■ 生産プロセスの改善
 
 
生産プロセスを改善するためのポイントを挙げていく。
 
まずは生産プロセスの外部ないし、生産プロセスを支援する部分。
 
工場内のレイアウト。広い工場の中が、きちんと区分けされて、一つ一つの作業場所が分かれているようなレイアウトは、見学者から見ると気持ちがよいかもしれないが、効率が悪い。俗に言う運搬の無駄がある。
 
一つの生産プロセス・ラインは、作業場所の間隔を可能な限りつめて、作業順番に配置するのが望ましい。また作業者が移動しながら作業していくようなプロセスでは、最初と最後が近くにあることが望ましい。
 
このようなレイアウト変更は、小さな部品を組み立てていく生産プロセスでは、比較的簡単だが、固定的な大きな設備を使う生産プロセスでは難しい。複数の生産プロセスがどの設備を使うのか、流れを分析して、つなぎを考える。それぞれの生産プロセスをうまくつなげるには、それなりの試行錯誤が必要である。
 
部品供給や製品回収方式の改善。例えば作業者が作業開始前に倉庫に必要な数の部品を取りに行って、作業をして組み立てが終了したら、出来上がった製品を倉庫に納める。これも運搬の無駄、時間の無駄である。
 
例えばミズスマシという方式がある。これは専任の担当者が部品の供給や製品の回収を行う。これとても運搬の無駄があるのだが、複数の生産プロセスをサポートしていること、そのほかのサポートも行うことで効率を上げている。
 
理想形を言えば、部品が必要な数、必要なタイミングで、作業場所に納品されて(すなわちJIT)、出来上がった製品は、そのまま出荷されるということになる。このような理想形を実現するのは難易度が高い。
 
理想形まで実現できなくても、倉庫を廃止し、作業場所近くに部品を納入してもらう。製品ができたら、その場に置いておいて、出荷するというような体制ができれば望ましい。
 
段取り時間の短縮。多品種少量生産時代となって、品種切り替えが多くなり、段取り時間を短縮することが必須となった。これについては、別途言及した。また段取りそのものをなくす方向として混流生産がある。複数の製品を同じ生産プロセスで混ぜて流す。もちろん何でも混ぜられるわけではない。また混流生産を制御するのはかなり高度な技術が必要となる。
 
次に生産プロセスそのものの改善。具体的に述べることは難しいが、改善すべきポイントを挙げることはできる。
 
作業工程そのものの改善。作業順序の組み換えから、例えば治具を工夫して位置決めをワンタッチでできるようにするとかいったことである。これは作業工程に応じて、本当に種々さまざまな解決法が要求される。ただ製品設計が決まっているので、現場での改善は限られることも多い。
 
機械操作の位置の改善、部品・治工具の取り出しの改善。これらの操作のために一歩でも二歩でも歩くようであれば、一回あたりのロスは少なくても、多くの回数を行えば大きなロスとなる。また歩かなくても、振り向いたり、大きく手を伸ばしたりすることもロスとなる。機械との作業位置、部品や治工具の置き場所を改善する。
 
これらは口で言うのは簡単だが、実際には、なかなか難しい。改善したつもりが改悪になったりする。一歩ずつ改善していきたい。
 
仕掛品を次工程へ流す時間を少なくする。これはレイアウトを詰めれば、かなり改善されるが、ある工程の作業が終わって仕掛品を持ち上げて、次の工程の運んで行くようではロスである。特にある程度大きな製品。細かいことを言うようだが、現在の工場では、ここまで合理化が要求される。これは仕掛品をローラに乗せると自動的に次に流れていくような改善を行う。
 
また次工程で必要なスイッチ操作を前工程で行うようにすることも行われる。いわゆる「ながらスイッチ」。
 
工程間の作業時間の違いを吸収する。前工程と次工程では作業時間が違っていて、例えば前工程から仕掛品が流れてくるのを待っていたりするようだとロスが大きい。
 
これを改善するのは多能工化である。一人が最初から最後まで作業すれば、作業者のロスはない。(ただし工程間の移動ロスは発生する)。またいわばバトンタッチゾーンを設けて、次の担当の人が遅れていれば、次の工程の作業までするということを行う。逆でも同じ。(注、現場用語では「助け合いゾーン」と言う)。
 
マニュアル参照、作業内容の確認時間の短縮。この時間は大きい。複雑な仕様の製品を生産していたり、一人が複数の工程を持っていると、マニュアル参照の必要が出てくることがある。また混流生産をしていると製品の型式を確認することが必要となる。いちいちマニュアルを広げて確認していれば、大きなロスとなる。
 
一つの対策は、作業者の訓練。他にはマニュアルや製品の型式などを画面に自動表示あるいはワンタッチ表示するような対策が取られる。
 
仕掛品の削減、リードタイムの短縮。これはいろいろな改善の結果であるが、基本としてはロットサイズを小さくして流すことが必要。
 
また全体として作業者の多能工化が重要である。このような改善(の一つの方式)を実現するのが、いわゆるセル生産。
 
それぞれの作業工程を個別に検討していく必要があるが、炉やハンダ槽など、いわゆるバッチ処理をする工程の改善は難しい。また検査工程もネックとなることが多い。