前回お伝えしましたが、血圧が高いと健診等で指摘されているのに、

何もされていない方の多くは;

1.血圧が高くて何が悪いの?症状がないので大丈夫

2.食事に注意しているので体重が減れば血圧もそのうち下がる

3.医者に行くとクスリを飲めと言われるし、クスリを飲み始めると一生涯飲み続けなくてはいけないので飲みたくない!

 

こんな意見をよく聞いていました。

病院へ行くことにためらわれる気持ちは十分わかりますが、

特に自覚症状もないのであとでいいやと放置するとリスクがあります。

 

また、血圧を下げる際に処方される降圧剤について説明をしたいと思います。

 

前回のブログでは、降圧剤は疾患改善剤ではなく症状改善剤だとご説明しました。

例えば、抗生剤は細菌感染症に使われる薬ですが、病気の原因となる細菌を殺してしまえば病気自体も良くなるわけで、これは疾患改善剤となります。

 

血圧を下げる降圧剤、糖尿病治療で使われる血糖降下剤等現在使われている多くの薬剤が症状改善剤です。ですから飲んでいる間は血圧や血糖値は下がるが、止めれば元に戻ります。

 

高血圧症の本体は遺伝的素因をベースに血管の弾力性、心臓機能、自律神経の働きなど様々な要因が絡んで起こりますので、それらをまとめて修復する薬剤は存在せず、現在の降圧剤は疾患改善剤とはなり得ないということです。

 

先程3つ目に挙げた血圧管理をしないもうひとつ理由、「一生降圧剤を飲まなくてはいけない」というその考え方をまずは変えていただく必要があるかも知れません。

 

そもそも、高血圧そのものはかなり変動しても症状は出てきません。

しかし放置するとその先に動脈硬化、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞といった命にかかわる大きな病気になってしまいます。降圧剤はそのような病気にならないようにするための予防手段のひとつです。

 

年齢が進むと色々と健康リスクが高まってきます。

首、肩や膝が痛くなる、認知症、がんになるなど様々ある中で、降圧剤は血圧に関係する病気の進行を防いでくれるわけですから「降圧剤を飲むだけで健康リスクがひとつ減らせる」という考え方に変えてみてはいかがでしょうか。

 

ということで血圧が高いといわれたら、自分は大丈夫!と無視しないでしっかり治療してください。

今回はクリニックの外来でよくお見かけする

『高血圧あるある』、について少し書いてみました。

 

血圧が高いと健診等で指摘されているのに、何もされていない方の多くは;

1. 血圧が高くて何が悪いの?症状がないので大丈夫

2. 食事に注意しているので体重が減れば血圧もそのうち下がる

3. 医者に行くとクスリを飲めと言われるし、クスリを飲み始めると

  一生涯飲み続けなくてはいけないので飲みたくない!

 

こんなことではないかと思います。

 

まず、「1.」の症状がないという点です。

高血圧症は血圧が高いだけでは通常症状はありませんが、

むしろ症状が起こったときには取り返しがつかなくなっていることが多いのも事実です。

 

血圧は日常生活中でかなり変動します。

安静にしているときで上の血圧が120mmHg程度の正常血圧の人でも、ちょっとイラッとしたり、会議で興奮したりすると200mmHg近くまで上昇することもまれではありません。

 

それが高血圧で普段でも150とか160の数値の人が同じように上昇すると、楽に250を超えてしまうことになります。

最悪の場合、初めて経験した高血圧の症状が脳出血で意識不明ということにもなりかねません。

 

次に「2.」の食事です。

高血圧の場合、食事療法では減塩食が基本です。

ところが多くの方は体重を減らすダイエットと一緒だと考えているので要注意です。

 

通常の体重を減らすダイエットですと、食事量を減らすことだけを考えていることが多く、少ない食事で満足感がない分、味付けが濃くなる、すなわち塩分が多くなる結果になります。

 

30歳、40歳代で血圧が高くなる本態性高血圧の方は、

残念ながら減塩だけではなかなか正常血圧にはなりません

(減塩は基本的に行っていただきたい事ではありますが)。

 

『本態性高血圧』という病名を聞くと、さも病気の原因などすべてが分かっているかのように思われがちですが、何も分からない為に名づけられたのがこの『本態性』という病名です。

 

