典型的には一般大衆に販売する消費財を製造している企業を想定しよう。そのような企業は部品や原材料を仕入れて製品を生産し、卸売業者と小売業者を通して商品として販売する。この部品・原材料業者→メーカ→卸売業者→小売業者の連鎖をサプライチェーンと言う。

もちろんサプライチェーンの定義は一般論としては消費財である必要はなく生産財でも良い。サプライチェーンという言葉は、メーカを中心にした考えだが、これを小売業者から見てデマンドチェーンと言うこともある。チェーンの構成実体には変わりはないが立場が異なる。

SCM、サプライチェーンマネジメントとは、サプライチェーンの全体を合理化し、在庫の最適化と納期の短縮を図るものだ。ここでのポイントは「サプライチェーン全体を対象にする」ことだ。その背景には、「部分最適の積み重ねが全体最適とはならない」という認識がある。ここでは全体最適云々の正当性は議論しない。

製造業においては、在庫は、部品在庫、中間製品在庫、仕掛品在庫、製品在庫といろいろな在庫があるが、製造業にとって「在庫を最適化する」とは、これらすべての在庫を対象にすることだ。これをメーカの在庫だけではなく、部品・材料業者、卸売業者、小売業者の在庫にまで対象を拡大するという視点から見るとサプライチェーンの発想は理解しやすい。

話を急ぐが、サプライチェーン中の在庫を制御するためには、需要の予測が基礎となる。需要の予測には、販売実績など小売業で収集解析したデータが主に用いられる。その予測データが小売、卸売、メーカと順次川下から川上へ、小売・卸売・メーカの仕入れ予定となって伝えられ、その情報を元にサプライチェーンの各段階で生産・在庫を制御する。

「川下からデータを流し川上を制御する」、すなわちこれを「後工程が前工程を制御する」と言い換えれば、トヨタのカンバン方式との類似も明らかだろう。

またカンバン方式は、大量の部品・仕掛在庫をなくすために大野耐一などが研究実践して開発したものである。これを思い起こせば、SCMはカンバン方式を、販売業者にまで展開したものだと言うことができる。