表題は生物にはどのような目的でSEXというものが存在するのかという意味だ。単純に考えれば答えは「子孫を残すため」と言う答えが浮かびそうだが、「生物は、子孫を残すための手段として、何故SEXと言うメカニズムを作り上げたのか」ということである。これは生物学の難問中の難問なのだそうだ。

生物学というのは心理学と同じで学者同士が思想的派閥に分かれて、いろいろややこしい論争をしている世界だ。(かっては物理学もそうだった)。

生物界には単性生殖も存在するが有性生殖が主流。何故難問なのかというと、有性生殖は単性生殖に比較して、非常にコストがかかってしまうが、そのコストに見合うだけのメリットが見出せないということらしい。

有性生殖が何故コストがかかるというと、単性生殖ならば、自分だけで、その場でどんどん子供を作っていくことができる。しかし有性生殖ならば、まず相手を見つけなければならない。動物ならば危険を冒しながら相手を探して歩かなければならないし、植物ならば、花粉を飛ばしたり運んでもらったりしなければならない。

もっとも大事なことが要は相手任せ・運任せになってしまうわけだ。また生まれる子供の半分がオスであることも生産性を下げてしまう。などなどコストアップの要因が指摘されている。

この問題に対する生物学者の主流の解答は「遺伝子の交換をすることにより、進化をスピードアップする」というもの。

「なぜオスとメスがあるのか」(4106005093,新潮社)を読んだ。著者はリチャード・ミコッドという人。著者の主張は「遺伝子のエラーを修復するため」とのこと。

私なりに説明すると、遺伝子は、個体の生存中に突然変異やエラーによって本来のものから次第にずれてくる。単性生殖ならば、このずれは、世代を重ねるに従ってだんだん蓄積されてくる。もとに戻ることは絶対にない。

しかし有性生殖ならば、片方の個体に突然変異やエラーがあっても、正常な遺伝子の子供を作ることができるというのだ。もちろんエラーがあった場合には、同じ確率で正常ではない遺伝子を持った子供も生まれるのだが、遺伝子の突然変異は、大部分が有害なものであって、その有害な突然変異遺伝子やエラー遺伝子を持った系統の子供は長いうちには淘汰されてしまうので、結局遺伝子を本来のものに保つ機構として作用する。また多くの突然変異が劣性であることも有利に働く。言わば主流派の意見とは正反対である。

私自身は、どちらが正しいのか判断する能力はないけれども、通例に従って勝手に言わせてもらえば、ミコッドの意見は、かなり正しいように思われる。この本は、本当にざっと斜め読みしただけなので、あまり理解できなかった。しかしもう一度読む価値のある本だと思っているので、機会があればまた再度取り上げる。