新年あけましておめでとうございます。

昨年は例年より更新数が少なかった気もしますが、一年間読んでくださりありがとうございましたm(_ _)m

振り替えってみれば、「アカシックレコード」から始まり、「Restart」「Spes」「少女たちよ」の四つしか記憶にありません(^^;;

記憶にないというか、多分それらしか書いてないんですけどね(;^_^A

そう考えると、いくら休載期間があったとはいえ、凄く少ないなぁ、と思ってしまいます。

今年はこれら以上の小説が書けるよう、日々精進致しますので、暖かく見守ってください。


それと、四年以上経つブログですが、未だに「BR 小説」で検索して来て下さるのは、とても嬉しいことですし、本当にありがたいと心から感謝しています。

ただ、何故か毎日のように「大島優子 妊娠 小説」や「大島優子 10年桜」で来る人は意外過ぎて首を捻って「?」マークを浮かべてます(^_^;)


今も、検索に引っ掛かってたまたま来て下さった方、折角出会えたのですから、暇つぶしに短編でも読んでみてください。
合わなければそのまま引き返してくれて結構ですので(^-^)

それでは長々となりましたが、2013年も宜しくお願いしますm(_ _)m




もうどのくらいの間、もの食べてないんだろう。

いや、食べてはいるけど、一日に一、二回くらい思い出したように冷蔵庫を開けて、二日前に炊いた米だとか、果物だとか、中にあったものを適当にそのまま食べているだけだった。
 

なんだかものを食べることすら面倒臭い。
 

それよりも眠たい。
 

今この道端にうずくまって眠ってしまいそうなくらい。
 

この寒さなら確実に死ねる。





ふぅっと息をつくと白いもやが現れる。

顔を上げて、もうもうと真っ黒な夜空へ向かっては溶けていくそれを眺めながら歩く。
 

わたしは冬の白い息が好きだった。


とても美しい、と思っていた。


だけどとても悲しいとも思っていた。


吐いた息は消えてなくなってしまうんじゃない。


ただ、目に見えなくなるだけなのに。


だから、いつもそこに居るのに、誰にも気付かれない。


それはものすごく悲しいことだと思う。





例えば、わたしが、

雪でスリップした車に吹っ飛ばされて電柱かガードレールかどっかに頭ぶっつけて死んだとしても、


ひとり暮らしの女性を狙った卑劣な犯罪に巻き込まれたとしても、


空腹と貧血で道端で倒れてそのまま朝まで発見されずに凍死したとしても、


わたしは悲しくなんかない。


悲しくなんかないよ。


こうして冬の息みたいに生きてる方がよっぽど悲しいもん。










冬の家路はいつも悲しくなる。


うちに着いたらまた冷蔵庫を開けるだろう。


まだ何か残っていたらわたしはまた生き永らえるだろう。


こんなに悲しいのに、生きてしまう。


だから余計に悲しいんだ。
 
 





例えば冬の息の美しさに気付く人がわたしの前に現れたなら、


この悲しみもあと少しだけ和らぐような気がしてるんだ。






おわり
手袋をなくした。

ちっ、と小さく舌打ちをして、私は元来た道を引き返した。

おそらくコートのポケットから煙草を取り出したときに落としたのだろう。


今日も雪が降っている。

降り積もって踏み固められた真っ白な雪道を見渡しながら歩く。

風が吹くと顔が凍りつくようにつんと冷たい。

どの辺に落としたんだろう、私のミトン。

柔らかなクリーム色の、ふわふわのミトン。

あの人が私に似合う色だと買ってくれたミトン。

穏やかで優しくて、ほんわかしてて、女の子らしい私にぴったりの色だと言っていた。

笑わせる。

そんな女の子がどうして煙草なんか吸うか。どうして午前二時半の誰も居ない雪道をひとり歩いたりするか。
 

ポケットから手を出して、灰を落とすために煙草をつかんだ。

一瞬にして手が冷え切る。

くそ、寒い。

なんで今年の冬はこんなにも寒いんだ。

雪だって、なんで懲りもせずこんなに降り続けてんだ。

私のイライラなんか知る由もない無知な雪は、つらつらと私めがけて降りてくる。
 
(雪、きれいだなあ)

どこからか声が聞こえてきた。

(俺、冬って好きだよ。寒いけど)

