■ チベット・ダライラマ・パンチェンラマ

ダライラマ(14世)は、7月6日に満80歳となった。チベットのため、世界のために各地を行脚している。

ダライラマは、チベットの最高位の活仏で、代々転生してきたと考えられている。ダライラマが死去すると、その後に転生した子供の探索が行われる。そして候補となった子供は、ダライラマの所有物を30個くらいも、他の物と混ぜ合わせて提示され、それを認識するテストが行われる。転生が真実であるか、そのテストがきちんと行われているかは別として、このようにしてダライラマの制度が続けられてきた。

ちなみに「ラマ」は「師」の意味であるが、「ダライ」はモンゴルから送られた称号であって、チベット人は別の称号も用いるようである。

14世の本名は「テンジン・ギャツォ」。人間であるから、いずれは死亡する。以前より14世は「ダライラマの制度はなくなってもよい」と言っている。「ダライラマ」と言うものは、チベット国民のいわば精神的支柱である。当然個々の国民の間には濃淡があるだろうが、全般としては、精神的支柱と表現して間違いがない。それを本人が「なくなってもよい」と言っているのである。

私個人は、ある人物や聖典などを神聖化したり特定の信条に従って生きるということを好まない(←これも信条?(笑))のだが、それは個々の人が決めることである。

一方で中国政府は、14世のこの発言を強く批判している。14世死亡後に15世を指名することを公言している。意図は誰の目にも明らかであろう。チベット国民に深く根付いたダライラマ制度を利用して、チベットをより強く支配するという意図である。

一方でパンチェンラマというものがある。ダライラマに次ぐ地位の活仏である。パンチェンラマ10世は中国政府の侵略後も、チベットにとどまった。

注、ダライラマ14世は1959年に、ヒマラヤを越えてインドに脱出した。
注、パンチェンラマには、別のカウント方法があり、それによれば10世は7世となる。

中国政府との協調を選択したかに見えたパンチェンラマ10世は、しかし1989年年頭に中国のチベット統治策の誤りを告発する演説を行い、直後の1月28日に急死した。死因は?ネットを調べてみても死因は特定されていない。

パンチェンラマ11世を探索・認定する作業が行われた。結果、1995年5月14日、ゲンドゥン・チューキ・ニマという6歳の少年がパンチェン・ラマの転生者として認定された。注、パンチェンラマの認定にはダライラマの承認が必要。

だが、しかし中国政府は、新パンチェンラマの探索に当たった関係者を逮捕・処罰し、別の人物をパンチェンラマ11世として指名し即位させた。現在も、こちらがパンチェンラマを名乗っている。

さらに驚いたことに、1995年5月17日、ゲンドゥン・チューキ・ニマ少年は家族ともども行方不明となった。これも誰の仕業か明らかではあるが、中国政府は関係を否定した。しかし1996年5月28日になって、中国政府が行ったことであると認めた。認定後わずか3日!。中国政府が、事の重大性を認識していたことの証拠であろう。

さらに本年2015年9月6日「チベット自治区政府」の幹部が「同少年が普通の生活を送っていて、干渉されることを望んでいない」と述べた。今頃になってわざわざ、このようなことを言う背景は、何かあるのだろうが、ともかく同少年の生死は確認されていないまま。

2015年9月8日、ラサのポタラ宮殿(←ダライラマの宮殿)前で、「チベット自治区成立50周年」の式典が行われた。中国政府の要人も多数出席したようである。そして軍・警察幹部に対して「民族分裂勢力に痛烈な打撃を与えるように」「闘争が長期化することを覚悟してしっかりと準備せよ」と訓示した。「解放」すなわち侵略後数十年以上経過した今、わざわざこのような訓示を行うということは、チベットの状況が中国政府にとって、いまだに深刻であることを示していると考えられる。

チベットでは、中国政府の抑圧に抗議した焼身自殺が相次いでいる。最近では当局が遺体を強制的に回収しているようである。

インド・ダラムサラにあるチベット政府によると、中国政府に対する抗議の焼身自殺は142人に上るそうである。この数字は、チベット侵略後のものなのか、いつからのものかはっきりしない。またチベット国内の状況が分からない中で、正確な数字が掴めるものかは疑問が残る。が、142人の焼身自殺は、尋常ではない。自分の命と引き換えに抗議をしている。

またチベット国内では、多数の「政治犯」が収容されており、今年の7月には、チベット独立を主張して収容されていた僧が獄死した。

チベットは、中国政府の侵略以前は、一度も中国の領土であったことはなく、独立した国家であった。注、中国政府は、尖閣と同じく事実とは異なる宣伝をしている。チベット国民の多数が中国の一部であることを望んでいるならば、他人がとやかく言うことではない。しかしそうではないようである。

まことに残念ながら、チベット国民にも、どこの誰にも、チベットを解放する力はなく、現在の中国政府が崩壊しない限り、このような支配が続くものと思われる。

私は本来、チベットとは何の関係もない者であるが、チベットのこのような現状は心配になるところ。みなさんの大部分もそうであろうが、このような現状は、少しは記憶に留めておいてほしいと希望する。


2015.09.12



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