■ トヨタ生産方式(JIT/カンバン方式)を評価する上で考慮すべき特殊性
 
 
トヨタ生産方式(JIT/カンバン方式)が注目を集めているが、これはトヨタあるいは自動車産業固有の条件があって成立したものである。このような条件を考慮しないで、単に評判からトヨタ生産方式(JIT/カンバン方式)を採用しようとしても失敗する。自社に適用できるか、よく考えていただきたい。
 
需要が、かなり平準化されている。もちろん自動車にも需要変動はあるが、かなり需要変動が少ない製品であるといえる。季節変動や景気変動が少ない。例えばエアコンの季節変動や生産設備関係の景気変動と比較してみるとよい。この特性がトヨタ生産方式方式の本質であるJIT・カンバン方式を成立させる根本条件になっている。
 
価格が高い。自動車はかなり価格が高い製品である。これがいわばJIT・カンバン方式すなわちトヨタ生産方式を強制する一つの条件になっている。これについては別途論じている。
 
特注部品が多い。家電でも本体ケースなどは特注部品であるが、ほとんどが汎用部品である。自動車の場合は、かなりの部分が特注部品であり、したがって特定の部品メーカから納入される。これがJIT・カンバン方式・トヨタ生産方式を実行可能にしている。
 
製品・部品ともに重量がある。価格とともに、こちらもトヨタ生産方式(JIT/カンバン方式)を強制する条件になっている。これも別途論じている。
 
製品数が少ない。注、部品数ではない。自動車についてもオプションを数えれば、かなりの製品数になるが、製品そのものの数は少ない。例えば家電メーカの製品数と比較すれば、よく分かる。冷蔵庫、洗濯機、テレビ、レンジ....。自動車は、かなり部品数が多い製品だが、さらに自動車メーカが家電メーカのように多数の製品を生産している状況を考えると、ほとんどJITを行うのは不可能のように感じる。
 
このような特殊事情があって、JIT・カンバン方式・トヨタ生産方式が成立しているのだということを理解していただきたい。