■ セル生産方式
 
 
多品種少量生産時代となって「セル生産方式」と言うものが注目を集めている。背景などについては別途解説しているので、ここでセル生産方式の特徴、効果などについて簡単に触れてみたい。
 
≪特徴≫
 
セル生産方式は、U字型などのコンパクトな形に生産ラインを配置し小人数で作業をする。これをセルと言う。U字型と言ったがL字型や二の字型のようないくつかのパターンがある。人数は概ね数人以下。コンベアラインでは人間が固定位置にいて製品が流れてきて作業をするが、セルの中では製品も人間も両方が動く。U 字型のようなコンパクトな配置にすることによって製品と人間の動線を短くする。また治工具や部品の配置を工夫して作業をやりやすくしている。作業内容もセルの中で完結するようにセルを構成する。
 
しかしこのような外見的な特徴はセル生産方式の本質ではない。セルの方式によっても若干違うのだけれども大まかに言うと、作業者は複数の作業を受け持つ。すなわち多能工である。しかも作業者の判断で実際の作業の状況を見ながら臨機応変に作業の分担を変えていく。製品にもよるが製品検査もセル内で行われる。小人数の完結性の高い人間の柔軟性を活用した生産方式と言える。完結性とは作業者の判断と作業内容の両方を意味している。
 
またセル生産方式だけのことではないが、最近の傾向として高価な設備は使用しないで、安価簡単な設備を使用する。これは多品種少量生産に対応できない、製品の改廃が激しいので設備の陳腐化リスクを避けたいということだ。
 
 
≪効果≫
 
セル生産方式導入当初は、いろいろと問題点も発生するようだが、定着するとこれだけのことで大きく生産性が向上する。
 
まず動線を考慮したセルの中で作業者が臨機応変に作業を分担し合うので、これだけでも作業の効率がかなり向上する。小ロット化、仕掛かり在庫の削減、生産リードタイムの短縮が可能なこともお分かりだろう。
 
作業者が複数の工程を受け持ち相互チェックを行い自主検査を行うので、作業者の質・レベルが向上し均質化する。これで不良率がかなり下がる。製品によっては明確な検査工程が不要となる。欠勤者が出た場合でも人数が少なくなるだけでセルの運用には支障がない。
 
生産量の調整が簡単である。生産量は、セル内の人数を調整する、セルの数を増減するの二段階で調整できる。多人数のコンベア生産の生産の調整と比較していただきたい。また生産品種切り替えのコストも別のセルを用意すれば、切り替えの間作業者を待たせることもなくなる。
 
また不良の発見が速い。速く発見すれば、そのセルを停止してすぐに対策を取ることができる。また不良に限らず何らかのトラブルが発生しても、他のセルには関係がないのでトラブルを局所化することができる。
 
最後に生産単位が小規模なセルなので、中小製造業にも適した方式であることは指摘しておきたい。
 
 
≪問題点≫
 
セル生産方式のいいことばかりを書いたが、当然問題点もある。
 
まずは作業者は多能工である必要があり、教育コストがかかる、またすぐには実現できない。またある意味作業者のモチベーションに期待する生産方式なので、モチベーションを維持・発展させることができないような職場には無理である。
 
さらにセル内の作業をスムーズに進めるためには、部品の供給、製品の引き取り、トラブル時の対応など、サポートシステムが重要である。
 
後、大きな部品・製品はセル生産が難しいか不可能である。
 
最後に高価な設備が必要となる作業工程ではセル生産方式を実現するのは難しいということを挙げておく。
 
以上簡単にセル生産方式の特徴について解説した。