書籍は、そのテーマについてのプロが書くものである。万人に公開する書籍であれば、そのテーマについて、多くの時間と情熱を注いで研究・実践している人でなければ、書くことはできないだろう。しかるべきレベルに達していない書籍も多いが、基本的には、そのように言える。

しかし一方で盲点がある。プロとは、そのテーマで収入を得て生活している人である。その必然的な結果として、そのテーマを否定・批判するような内容は書くことができない。そのテーマを美化し、必要性を訴えるような内容となる。特別な場合を除いて、そのように断言できる。

一方で、出版社の立場というものもある。あるテーマを紹介する書籍を発行する場合、そのテーマを否定するような書籍は発行しにくいということが言える。これも納得してもらえるだろう。

しかし出版社の立場は、著者の場合よりも少しフリーであって、売れそうだとなれば、そのテーマを否定する書籍を発行することも大いにありうる。一部には、いろいろなことを否定するような書籍をセンセーショナルな書名で出版したがる出版社がある。このような本は、また逆の意味で注意である。

もう一つは、ある程度の量がなければ、出版の対象にならない。であるから、量を確保するために、文章を引き伸ばす、関係のない内容をもってくる、事例をやたらと入れるというようなことが行われる。

例えば野口悠紀雄の「超整理法」。これは要約すれば「時間軸に沿って分類しよう」というシンプルな内容である。超整理法なのだから、その主張を超整理して、この程度の一文で表してほしいと思ったのは私だけではないだろう。しかし本として出版するためには、それだけの内容を引っ張って長くしなければならない。注、「超整理法」の良さは、内容よりも文章の面白さにあるのではないだろうか?

さらに、出版社は、その本が良いか否かではなく、その本が売れるか否かという判断で出版する。有名な人か、売れそうなテーマか。結局世の中は初心者のほうが多いので、あるジャンルを徹底的に追求して膨大な内容を書き上げたものよりも、入門的な書籍の方がよく売れるので、このような本が出版される。

たとえば生産管理では、生産管理部門の日常業務を羅列的に説明したものがほとんどで、企業の生産管理を革新するようなものは皆無であるというのが実情である。

一般に市販されている書籍は、このような限界があるものだと認識して読んでいくことが必要だろう。