寺島靖国vs藤岡靖洋 | 新天地開拓 ―25歳、趣味に走る女の場合―

寺島靖国vs藤岡靖洋

ミーハー的ジャズファンの私には、関東は驚くべき場所である。
田舎に住んでいたときは、
スイングジャーナル、ジャズライフ、ジャズ批評の3誌が
唯一のジャズ情報であり、
たまに来る地方周りの有名ジャズミュージシャンによってか
偏屈のジャズオヤジのジャズ談義からしか
ジャズ情報が得られず、またそれが当たり前の世界だった。
こちらに来ると、毎日のように好きなミュージシャンがライブをしていたり
すごい人が講座を開いていたり、店をやっていたり
嘘のような本当の世界がある。
それもジャニーズ系のファンと違い
雲の上のような人と普通に話せたりするのが
ミーハー的ジャズファンの密かな幸せだったりする。

そんなわけで、アンテナを立てていると
朝日新聞にカルチャーセンターの講座で
寺島靖国のジャズ講座をやっていた。
行ってみたいが、少々高い。
そこで、寺島靖国でネット検索をしていたら
吉祥寺ジャズ喫茶のメグが彼の店らしい。
(本人はジャズ喫茶ではなく、ジャズサロンと言っていたが。。)
ジャズ歴6年、ジャズ喫茶バイト歴3年で
そんなことも知らんのかと言われそうだが
ミーハーだから別にいいのである。
で、HPを見てみると、世界的コルトレーン研究家の藤岡靖洋氏が
来ると言うではないか!
これは一度見てみたかった人の一人である。
それもメグで、一気にジャズ界の大物二人と店を見られるなんて
行くしかない。
しかし、なんかいかにもいかがわしそうな通りの
ビルの2階にあり、ドアは
赤いビニールかなんかが張られていて
ほんとにいかがわしくて
24歳なのに正直びびってしまったが
帰るわけにもいかず入ってみた。
すると中まで赤で装飾されていて
とても美しい。
さすがと思いつつ、30分ほど前からじとーっと待機した。
開始が近づき、いろいろ人が入ってきて
美しい、若い女の人が入ってきたりして安心した。
で、目の前に座った、常連らしきカップルが話しかけてきて
「寺島さん、コルトレーン、耳栓するほど嫌いなんだよね。」
 … ………    えー!
そんな中始まった。
カルチャーセンターの講師紹介文など読むと
寺島氏は初心者に優しい、ジャズは何でも許してくれる人かと
思ってたのにー
一部は藤岡さんがオークションの話から、丁寧に話していた。
私は講義好きなので、楽しく聞いていたが
前の常連カップルは
「つまらないね」と同意を求めてくる。
怖くて、「いや、おもしろいです」とはとても言えない。
恐るべし、さすがジャズ喫茶。
私のバイト先に限らずやっぱりジャズ好きは偏屈だ。
休憩の合間、ここに来ている客がほとんど手にしている
DISKINNの袋からレコード自慢大会が始まった。
様子を見ていると、藤岡氏も近寄ってきて
バードの鳥ジャケのレコードを見ながら
常連「これ、安かったんだよー」
藤岡氏「なんぼしたん?」
常連「一万○○円くらい」
藤岡氏「全然安くないやん!」
常連「いや、前は5万くらいしたんで全然安いです。」
非常に興味深い会話である。
世界的コルトレーングッズコレクターが一般人の感覚が
あるというジャズトリビアであった。
やっぱ大阪で呉服屋をやってるだけあるわ。
そして、2部は黙ってしかめっ面をしていた寺島靖国
vs藤岡氏、のような構図であったが
ひたすら藤岡氏が攻撃をかわしていくあたり商人のテクを感じた。
寺島氏率いるメグの会が藤岡氏を食ってかかる様子は
一見、寺島氏が悪で、藤岡氏が善のように見えたが
後で考えれば、こんな議論をしている事自体
愛すべきジャズキチたちであり
彼らがより、ジャズを一般人から遠のけた気がした。
個人的には、コルトレーンの良さがどうしても理解できず
藤岡氏の話を聞けば、糸口がつかめるかもという期待で
来たのだが、なかなかわかりやすいヒントは見つからなかった。
しかし、コルトレーンの日本公演のカメラマンをした人や
ジャズ界の重鎮の二人を目の当たりにできたのは
やはり幸せの瞬間なのであった。