色々検査したけれど他に異常はなく、血圧だけが高いという方がこれに当てはまります。これは遺伝的要素がかなり大きいので、薬剤無しでの血圧管理は難しいと考えた方が良いでしょう。

 

もう少し年齢が進んで50歳代後半くらいからそれまで正常だった血圧が急に上がってきて、併せてコレステロールも上昇、腹回りもふくらんでメタボ体型になってきている場合、動脈硬化の進行に伴う血圧上昇、すなわち動脈硬化性高血圧の可能性が高くなります。

 

こちらはしっかりメタボ解消の運動、食事療法をやっていただくと血圧も下がってくれます。

 

診療所に行くと、まず高血圧を起こしている病気がないかを調べます。

そのため血液検査、心電図、毎日の家庭での血圧測定等をやっていただき、前述の本態性高血圧なのか、メタボによる動脈硬化で起こっている高血圧なのか内分泌臓器の病気による二次性の高血圧なのかといった診断をつけて、それに合わせた治療を行います。

 

腎臓や副腎といった臓器に腫瘍ができると高血圧になることがあり、手術で取り除くと高血圧が正常化します。メタボでは血圧以外に高コレステロール、高中性脂肪、2型糖尿病といった病気も併せて起こっていますのでそちらの治療も同時に行います。

 

さて高血圧の場合、食事・運動療法は必須ですが、やはり血圧を下げる降圧剤は欠かせません。

先ほどの冒頭「3.」でもありましたが、『飲み始めると一生服薬が続くから飲みたくない』おっしゃる方が多いのですが、それは降圧剤が疾患改善剤ではなく症状改善剤だからです。

 

『疾患改善剤』や『症状改善剤』など、普段はあまり聞かない用語かと思いますので、

次回は詳しい解説と、必要な治療についてお話をしたいと思います。

皆さん、こんにちは。


ゴールデンウィーク後に懸念されていた、コロナウイルス感染症の爆発的流行もなく、朝の通勤電車はコロナ禍前の混雑に戻って、まずは一安心?かと思ったら、出勤前に鏡を見て、在宅勤務ですっかり成長した胴回りと、マスクで隠れていたほうれい線の深さをみて改めてびっくり!ということはありませんか?

今回は、最近マスコミなどで特集されるダイエット法で『ベジファースト』(ベジタブルファースト)という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、その辺のお話をしたいと思います。

ベジタブルファーストとは、『食事ではまず野菜を最初に食べましょう』というスローガンです。
小池都知事の都民ファーストとかトランプ元大統領のアメリカ・ファーストなどのファーストからの連想で野菜第一主義という意味ではありませんね。

それではなぜ野菜を最初に食べるとダイエットにつながるのでしょうか?
一番気になる胴回りにたまっている体脂肪は、体内の脂肪細胞が中性脂肪を貯め込んだ結果です。中性脂肪は糖質と同じく貯蔵用のエネルギーですが、糖質よりはるかに多量のエネルギーを蓄えることができます。

ご飯、うどんといった炭水化物は糖質の代表的なものですが、炭水化物を食べると腸で吸収・代謝されグルコースとなって血液に入ります。これを測ったものが血糖値です。


この血液中のグルコースは脳や筋肉に取り込まれて活動エネルギーとして使用されますが、余った分は中性脂肪に変換されて内臓脂肪や皮下脂肪として蓄積されます。この変換をコントロールしているのがインスリンというホルモンです。インスリンは血糖値を下げるホルモンとして知られていますが、血液中から魔法のようにグルコースを消し去っているわけではなく、細胞に働きかけて血液中から筋肉細胞に糖質をせっせと移動させたり、中性脂肪に変換して脂肪組織に貯め込むように作用しているのです。

食事をして血糖値が一定量以上に上がりますと、膵臓からインスリンが分泌され上記の仕組みが動き出します。このとき血糖値が急激に上がるとインスリンが必要以上に分泌され、中性脂肪への変換がより多く行われるという結果になります。

そこで食事の最初にまず野菜をしっかり噛んでゆっくり食べることにより、腸管での血糖値の急激な吸収を抑えます。そうするとインスリン分泌の急激な上昇がなくなり、糖質から脂肪への変換も減少して、結果としてお腹周りの脂肪を減らせるという理論がベジファーストです。

実際食事での血糖値変化をモニターした臨床試験では、野菜を最初に食べると血糖値の上昇が明らかに抑えられ、インスリン分泌も減るというデータが得られています。

 

