水虫のことなら私にまかせていただきたい。幸いにも国際水虫学会特別賞を授賞した私の最初の研究書「水虫は人生の友である」の中で述べたことであるが、結論から言うと水虫には、かつてルーマニアに実在した伯爵、かつ人類史上最も有名かつ狂悪な吸血鬼である、かのドラキュラに対するのと同じく、ニンニクがきわめて効果的である。
用法は簡単である。ニンニクをオロシガネで擦りおろしたものを水虫の患部に塗布するのがよい。これは私が水虫の研究をライフワークと定めてから最初の研究成果であった。はじめは患部にしみてかなり痛い思いをするが、どんなにひどい水虫でも二週間ほどで完治するはずである。実に簡単、コロンブスの卵とは、まさにこのことである。
ことのついでに述べておくと、私は、ドラキュラは水虫の霊が実体化したものであると推測しているのだが、しかし真理を追求する科学者としては安易な断定は許されるわけもなく、これは今後の地道な研究に待たなければならない。
そこで私の目下の研究課題は、またドラキュラと同じく、水虫もまた十字架に弱いのかどうかと言うことなのであるが、ここにおいて私の研究は暗礁に乗り上げている。というのは他でもない貴重な研究対象の水虫が、ニンニクと水虫の関係の研究以来、私の足から完全に消え去ってしまったからである。