■ 税理士の営業 - 2
 
 
1.商品特性
 
税理士の商品とは、顧客と顧問契約を結び、記帳代行、申告書作成や財務的アドバイスを行うことである。第一の特徴として「商品の説明の必要がほとんどない」ということが挙げられる。私はコンサルティングを行っているが、個人によって内容が大きく異なっている。それで自分はどのようなコンサルティングを行うのかを長々と説明しなければならない。税理士の商品はかなりの部分が法律で決まっており説明の必要がない。これは非常に楽。しかし逆に言えば差別化がしにくい商品だといえる。
 
次に商品のリピート性がある。特に問題がない限り、次年度も契約していただける。コンサルタントは、仕事が終われば、次の顧客を探さなければならない。この点でも税理士は楽だといえるが、今度は市場が固定化してしまう、新規顧客開拓が難しいということになる。
 
専門特化が可能か。仕事や事業の中において、自らの専門を確立し、その専門性をアピールしていくというやり方がある。税理士でも相続専門、特定業種専門の事務所もある。現実には専門特化はなかなか難しいようだが、専業でなくとも得意なものを作っていきたい。専門特化が難しいのは、新規顧客開拓が難しいことによっている。
 
また会計処理は、すべての企業に必要なもの。ほとんどの企業は税理士に依頼する。すなわち市場(潜在顧客数)が大きい。営業力で一歩抜きん出れば、長期的には大きな差がつく。
 
税務会計だけではなく、経営計画策定、資金調達、起業支援、コンサルティングを行わなければならないと言われている。商品の間口を広げるという意味では良いのだが、差別化になっているのか、利益が出ているのか、ということが疑問である。
 
2.営業活動の展開
 
顧問契約は、差別化が難しい、新規顧客の獲得が難しい、専門特化も難しいと、かなり難しい商品である。すると往々にして価格競争になったり足で稼ぐ営業になったりする。
 
このような商品では、プロセスの前半すなわち認知・見込み客把握の段階がより重要、そして長期戦である。長期戦とは、簡単に止めてはいけない、諦めてはいけない、系統的に戦略を研究するということになる。特効薬的な顧客獲得は難しく、コストの許す範囲で多様な宣伝手段を使用する。地道な積み重ねが将来的には大きな差となる。
 
料金体系をはっきりさせることが必要。かなりの事務所が、明確な料金体系がないか明示していないのではないか。作業量が分からない、顧客が納得する範囲で高額にしたいということがあるのだろう。しかし明朗ではない。顧客にすると料金を明示していない事務所には頼みずらい。これは新規顧客を開拓する上で障害。少し高めであっても明示しておいたほうが顧客開拓に有利ではないだろうか。
 
有料と無料をはっきり分ける。同じサービスが力関係で無料になったり有料になったりする。無料サービスは顧客開拓と割り切って、新規開拓に効果的なサービスを提供する。ならば創業支援関係が有効ではないだろうか。
 
専門特化も含めて、事務所の特徴を出せないか。税理士のホームページ(HP)を見てみると、内容的にはどれも同じに見えてしまう。例えばコストダウンなどのテーマで情報を提供する、頻度の少ない税金について解説するなどの工夫をしよう。HPやDM、チラシにしても、自社の特徴を前面に出した文章を載せれば効果が違う。どのようなメッセージがよいのか系統的に検証しよう。HPを利用すれば検証のサイクルを速めることができる。
 
従来からの地道な活動、コネ、異業種交流会なども必要だろう。一方HPやメールマガジン、メーリングリストなどインターネットを活用した営業活動はコスト負担が少ない。最初はなかなか効果が出ないので苦しいが、いったん効果が出せるようになれば、後が楽である。特にHPは蓄積型のメディアなので効果が持続する。
 
なお個人に販売する商品では、既存顧客への情報提供が新規顧客開拓に寄与する。税理士の場合は、まだ判断がつかないが試していただきたい。その場合、分かりやすい資料を作成してメッセージが正確に伝わるようにする。
 
営業という業務は、かなりのエネルギーが必要なので、成果を上げるためには、所員の士気を上げることが必要。それは単に口で言ってもダメで、インセンティブなどそれなりの対策が必要である。営業に限らず、所内の作業のマニュアルを作成し、効率的に動けるようにする。退職があっても良いようにする。