すなわち、同じ量を食べる場合、ベジファーストの方が余分な脂肪蓄積が少なくなることが推定されます。また早く満腹感が得られ、食事量も少なくなるという副産物もあるようです。


逆に、食事の時に最初にご飯をかき込んでしまうと血糖値は急激に上昇し、過量のインスリンにより糖質から中性脂肪への変換が増えてしまいます。毎日の食事でこの現象が繰り返され、過量のインスリン分泌に曝されているとインスリンへの感受性も鈍くなり、インスリンが大量に存在しないと細胞が糖質を受けとらなくなるインスリン抵抗性という状態になります。これはまさに糖尿病への道です。また一方では増えたインスリンにより中性脂肪がますます上がり、脂質異常症という状態にもなりうるということです。

 

野菜から食べる「ベジファースト」、食事内容の順番だけでもこのように複雑な仕組みが働いていますので、ダイエットは一筋縄ではいかないことは想像できるのではないでしょうか?

 

しっかりとそれぞれのダイエット法の仕組みを理解した上で実行していただくことがダイエット成功への近道です。

 

 

 

最後に、「季節性に移行する」という予測についてお話したいと思います。

 

今後、新型コロナウイルスは季節性インフルエンザと同様に季節性に移行するという予測があります。

 

そうなると、インフルエンザワクチンのように毎年ワクチン接種を受ける必要が出てくるという話がでてきます。

季節性インフルエンザは、気温との関連や鳥と人の間でウイルスがやり取りされるため、渡り鳥が原因となって季節性流行が起こるともいわれ、暑い時期でも流行していたコロナ感染症は少し異なる状況のようにも思います。

 

また、今のところコロナウイルスを媒介してインキュベーターの役割を果たす身近な動物もいないようなので、ヒトの中での感染を抑えることができれば早期に終息することもあり得ると思います。

 

素人が適当なことを言うなとウイルス学者に怒られるかも知れませんが、これはあくまでも私の希望的観測で、早くそうなることを願っているということでご理解ください。

以上、新型コロナウィルスの今後についてお話をしてまいりましたが、

皆さんのワクチン追加接種についての参考になり、今後の新型コロナウィルスとの付き合い方について、何かしらの気づきとなれば幸いです。

 

 

前回お話しました「今後既承認ワクチンの追加接種をどうしたらよいか」について、一つ目の見解である「個人差が非常に大きい」ことについてお話したいと思います。

今回の新型コロナウイルスは特徴のひとつに、『ウイルスへの反応に個人差が非常に大きい』というものがあります。

インフルエンザウイルス感染では、感染者が一人いると周辺にいるほとんどの人に感染が起こり、程度の差はあれ症状が出ます。

ところがコロナウイルス起源株での感染状況を見ますと、このコロナウイルスは症状が出る人は20%程度で、残りの80%は感染しないか、感染しても症状が出ずに回復しています。

いずれの場合も本人は気がつかずに日常行動をすることになります。

感染しなかった人はよいのですが、感染しても症状が出ない人は気がつかずにその周囲の人に感染させてしまいます。

 

また感染者の一部に本人の症状とは関係なく非常に多くの人に感染させてしまうスーパースプレッダーが存在するという特殊なクラスター感染現象が多数観察されました。

 

そのため、感染症対策としては症状が出た感染者とその接触者への行動歴の聞き取り調査が非常に重要となり、保健所職員のみなさんが大変苦労されたクラスター対策となったわけです。このコロナウイルスの性質はオミクロン株になっても変わらず、むしろ感染力と症状のステルス性が強化されたといってもよい状態です。

そのような現状を考えると今後の接種としては、自分自身の感染も重要ですが、もう一つ周囲の人への配慮としてワクチン接種を考えることも重要ではないかということになると思います。

 

すなわち、コロナ感染弱者(コロナウイルス感染を起こすと重症化する可能性がある高齢者、糖尿病や高血圧などの持病を持っている等の人)が周囲にいらっしゃる場合は、ワクチンを積極的に追加接種することを考慮した方が良いということになります。

 

また健康な小児や若年成人など感染率、重症化率が低い集団では感染状況を見て検討ということで良いかと思います。

 

以前にもブログで伝えたかもしれませんが、やはりご自身の周囲の状況を考えて決めるということが非常に大切です。

 

次回は、「季節性に移行する」という予想についてお話したいと思います。