五体投地とは、チベット仏教で行われる一種の苦行。

立った姿勢で礼拝し、次にその位置から体を倒して伏せ、両手を伸ばした状態となり、その姿勢で礼拝する。立ち上がって、両手の先端の位置まで進む。これを繰り返して、少しずつ前に進む。

これで巡礼をするそうである。速くやっても一分間に10メートルというところだろうか?本当にこれで巡礼するのだろうか?

「チベット 生と死の知恵」(平凡社,458285124X,松本栄一)。著者は、チベットの写真を撮りつづけている写真家である。本書127ページに、五体投地をしている写真が載っている。

本書は2002年の発行だが、この写真は1993年。行っているのは、「高校生くらいの少女二人」とのこと。真っ黒に汚れた顔が写っている。場所は寺の境内とかではなく荒野。これで旅をしていると思われる。驚くべきことである。

1993年とは、それなりに昔だが、気の遠くなるような昔ではない。また1949年に中国に侵略されてからも、かなりの年月が経っている。

現在とはまだそれほど遠くない時代に、少女が五体投地で巡礼をするというのが私にとっては本当に驚きである。

チベットを長年にわたって旅をしたフランス人のアレキサンドラ・デビットニールは、著書の中でチベットの僻地を巡礼をする多くの女性たちがいることを報告している。

一部の解説書では「跪いて頭を地につけること」を五体投地と言っているが、上記の本の写真では、完全に体全体を伏せて行っている。またネット上にも完全に体を伏せる写真が五体投地として紹介されている。

頭だけを地につけるのでは、「五体」ではないと言えるが、前述のように時間が非常にかかってしまうので、簡便化した形で行われるのかもしれない。