前回の続き、今回が最後となります。

 

通常の薬の有効率は、薬を使った全体の人数で効果のあった人の

人数を割ったものです。

 

1000人に投与して、100人に効果があれば有効率10%ということに

なります。ワクチンでは1000人投与して10人発症したとすると

残りの990人は未発症ですから99%の有効率と考える人もいるかも

知れませんが、未発症の人の内容を考える必要があります。

 

もちろんワクチンの効果で発症しなかった人もいるでしょうし、

そもそもウイルスにさらされなかったために感染しなかった人も

いるわけです。

 

上記の計算ではこのような人たちも有効であったグループに

カウントされてしまい、過大評価となります。

ワクチン本来の有効性を見るためにはこうした要素を除く必要が

ありますので、ワクチンの効果が無く、感染した人数をプラセボ

グループと比較することで有効性を計算します。


有効性は先発のファイザー社、モデルナ社のワクチンが非常に

高い成績を発表されていますが、それに続くアストラゼネカ社や

ジョンソン社のワクチンは数字の上では少し低い値になっています。

 

だからといってワクチンとしての価値が低いと言うことにはなりません。

どのくらい長く、強く免疫が残るのかは接種直後の感染を防ぐという

観点とはまた別のワクチン性能になりますので、今後の長期試験の

データが期待されます。


以上コロナウイルスワクチン関連の情報についてまとめてみました。

また更に新たな情報がありましたら適宜更新いたします。

 

 

前回に続きます。

 

ヒトの細胞にコロナウイルスの遺伝子を入れる方法は、

脂肪膜だけではありません。
もう一つはウイルスベクターと言ってヒトの細胞に感染する

ウイルスを使ってコロナウイルスの遺伝子を運び込む方法があります。

 

この方法は結構長い歴史があり、すでに遺伝子治療などで

使われてきています。ベクター(遺伝子の運び役)として使われている

ウイルスはいくつかありますが、コロナウイルスワクチンとして

開発されたのが、アデノウイルスをベクターとして使ったワクチンが

アストラゼネカ社、ジョンソン&ジョンソン社によって開発された

ワクチンです。

 

アデノウイルスは元来子供のプール熱など通常の風邪症状を起こす

ウイルスですが、このウイルスの遺伝子を書き換えて、自分では

増殖できなくした上で、そこにコロナウイルスのスパイクたんぱく質の

遺伝子を入れ込みます。ここから先はファイザー社などのワクチンと

同じ仕組みでスパイクたんぱく質を体内の細胞に作らせて、

それに対する免疫を反応をおこさせます。

次に問題となるのはこれらのワクチンにどの程度効果が

期待できるのかということです。

 

ニュースなどではファイザー社、モデルナ社のワクチンは90%以上の

有効性が得られたと報道されていますが、これはどういうことを

意味しているのかというと、実際に有効成分の入っているワクチンを

接種した人と有効成分が入っていないワクチン(プラセボといいます)を

接種した人たちの中で、どの程度コロナウイルス感染が発生したかを

比べての数値になります。つまり1000人に本物のワクチンを接種し

その中で10人が仮に発症したとします。同時に別の1000人に

プラセボワクチンを接種し、100人に感染が発症したとします。

 

そうするとワクチンの実薬接種グループの発症率はプラセボに

比べると10分1に減少したことになり、90%の有効率ということになります。

 

「その6」で最後となります。

 

 

前回に続きます。

 

ファイザー社やモデルナ社のワクチンは、コロナウイルスの

スパイク部分だけを作る遺伝子を脂肪の膜に包んで

体の細胞に届けます。
ワクチンは注射で筋肉内に接種されますので、筋肉細胞に

このスパイクたんぱく質の遺伝子が取り込まれます。
筋肉細胞はこのスパイクたんぱく質をたくさん作っていきます。
これはもちろん人の体には元々ない成分ですので、このスパイク

