が出て行くべきだ。
◇ 生産部門との関連
・建前的に言えば、こちらの業務が生産管理担当の主業務で、もちろん重要である。
・生産部門とは、生産の指示をして結果を受け取るという関係。生産管理部門が、差立て、すなわち個々の作業者に対する作業指示まで行うのか否かという問題があるが、生産計画の提示までというのが一般的だ。しかし中小企業では、生産管理部門が差立てまで行うという企業は多い。一体として行うにしても両者は業務としては別と言える。
・生産指示は、通常業務の流れで生産スケジュールに従って指示を出す。システム化されていれば、それも不要。部品納期遅れなどで、スケジュールが乱れた場合は、営業のところで述べたような形で動く必要がある。
・生産管理部門が生産の進捗上や完了をどのようにして知るのかという問題がある。製品が完成した時にシステムへの入力がある。これを監視していれば完成したことは分かる。しかし遅れた場合は手遅れなので、製造責任者などを通じて状況をチェックしておく必要がある。
◇ 協力工場との関連
・協力工場の管理は、可能な限り自社工場と同じようにすべき。それは「下請けといえども同じように接すべきだ」というだけではなく、自社工場と同じ扱いにした方が業務がやりやすいから。
・しかし自社工場への依存度、協力工場の規模などで同じようには行かない部分も多い。同じように管理したいのだが生産管理システムが連動していないのが痛い。生産管理システムにとって協力工場の取り扱いは頭が痛いことが多い。
・協力工場を購買部門が管理するか、生産管理部門が管理するかという問題がある。企業によっては購買部門が管理しているようだ。しかし生産管理部門が管理するのが良いと考える。購買部門では管理しきれないだろう。
・管理ポイントとしては、次のようなものが挙げられる。
・稼働率の把握
・在庫、仕掛品、中間製品や支給品の把握
・作業手順、品質管理の問題の把握と指導
・部品の供給・戻しのタイミング
・自社工場を含めた複数工場の管理、どこへ発注すべきか、発注の分割の割合などの調整
◇ 生産管理の仕事-日常業務以外にやること
・今は項目だけを挙げる。
・協力工場との調整-既述。
・生産管理システムのマスタの整備。
・品目情報、構成情報の間違い。
・生産リードタイム、調達リードタイムの把握・設定。
・不良・不動在庫の把握・削減。
・生産リードタイム短縮と生産平準化。
・他にもあるかも...。
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・目次 - 生産管理-新
・目次 - ビジネスパーソンの常識と非常識
・目次 - Java入門
・目次 - 論理・発想・思考についての考察と鍛え方
・目次 - 単なる雑談
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