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第四章を一言で要約すると「厳しい現実から目を背けず、しかし決して諦めない」。よく言われて入ることだが、実行はなかなか難しい。また本書では「状況がどうなっているのかをつかもうと、真摯に懸命に努力すれば、正しい決定が自明になることが少なくない」(110p)と書いている。これは経営者だけの課題ではなく、社内全体の課題である。そして真実に耳を傾ける企業文化を作り上げることが重要だとしている。そのために次の四つの方法を提唱している。 140p。

答えではなく、質問によって指導する。
対話と論争を行い、強制はしない。
解剖を行い、非難はしない。
入手した情報を無視できない情報に変える「赤旗」の仕組みを作る。
赤旗とは共産党の新聞ではなく、「誰にでも、よく分かるような」というほどの意味である。ご覧のように第四章は「精神主義的」であるが、企業文化という重要な課題を提示している。

また本書は「真剣に考えれば答えは出る」と言っているが、「いかにしたら正しい決定ができるだろうか」。このような重大な問いに正解があるわけもないが、心構えは提示できる。私なりに思いついたものを挙げる。

・考える価値のあるテーマか。
  孔子は別にして、私も含め人間は、いろいろなことを思い悩む。その中には、自分で思い悩んでも仕方がないことや、今考えてもしようがないことも多い。余計なことを考えるとエネルギーが分散し、本当に重要なことを考える時間がなくなる。私事ではあるが、最近私は、このような余計なことに考えが及んでくると、「それは私が考えなくてもよいことだ」とか「それは今考える必要はないことだ」という声が聞こえることがある。声が聞こえると言っても幻聴で聞こえるのではなく、そのような考えが頭に浮かんでくるということだ。少しは進歩しているらしい。

・自分(自社)のことだけではなく、他人(顧客)のことも考える。
  最近のビジネス書には「顧客第一」としつこく書いてある。しかし、その多くは欺瞞である。またこのような思想が真面目な人間に吹き込まれてしまうと、ノイローゼになりかねない。私は「自分のことを第一に考えてよい」と考える。上の言葉は、この考えが前提だ。そして自分ができる範囲で、他人のことも考慮して考える。人間と言うのは余裕が出てくれば、自然に他人のことを思いやるようになる。このような自然な態度が正しい決定をするには不可欠である。

・結果が分かるまでには時間がかかる。
  重大な決定の多くは、正しいかどうかが分かるまでには、時間がかかる。そのことを認識していないと焦りが出てくる。そして判断を誤る。

・安易に結論を出さないこと。
  ある問題に対して結論を出すということは「そのことについては、もう考えない」ということだ。物事の緊急性にもよるが、時間的に余裕がある場合には、安易に結論を出さず、何度も考えると良い。そうすればよいアイデアが浮かんでくるかもしれない。これは「同じテーマを何度も時間をおいて考えること」とも表現できる。

・(とりあえず)他人の意見は無視する。
  これには異論があるかもしれない。まずは自分でじっくり考えることが必要。他人を意見を聞くと、自分でじっくり考えることができなくなる。他人の意見を聞くのは、それからでよい。