目次はこちらTOC(制約理論)は革新的なのか?


資材費の計上は、使用時ではなく購入時にするとしている。これは可能か。例えば共通部品や購入リードタイムが長く予め購入している部品を「購入時点で×× 製品のスループットを計算するために計上することは可能か」。この時点では生産計画さえも決まっていないかもしれない。不可能だ。

「TOC(制約理論)入門」p143-p144にかけて、生産性を挙げるためにロットを大きくして段取りを少なくし生産性をあげ結果として仕掛り在庫を増やし、さらに月末に生産計画達成のため無理をして残業をしたりする様子が、あたかも現場を見てきたかのように描かれている。

私が見てきた企業は、失礼ながらレベルの高い企業ではなかったのだが、現在ではどの企業においても「在庫は悪である」、「生産ロットサイズはできるだけ小さくしてリードタイムを短縮する」ということが、本能と言えるまでに浸透している。もちろんそれが現実にうまく機能しているかと言うこととは別だが、このような方向でどの企業も頑張っている。

在庫が貸借対照表の資産であるからと言って、ロットサイズを大きくとれば生産性が上がるからと言って、単純にこのような行動をとることはあり得ないということを強く言いたい。「相手の一番低いレベルに焦点を合わせて批判をする」というような態度は止めていただきたい。製造業の現場をご存知なのだろうかと思う。注、この点においては、取引先(多くが大企業)の要求が厳しいので、むしろ中小企業の方が浸透しているのかもしれない。

「内外作判断を間違う」ことについて。内外作判断が行われるタイミングには、次の二つがある。

1.戦略的判断。新製品を開発あるいは新規の製品の受注したとき、あるいはしかるべきタイミングで、当該製品の生産の基本路線として、内作・外作・内外作併用を判断する。この判断はある程度の期間は維持される。このときの考慮要因は、コスト、得意技術、設備、あるいは協力工場の育成方針などである。コスト的にある程度の範囲に収まっていない場合は、この段階で落とされる。

2.都度判断。内外作併用の場合には、その製品は自社工場を含めて複数の(協力)工場で生産される。この場合に内作あるいは外作を判断は、基本的に「内作優先、スケジュールも考慮する」。すなわち自社ではスケジュールが間に合わない場合は外作となる。コストでは判定しない。コストは戦略的判断の時点において誤差範囲に収めているからだ。

したがってお分かりのように「原価で判断すると、自社工場が空いているにも拘らず外作判断となる」という状況はあり得ない。実際私が見てきた企業でも都度では「スケジュールが間に合えば内作」と判断していた。なおこの問題とは関係がないが、一つの製品を自社工場と協力工場の双方で生産することは、管理上大きな問題を抱え込むことになるのはご承知願いたい。