ある年の夏、スーパーの近くに段ボール箱に入れられて捨てられていた。まだ生まれて間もない猫だった。
数人が集まって心配していたが、けっきょく我が家で引き取ることになった。
連れて帰っても、ほとんど食べず、また目が目ヤニで塞がっている状態。また寝てばっかり。
手のひらに乗せて、指で輪を作ると親指と中指がくっついてしまう。そのくらい小さかった。
近所のヤブと評判の動物病院に連れて行った。生まれて二ヶ月くらいとのこと。男の子である。近所なのと料金が安いので、やむなくこちらにした。
「いや~、心配いりませんよ~」と明るく言っていたので、そのままにしていたが、状態は改善せず。
他の動物病院に行ったところ、人間には感染しないがウイルスに感染しているとのこと。ここに数回通った。
次第に元気になり、よく食べるようになった。元気になったら、いろいろといたずらをした。またちょっと外に出した隙に、行方不明になり、数時間後に見つかるまで、家族みんなを心配させた。猫がいると、家族の話題が猫のことばかりになってしまう。
名前はキョンになった。変な名前だが、本人は気にしていないだろう。
一人っ子のせいか、手を指し出すと、跳びついたり、噛みついたりして、じゃれてくる。
本を読むと「噛みつく癖をつけてはいけない」と書いてあったが、そのままにしていた。しばらくすると、噛みつきもせず、じゃれてくることもなくなった。赤ん坊の時は、そうなのだろう。
この子は、数ヶ月の間、我が家に居候し、知人宅に引っ越した。いまでも元気で活躍しているそうである。