歴史に残る科学者は、それぞれが我々凡人からは想像を絶しているが、その中でも、普通の天才と天才中の天才がある。ひときわすごいと私が思っている一人はケプラー。


ケプラーの業績は、いろいろとあるが、次のいわゆるケプラーの三法則が有名。

第1法則(楕円軌道の法則)
    惑星は、太陽をひとつの焦点とする楕円軌道上を動く。

第2法則(面積速度一定の法則)
    惑星と太陽とを結ぶ線分が単位時間に描く面積は一定である。

第3法則(調和の法則)
    惑星の公転周期の2乗は、軌道の長半径の3乗に比例する。

第一、第二が1609年、第三が1619年。

天動説にしろ、地動説にしろ、古来より惑星の軌道は真円と考えられていた。第二法則は角運動量保存則に対応する。この三法則により、地動説が天動説に対し最終的な勝利を勝ち取ることができた。

注、ケプラーは若い頃「地動説を支持する」旨を宣言したらしい。しかしこれは、観測にもとづくものではなく、理念・信念にもとづいたもの。その時彼は、軌道を真円と考えていた。


これからが言いたいこと。

ケプラーは、何を元に、この法則を導き出したのか?

ご存知のように、彼はデンマーク人の天文学者、ティコ・ブラーエの弟子であり、彼の観測結果を分析して、この法則を導き出した。

この観測結果の内容は、地球から見た各惑星の方角である。かなり膨大なデータである。

多量の方角のみが記述された惑星の観測データを分析して、上記の三法則を導く困難さがお分かりだろうか?

地球から見た方角のデータから火星が太陽の周りを楕円軌道で回っていると想像できるだろうか?しかも地球も太陽の周りの楕円軌道であり、さらに複雑な動きとなっている。

恐るべき分析力、想像力である。

書名は忘れたが「ニュートンがいなくても代わりがあるが、ケプラーの代わりは存在しない」と読んだことがある。前半はともかく、後半は真実のように思える。

ケプラーの分析力、想像力には、恐るべきものがある。私は天才中の天才の業績と考える。


蛇足。
本件に関して不思議な事件があった。私が上記のケプラーの天才性に気がついて感心していた頃、購読していたメルマガの一つに、「ケプラーは、地球から見た方角だけで、惑星が楕円軌道だと分かったんだね、すごいね」と言う意味のことが書いてあった。このメルマガは、文学系のもので科学やケプラーとは何の関係もない。

発行者に問い合わせようかと思ったが、発行者も何の回答もできないと判断し見送った。

不思議な事件である。