ウォルマートの物流センターはクロスドッキングを採用していると言われている。あるいはクロスドックとも言う。クロスドッキングとは、入荷した商品をセンターで在庫することなく、到着したらすぐに仕分けして出荷すること。

注、多くの書籍やホームページでは、「在庫することなく、到着したらすぐに仕分けして出荷する」という説明をしているが、本来の意味は、「複数の仕入先から複数の出荷先に振り分ける」という意味であるように思われる。クロスドッキングはリアルタイム性よりも交差性の意味であると思われる。

少し考えただけでも、クロスドッキングはかなりの高度な技術であることが分かる。発注データ、入荷データが正確に分かること。トラックの輸送状況・位置状況をつかんでいること。入荷したら、出荷データを元にすぐに仕分けできるような情報システムと物流設備があること。最低でもこのようなことができていなければならない。

ウォルマートの物流センターの面積は10万平方メートルほどもあるそうだ。300メートル四方以上の大きさである。

しかしもう少し考えてみると、次のようなことが分かる。複数の入荷先があり、複数の出荷先がある。ある入荷先からの商品は複数の出荷先に出荷される。一つの出荷先へのトラックには、複数の入荷先からの商品が詰め込まれる。

これらを同時に行なうとすると、ある時刻にまったくタイミングを合わせて多くの商品を積載したトラックと商品を詰め込むためのトラックをほとんど同時到着させて積み替えなければならない。発注単位によっては、パレットで入荷したものをケースに分けて積み替えなければならない。事故などで到着時刻がずれることだってある。

この作業は、いくら広い物流センターがあっても、いくらコンベアがあっても不可能である。すると本当にまったく物流センターに商品を止め置かないで、入荷したものを、コンベアで運んで出荷先のトラックに詰め込むことはできないことが分かる。実はクロスドッキングと言っても、少しの間は物流センターに止め置かれている。

そしてさらに実はウォルマートの物流センターでは、販売数量の多いものは在庫し、数量の少ないものはクロスドッキングを行なっている。すべての商品がクロスドッキングで処理されているわけではない。むしろクロスドッキングされている商品の割合は少ないと思われる。一般の書籍では、ウォルマートではあたかもすべてクロスドッキングであるかのように書かれているので注意されたい。また在庫についてはこれはサブライヤが在庫責任を負うことになっている。

ちなみにサムズクラブの物流はすべてクロスドッキングだそうである。こちらはホールセールであるため、商品数が少なく、また物流の単位がパレットであってケースではないので扱いが簡単である。(それでもけっこう難しいと思うが..)。

注、クロスドッキングはXDと略称される。また仕分けセンターとも言われる。

注、ウォルマートの例を挙げたが、時間がたてば状況も変わってくるので、注意されたい。