次の日、朱里と少女は原油を石油精製所へ売りに行くため、出かけていった。
朱里は、少女の母親にもらったワンピースとフードつきマントを着たので、靴以外はこの星の人々と見分けはつかない。この星の人たちの靴は布製か何かの動物の革製で、やはりシンプルなデザインをしていた。朱里の靴はスニーカーであった。
石油精製所は町はずれにあった。原油の入ったバケツは満タンでいつもより重たく、少女が持つには大変だから、朱里が持って歩いていった。
「お姉ちゃん、その服のほうが似合うわよ」と少女が言って微笑んだ。
「こういう服も素敵」朱里はうれしそうに言った。
服装によって人は気分が変わるものである。朱里は学生服から今着ている服に替えて、なんだか心が解放された気分になった。
少女と朱里が石油精製所に入ると、小太りで四十代ぐらいの肉体労働者的な顔立ちのおじさんが出迎えてくれた。
「お、嬢ちゃん。原油が取れたのか?」
「うん、おじさん。このお姉ちゃんが手伝ってくれたから取れたの」
そう少女が言うと、おじさんは朱里を眺めて言った。
「見ない顔だな」
「お友達なの。お姉ちゃん、おじさんにバケツを渡してくれる」
朱里は軽々と持っていたバケツを渡すと、おじさんはバケツを落としそうになった。
「な! 重いじゃないか」おじさんは蓋を開け、「満タンだな……。君が軽そうに持っていたんで、てっきり少ないのかと思った」と言った。
「お姉ちゃんは力持ちなのよ」少女が言うと、「そうみたいだな」とおじさんは言って笑った。そして、「ちょっと待っててな」と言って、原油のバケツを持って彼は奥のほうへ行った。
数分して、空のバケツと硬貨十枚のお金を持って戻ってきた。そして、それらを少女に渡して言った。
「はい、今回の換金分の百エンだ」
「百エンも! いいのおじさん?」
少女が驚いて言った。
「ああ。これから原油を満タンで持ってきたら、百エンで買い取るぞ。でもな、原油の泉は危険なところだ、あまり無理はするんじゃないぞ。怪物がいないときだけだぞ」
「わかってる。いつも同じこと言うんだから」
少女はそう言って笑った。
おじさんが心配するのも当然である。危険な泉へ行って命懸けで原油を取って来るのは、金銭的にかなり苦しい人だけだからだ。しかも、原油の泉で命を落とした大人がたくさんいるというのに、少女はまだ子供だ。
原油は普段、山の向こうのブールという町から買い取っている。ブールにある原油の泉では、安全に原油を取ることができるが、土地の所有者がいるため、ほかの人が勝手に取るわけにはいかない。つまり、その土地の所有者は独占的に原油を売っている企業のようなものである。
二人は石油精製所を出てきた。
「百エンじゃ、安いんじゃない?」朱里が訊くと、「どうして? 百エンあったら五日間は生活費に困らないわよ」と少女が答えた。
「そうなんだ!」
朱里は少し驚いたが、ここは地球でもなければ日本でもない、物価がちがうのはあたりまえである。それよりも、貨幣単位を『エン』と言っていたが、彼女は不思議だとは思わなかったらしい――みんな普通に日本語を話すから、いろんなことが少しずつ麻痺してきたのかもしれない。
朱里は、少女の母親にもらったワンピースとフードつきマントを着たので、靴以外はこの星の人々と見分けはつかない。この星の人たちの靴は布製か何かの動物の革製で、やはりシンプルなデザインをしていた。朱里の靴はスニーカーであった。
石油精製所は町はずれにあった。原油の入ったバケツは満タンでいつもより重たく、少女が持つには大変だから、朱里が持って歩いていった。
「お姉ちゃん、その服のほうが似合うわよ」と少女が言って微笑んだ。
「こういう服も素敵」朱里はうれしそうに言った。
服装によって人は気分が変わるものである。朱里は学生服から今着ている服に替えて、なんだか心が解放された気分になった。
少女と朱里が石油精製所に入ると、小太りで四十代ぐらいの肉体労働者的な顔立ちのおじさんが出迎えてくれた。
「お、嬢ちゃん。原油が取れたのか?」
「うん、おじさん。このお姉ちゃんが手伝ってくれたから取れたの」
そう少女が言うと、おじさんは朱里を眺めて言った。
「見ない顔だな」
「お友達なの。お姉ちゃん、おじさんにバケツを渡してくれる」
朱里は軽々と持っていたバケツを渡すと、おじさんはバケツを落としそうになった。
「な! 重いじゃないか」おじさんは蓋を開け、「満タンだな……。君が軽そうに持っていたんで、てっきり少ないのかと思った」と言った。
「お姉ちゃんは力持ちなのよ」少女が言うと、「そうみたいだな」とおじさんは言って笑った。そして、「ちょっと待っててな」と言って、原油のバケツを持って彼は奥のほうへ行った。
数分して、空のバケツと硬貨十枚のお金を持って戻ってきた。そして、それらを少女に渡して言った。
「はい、今回の換金分の百エンだ」
「百エンも! いいのおじさん?」
少女が驚いて言った。
「ああ。これから原油を満タンで持ってきたら、百エンで買い取るぞ。でもな、原油の泉は危険なところだ、あまり無理はするんじゃないぞ。怪物がいないときだけだぞ」
「わかってる。いつも同じこと言うんだから」
少女はそう言って笑った。
おじさんが心配するのも当然である。危険な泉へ行って命懸けで原油を取って来るのは、金銭的にかなり苦しい人だけだからだ。しかも、原油の泉で命を落とした大人がたくさんいるというのに、少女はまだ子供だ。
原油は普段、山の向こうのブールという町から買い取っている。ブールにある原油の泉では、安全に原油を取ることができるが、土地の所有者がいるため、ほかの人が勝手に取るわけにはいかない。つまり、その土地の所有者は独占的に原油を売っている企業のようなものである。
二人は石油精製所を出てきた。
「百エンじゃ、安いんじゃない?」朱里が訊くと、「どうして? 百エンあったら五日間は生活費に困らないわよ」と少女が答えた。
「そうなんだ!」
朱里は少し驚いたが、ここは地球でもなければ日本でもない、物価がちがうのはあたりまえである。それよりも、貨幣単位を『エン』と言っていたが、彼女は不思議だとは思わなかったらしい――みんな普通に日本語を話すから、いろんなことが少しずつ麻痺してきたのかもしれない。