目次はこちらTOC(制約理論)は革新的なのか?


製造業では損益計算書に販売管理費とともに製造原価を記載する。販売管理費は製品販売するために使用した費用で、製造原価は製品を生産するために使用した費用。

営業(ウー)マンの給料は販売管理費であり、生産現場で働いている人の給料は製造原価。なので例えば営業事務と購買事務の両方を担当している人の給料は両方に振り分けなければならない。極論すれば、この人が使っているボールペンの費用も振り分けなければならない。

さて製造原価の構成。一つの分類として製造原価は部品材料費、人件費、経費に分けられる。それぞれの内容は説明しなくても明白だろう。

もう一つの分類として直接費、間接費という分け方がある。直接費とは特定の製品にかかった費用、間接費は複数の製品にかかった費用や企業全体にかかった費用のこと。(ここで「複数の製品にかかった費用」が曲者であることはお分かりだろうが、措いておく)。

この二つの分類をマトリックスにして、これらを個別の製品に振り分けるのが原価計算である。間接材料費は例えば機械油などで額は少ない。直接経費、すなわち特定の製品に使用した経費とは何か。ここには外注費が含まれる。現在の製造業では無視できない額となっている。

直接費をそれぞれの製品の原価とするのは分かりやすい。原価管理の要点は「間接費をいかに合理的に各製品に割り振るか」と言うことにある。ここにおいていろいろな考えがでてくる。


ここでは私が原価計算に対して抱いている疑問を記述する。

原価管理の本を読んでみると非常に複雑精緻な論理が展開されている。基本的には各製品に人件費や減価償却費、間接費をいかに配賦するかということだ。特に間接費。その中でもいろいろな考えがあり、いろいろな人かいろいろなことを主張している。職業柄私は複雑な論理には強い方だが、こんな複雑な論理がなぜ必要なのかと思ってしまう。いろいろな考えがあるということは、問題を孕んでいるということの証拠・裏返しである。

原価計算では間接費も含めて作業時間に比例して配賦するので、他の製品の生産が増大すると、それとは関係のない製品の原価が低減する。逆の場合もある。これは改めて考えると非常に奇妙である。

間接作業は作業時間に比例することは少ない。生産作業ではある製品を100個生産する時間と1000個生産する時間は、(段取り時間を考慮しなければ)10倍の開きがある。しかし100個分の部品を手配することも1000個分を手配することも手間は同じである。

「TOC(制約理論)入門」で主張されているように、間接費を合理的に原価に配賦することは不可能である。

原価計算を実施する手間と費用が大変である。原価管理は作業負担が大きい作業だ。また正確なデータが取れるとは限らない。それで得られるのは僅かばかりの改善でしかなかったりする。現実問題としては原価計算を行うべきか否かという問題ともなる。

同じ製品を自社工場と協力工場で生産している場合に、計算は可能だが、計算された原価に意味はあるのか。

工数や工賃は自社で計算するまでもなく、幅はあるが標準的な値が存在する。取引先より「この工数・工賃で引き受けてくれ」と要求されることも多い。ということで、実際には原価の問題は、自社の自由度の範囲外のことも多い。