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第三章の要点は三点。
第三章の副題は「最初に人を選び、その後に目標を選ぶ」ということで、人材選択の重要性を指摘している。そして単に人材の選択が重要と言うだけではなく、それが最初に行うべきことであるということを主張している。「今回の調査を始めたとき、良好な企業を偉大な企業に飛躍させるためにはまず、新しい方向や新しいビジョン、戦略を策定し、次に新しい方向に向けて人々を結集するのだろうと我々は予想していた」。66p。これが第一点。
本書は「戦略策定が先か、人材確保が先か」ということと「戦略策定と人材確保のどちらが重要か」ということを混同しているように見える。が、後者の問題として改めて考えてみると、確かに人材確保のほうが重要度が高いと気づかされた。早い話が、経営戦略、将来のビジョンなどというものは、外部環境が変わってしまえば何の役に立たなくなることも多い。どのように外部環境が変化しても役に立つ経営戦略があるとも思えない。しかし優秀な人材であれば、外部環境が変化しても十分に対応していけるだろう。
第二点は、人材を評価する上で、知識、学歴、業務経験よりも性格や基礎的能力を重視したこと。職種によっても差があるだろうが、これはおそらく正しい選択と思われる。企業においては「少々の抜けがあっても、素晴らしい才能を発揮する人間」と「目立たなくとも、ルーティンワークを確実にこなす人間」を比較すると、大体において後者の方が価値がある。
第三点は、人材を確保するのに「教育する」ではなく「選択する」という手段を用いたこと。では適切な人材がいない場合はどうするか。その場合は「妥協して採用するのではなく、適切な人材が現れるまで待つ」という戦略をとっていることも指摘する。これは教育コストの問題とも考えられるが、「知識などは習得できるけれども、性格などはなかなか変えることができない」と指摘している。
飛躍した企業の人事方針を見ると、このように非常に厳しい。飛躍した企業の経営者すなわち第五水準の経営者は「一度失敗した人物に対して『君の事はもう信用しない』というタイプなのか」という疑問が沸いてくる。「しかし、飛躍を導いた指導者は判断を急ぐことはない。席にふさわしくない人物がいると感じても、かなりの努力を払った後にはじめて、バスに乗るべきではなかった人物が乗っているとの結論を出すことが多い」(91p)と書いていくつかの事例を紹介している。また比較対象企業と比較してリストラが少ないことも前に見たとおり。