目次はこちらTOC(制約理論)は革新的なのか?


ある部品の入荷が遅れるとしよう。そのときにどの製品(正確には製品オーダー)に影響があるのかを知りたい。部品から見た製品への関連付けをペギングという。ここでシングルペギングとフルペギングという区別が存在する。「シングルペギングは対象部品から直接の上位の親品目名の数・納期との関係を明らかにする。フルペギングは対象部品から直接の上位の親品目名と最上位(最終製品)の親品目名の数納期の関係を明らかにする」(「SEのためのMRP」 p147)。(注、参考までに言っておくと、このシングルペギング・フルペギングの定義が構造型部品表を当然の前提にしていることは容易に見て取ることができるだろう)。

「MRPはサマリー型部品表」という誤解とともに、この用語も間違って説明されていることがある。「MRPは通常サマリー型部品表を採用しています。これをシングルペギングといいます」(「TOC(制約理論)入門」p64)とある。サマリー型部品表=シングルペギング、構造型部品表=フルペギングと位置づけている。これは用語の二重定義であり、新たにペギングという用語を定義する意味がない。そして同書ではその後シングルペギングでは製品のオーダーから部品のオーダーを特定することができないと説明している。しかし前述のようにペギングとは部品オーダーから製品オーダーを特定することである。

製品オーダーから部品オーダーを特定するのは、ご存知のように製番管理の考えである。注、ここでは説明しないが、製番管理の場合でも共通部品はMRPで回していることが多いことを考えていただきたい。フルペギングはシングルペギングと比較してロジックが難しく、実行時には多くのコンピュータパワーが必要とされるのだが、これが可能な生産管理パッケージは存在する。現実はここまで進歩してきた。しかし「その割には、この機能(ペギング)を使うことは少ないと思う」(「SEのためのMRP」p147)という指摘は考慮に値する。