ああ、嫌だ、

(寒いけど、その分、手つないだときにさ、あたたかさがよくわかるから)

やめて、思い出したくない、


私は冷え切った手をポケットに戻すのも忘れて、立ち尽くした。

私の手を包み込んでくれるもの、全部、なくなってしまったんだ。
 

私はいつだって冷たい手をして待っていた。

誰かが包み込んでくれるのを。

あたたかさをずっと待ってたんだ。

でも今私を取り囲んでるのは、優しいけど冷たい、雪だ。

 


 

私は再び歩き出した。

ミトン、私のミトン、一体どこに行っちゃったんだろう。

真夜中の雪道で、私はちっぽけなあたたかい手袋を探してどこまでもざくざく歩いて行った。






おわり


下水道のねばついた壁には、鼠やゴキブリ、カマドウマやウジムシなどが、それぞれ活動していた。

ぼくの隣を腐った林檎が流れている。彼らは林檎に群がったが、ぼくには関心ないみたいだ。

いったいどれほど時間が経ったのか。ずいぶん流された気がする。幾つかの流れが合流する地点で、懐かしい奴と再会した。昔、渋谷のショップで一緒に並べられていた仲間のポンポンだ。ぼく以上に汚れ、ナイフで切られたような傷まである。

腐った林檎、それに二つのポンポンが並んで流れていく。


10

ゴキブリたちはやがて交尾し、子孫を残す。林檎も実のなかに種を宿し、地面に植われば木となれたはずだ。しかし彼は、もはや林檎としての目的を失っている。

ぼくはどうか。

少女の手から離れ、野球のボールでさえなくなったぼくは、腐った林檎と同じなのか。

答えはNOだ。

「ポンポン」という商品だとか、そんなのは人が勝手に決めた役割だ。元々ぼくには目的もなく、何かに依存したこともない。


11

死とは何だろう。いなくなることだ。

生とは何だろう。いるだけのことだ。

愛や憎しみって何。周りへの期待や執着なら、ぼくには関係ない感情だ。

抱きしめられれば温かいし、投げつけられたらホントは痛い。でも、そんなことで気持ちは揺れない。この先何があっても、ぼくは平気だ。

悲しくなんかない。


12

けれど、この先なんてなかった。

流れの途中で柵があり、たくさんの浮遊物がせき止められ、かったるそうに溜まっていた。いつか清掃員に回収されるまで、浮かんでいるんだろう。

空き缶やペットボトル、木の枝や魚の死骸、その腐乱した姿には未練があり、水が揺れるたび、ざわざわと騒ぎ立つ。


13

あるとき一枚のゴム手袋が流れてきた。彼は言った。

「なんて惨めだ。なんて悔しい存在なんだ。捨てられた俺たち。この地獄を、この怨みを、清潔無害な消費文化に耽る奴らに見せてやりたい」

手袋の言葉はゴミたちを揺るがした。ざわめきが広がる。

「俺は約束しよう。君たちを必ず救済してみせる!」。手袋は力強く宣言した。

気がつくと、もう一個のポンポンがいない。ナイフの傷から水を吸い、重たくなって沈んだのだろうか。

腐った林檎は周りに同調して揺らぎ、こすれあいながら、ときどきキュリ、キュリ音を出す。

ぼくは静かに浮かんでいるだけだ。


14

それから日が経ったが、手袋は何もできなかった。ゴミたちはふやけ、明らかに不満そうだ。

あるとき手袋はこう言った。「これより濁流を遡り、マンホールから噴出して、人間どもを急襲する。目にもの見せてやろうじゃないか」

だけど、誰もそんなことはできなかった。

別の日に、手袋は言った。「神様がいるなら、こんな我らを見捨てるはずない。みんなで祈れば、奇跡が起こり、大願成就となるであろう」

だけど誰も祈らないし、何も起こらなかった。

それから手袋は沈黙し、ゴミたちは虚脱した。


15

ある日気がつくと、ぼくは水面から三十センチくらいのところを浮かび、醜くひしめくゴミたちの群れを見下ろしていた。

その中には、すっかり腐って水膨れしたぼくの死体もあった。もはや丸くもなく、軽さもない溺死体である。

ぼくは飛んだ。地面をすり抜け、空に飛び出す。

天国ってあるのかな。それとも、やがて消えてしまうのか。





おわり