23日の水曜は岡崎ゆみさんのリサイタル。夜、虎ノ門のJTのホールへ行く。
岡崎さんは妊婦さんや幼児のためのコンサートをしていて、「クラシックを聴くと良い子が育つ」という本を我が社で出している。クラシックの演奏家は、会場に幼児が来ることを嫌うから、岡崎さんのようなコンサートをやる人がいない。多分、初めての試みじゃないだろうか。私はかつて彼女の話に共感し、本を出すことにしたのだ。子供の頃に美しい旋律を脳にしみこませておけば、必ずいい子が育つと私も信じている。ズンズンズンというロックの音を幼児の脳にたたき込んだら、障害をもたらすということも言われている。
ゆみさんは日本と中国の架け橋になった岡崎嘉平太氏の孫である。全日空を民間航空会社に育て上げた実業家としても知られる。岡崎氏が今生きておられたら、最近のこういう日中の関係をどう思われるだろうか、と時々思う。
その日のコンサートは大人向けのものだった。どちらかといえば、フランス派のピアノ曲の夕べという印象だった。ゆみさんはハンガリー留学組で、本領はリストの曲などだが、その日弾いたドビュッシーの「小舟にて」が私には良かった。印象派の一幅の絵を思わせるような、明るく、淡い光が感じられる演奏だった。ラベルの「洋上の子舟」とか、ショパンのノクターンや有名な「舟歌」も弾いてくれた。ショパンはポーランドの作曲家といわれるけれど、二十歳くらいからずっと死ぬまでフランスで活躍したし、父親もフランス人だし、やはり、彼の音楽はフランス的だと思う。
岡崎ゆみさんと知り合ってもう十年以上になる。大学時代の同期で、電通の第十二局長をしていた横山敬典の紹介だった。彼女のお父上にもお会いしているし、彼女を音楽家に育てた母上にもお会いした。ご主人の重竹さんとの結婚式にも出席した。昔はお母さんが、結婚してからは重竹さんが、コンサートを裏で支えている姿を見てきた。独りの音楽家を育て、支えるというのは並大抵のことではない。私の母も戦前、東洋音楽学校(今の東京音大)の声楽科を出た人で、姉もピアニストだったから、大変さがよくわかる。姉は幼いころ、母がつききりで一日5時間も練習させられたといっていたことを思い出す。
岡崎さんの音楽家としての姿勢が好きだ。とかく、クラシックの演奏家は自分の弾きたい難しい曲を弾く。お客に対するサービスを考えない人が多いけれど、ゆみさんは、まず、お客を楽しませたいと考える演奏家だ。そういうところが好きである。子供のためのコンサートという誰もやりたがらない困難な分野を開拓したことは、もちろん素晴らしいことだが。
