石造りの小さな家の前に、少女と朱里はやってきた。
「お姉ちゃん、バケツをここへ入れて」少女はそう言って、外にある物置の戸を開けた。
朱里は言われたとおりに、原油の入ったバケツをそこへ入れた。そして、二人は家の中へ入っていった。
最初に、少女は朱里をつれて寝室へ入っていった。その部屋にはベッドが二つあり、一つのベッドに少女の母親が緑色のパジャマを着て横になっていた。様子からして、どうやら彼女は何かの病気のようだ。
「お帰り。遅かったわね」
ベッドに寝たまま、心配そうに母親は言った。
「ママ、ただいま」少女がうれしそうに答える。
親子の何げない会話が、朱里はとても羨ましかった。もう地球へ帰れない、おばあちゃんに逢えない、そう思うと彼女はすごく寂しくなってきた。
「このお姉ちゃんが行くところがないんだって。しばらくうちに泊めてあげていいでしょ」少女が事情を話すと、「初めまして、朱里です。よろしくお願いします」と、自己紹介をした。
「こちらこそ、この子をよろしくお願いね」
少女の母親のは、少し癖のある髪を長めにのばし、色白で細身、目には生気がないが、穏やかな顔立ちでとても優しそうな人であった。
少女の家は一階建てで、寝室が二部屋に、居間兼食堂、台所があり、浴室とトイレは日本のように別になっている。床は石材で、入浴と寝るとき以外は靴を脱がない。部屋の明かりは石油ランプでかなり明るい。石英を加工する技術もあるようで、窓にはガラスがはめ込まれている。
家具類は石作りか木製で、食器類は陶器や木製、鉄製もあった。見かけは地球の素材と変わらないが、根本的なちがいがある。それは、硬さや重たさなどである。生物を含めたこの惑星の物質全体がそうなのだ。
しかし、それは地球人だけの感覚で、この惑星の人たちには決してそうではない。朱里にとって軽かった岩も、この惑星の人間には絶対に持ちあげることはできない。
少女が朱里を空いている寝室へ案内し、その部屋の石油ランプをつけた。
「この部屋、空いてるから、お姉ちゃんはここに泊まってね」
「ありがとう」
「私、お風呂沸かして、食事の準備してくるね。お姉ちゃんは、この部屋で休んでて。食事ができたら呼びに来るね」
部屋から少女が出て行こうとしたとき、朱里は訊いた。
「パパはまだ帰ってこないの?」
「パパはいないの」
少女はさらっと答えたが、朱里は余計なことを訊いたと思い、それ以上何も言わなかった。
部屋に一人になった朱里は、ザックを隅へ置いて、ベッドに腰かけ、部屋の中を見回した。室内はとてもシンプルで、いい雰囲気だった。東京の自分の部屋とはまったくちがうが、朱里はなぜかすごく心が落ち着いた。
「なんか、こういう部屋もいいな」
そうつぶやいて、朱里は深呼吸をした。
「お姉ちゃん、バケツをここへ入れて」少女はそう言って、外にある物置の戸を開けた。
朱里は言われたとおりに、原油の入ったバケツをそこへ入れた。そして、二人は家の中へ入っていった。
最初に、少女は朱里をつれて寝室へ入っていった。その部屋にはベッドが二つあり、一つのベッドに少女の母親が緑色のパジャマを着て横になっていた。様子からして、どうやら彼女は何かの病気のようだ。
「お帰り。遅かったわね」
ベッドに寝たまま、心配そうに母親は言った。
「ママ、ただいま」少女がうれしそうに答える。
親子の何げない会話が、朱里はとても羨ましかった。もう地球へ帰れない、おばあちゃんに逢えない、そう思うと彼女はすごく寂しくなってきた。
「このお姉ちゃんが行くところがないんだって。しばらくうちに泊めてあげていいでしょ」少女が事情を話すと、「初めまして、朱里です。よろしくお願いします」と、自己紹介をした。
「こちらこそ、この子をよろしくお願いね」
少女の母親のは、少し癖のある髪を長めにのばし、色白で細身、目には生気がないが、穏やかな顔立ちでとても優しそうな人であった。
少女の家は一階建てで、寝室が二部屋に、居間兼食堂、台所があり、浴室とトイレは日本のように別になっている。床は石材で、入浴と寝るとき以外は靴を脱がない。部屋の明かりは石油ランプでかなり明るい。石英を加工する技術もあるようで、窓にはガラスがはめ込まれている。
家具類は石作りか木製で、食器類は陶器や木製、鉄製もあった。見かけは地球の素材と変わらないが、根本的なちがいがある。それは、硬さや重たさなどである。生物を含めたこの惑星の物質全体がそうなのだ。
しかし、それは地球人だけの感覚で、この惑星の人たちには決してそうではない。朱里にとって軽かった岩も、この惑星の人間には絶対に持ちあげることはできない。
少女が朱里を空いている寝室へ案内し、その部屋の石油ランプをつけた。
「この部屋、空いてるから、お姉ちゃんはここに泊まってね」
「ありがとう」
「私、お風呂沸かして、食事の準備してくるね。お姉ちゃんは、この部屋で休んでて。食事ができたら呼びに来るね」
部屋から少女が出て行こうとしたとき、朱里は訊いた。
「パパはまだ帰ってこないの?」
「パパはいないの」
少女はさらっと答えたが、朱里は余計なことを訊いたと思い、それ以上何も言わなかった。
部屋に一人になった朱里は、ザックを隅へ置いて、ベッドに腰かけ、部屋の中を見回した。室内はとてもシンプルで、いい雰囲気だった。東京の自分の部屋とはまったくちがうが、朱里はなぜかすごく心が落ち着いた。
「なんか、こういう部屋もいいな」
そうつぶやいて、朱里は深呼吸をした。