たんぱく質に対して体の免疫細胞が働き始めます。
こうなれば前述した従来のワクチンを同じ仕組みで

コロナウイルスに対する免疫が成立することになります。

ファイザー社、モデルナ社のワクチンは、脂肪の膜に遺伝子を包んで、

これを体の細胞の中に効率よく入れることに成功しましたが、

従来のワクチン作りからすると、こんな簡単な仕組みで

よく効率よく細胞に取り込ませることができたものだと

感心した次第です。


もちろんコロナ以前から様々なウイルスに対するワクチン研究の中で、

細胞に取り込まれやすい脂肪膜を研究開発していた成果ですが、

今までこの方法で成功していなかったことを考えると、個人的には

オリンピック初出場でいきなり金メダルを取ったような印象です。

お見事としか言い様がないですが、今後一流のアスリートに

なれるかどうか長期のデータが重要です。

 

「その5」に続きます。

前回の「その2」は、ワクチンについてご説明しました。

 

 

 

今回は、「もう一つの種類のワクチン」について解説したいと思います。

もう一つの種類のワクチンは、感染を起こすウイルスを感染しないように

不活性化して、ウイルスの構造物の一部を体の中に入れて免疫反応を

おこさせるタイプのワクチンです。ここでは、不活性化したウイルスの

どの部分を使うかがポイントになります。


これらは全体として不活化ワクチンといいますが、

分解の仕方によりスプリットワクチン、サブユニットワクチンなどとも

呼ばれています。


このタイプのワクチンは大元のウイルスを大量に増やして

そこからワクチンの材料を作るため、これまた製造に時間が

かかることになります。
この不活化ワクチンの代表例が、インフルエンザワクチンです。
欠点は、免疫を誘導する力が弱いことです。

 

今回コロナウイルスのために作られたワクチンは、

従来のものと異なり、コロナウイルスの一部を作る遺伝子を

ワクチン接種を受けた人の細胞に入れて、それらの部品を

体内で作らせようというタイプのワクチンです。

 

そもそも、コロナウイルスはどのように感染するのでしょうか?

 

この点は色々なサイトで詳しく解説されていますので

ごく簡単に説明します。
コロナウイルスは、名前の元になった表面にあるスパイク部分を

人の細胞表面にくっつけて細胞の中に潜り込みます。
潜り込むとウイルスの増殖に必要なたんぱく質を作らせるための

遺伝子を、細胞の中にあるたんぱく質合成装置に送り込みます。


感染された細胞は通常のたんぱく質合成の指令が来たと勘違いして

ウイルスの元になるたんぱく質をどんどん合成し、細胞の中で

ウイルスが増えることを手助けします。そして最後には細胞を

壊してウイルスが細胞の外に飛び出ていきます。

 

これで感染が成立です。

 

「その4」に続きます。

 

 

 

その1」では、ワクチンは、人の免疫に働き、
特定のウイルスなどの感染を予防するものであること、
症状が出るかでないかは、体の中のウイルス量によることをご説明しました。

今回のコロナウイルスが大変やっかいな点は、

この(症状が出ない)不顕性感染の状態でも他人に移してしまう

可能性があるということです。

 

不顕性感染ということは、体内でそれほど大量のウイルスが

増えていないことを意味しますが、それでも感染するということは

かなり感染力の強いウイルスであるということを意味します。

 

従って、目指すワクチンの性能として、

高い有効性の水準が求められることになるのです。

 

それではワクチンは、体内の免疫にどのように働くのでしょうか。

ワクチンがワクチンとして働くためには、やっつけたいウイルス

そのものか、そのウイルスの一部を体の中に入れて擬似的に

感染を体の免疫システムに知らせる必要があります。

 

ただ病気を起こすウイルスを入れてしまったら感染したのと

同じことですので、ウイルスを試験管の中で色々と操作して

あまり激烈な症状を起こさない種類のウイルスに改変します。

 

その弱い症状しか起こさないウイルスを弱毒株といいます。
弱毒株で作ったワクチンは生ワクチンとも呼ばれています。
麻疹(はしか)や風疹のワクチンが生ワクチンの代表例ですね。

弱毒株以外に同じような免疫反応をおこす別系統のウイルスを
使う場合もあり、これらも生ワクチンの仲間です。

 

生ワクチンは本物のウイルス感染を起こしたのと同じ状態に
なりますので、かなり強い免疫を誘導することができますが、
理想的な状態の弱毒株を作り出すのにかなりの時間を要し、
それを卵や培養細胞で大量に増やせるような仕組みや設備を
作るのにも時間がかかるのが欠点です。

 

次回は、「もう一つの種類のワクチン」について解説したいと思います。