昨日がわが社の仕事納め。社員たちとシャンパンで乾杯。出版大不況の荒波の中、いろいろなこともあったが、なんとか乗り越えて年が越せるという感慨がある。数日前、産経新聞のパリ特派員をしていたた山口昌子さんがまた帰国したので、食事をした。大学の先輩でもあり、ほんとに長いお付き合い。彼女が書いた「パリの福澤諭吉」という原稿のことや最近のフランス事情など、話が尽きない。山口さんの、特派員在任23年というのは、多分記録になるほど長いキャリアだが、小さな体と静かな物腰ながら、シラク元大統領はじめ、要人に直撃取材する記者根性には敬服してきた。昨年、女性では森英恵さん以来という高位のレジョン・ドヌール勲章を受章してお祝いをした。ヨーロッパの大国として輝いていたフランスの国力がますます衰えているという話になったが、フランス人たちの態度、生き方は変わらないという。国力と個人の生き方は関係ない、というところが「成熟社会」の証かもしれない。イタリア人もご同様である。
NHKが日曜の夜11時から、「ダウントン・アビー」というイギリスのドラマを放映している。20世紀初頭、貴族の時代が終わろうとする頃の伯爵一家の物語。アメリカでも大評判らしい。毎回、面白くて目がはせない。なにより興味深いのは、館の使用人たちの人間模様だ。執事以下、「従者」「第一下僕」「第二下僕」「家政婦長」「侍女」「メイド」などなど、厳格に身分が違う使用人たちの間の愛憎劇が、私にとってはこのドラマの大きな魅力だ。カズオ・イシグロの「日の名残り」を思い出させる。
名優マギー・スミス(写真下の左端)初め、出演している役者たちもすごい。特に存在感があるのは、執事のカーソンを演じるジム・カーターという役者だ。うーん、いい役者だ・・・・・・。
それにしてもヨーロッパの歴史と文化は少しは学んできたつもりだけれど、初めてイギリス人のことがよく分かった気がした。優れたドラマや映画の力は偉大だ。
見ていて感じるのは、ヨーロッパで「ジョンブル」といわれるイギリス人の気質である。フランス人は「マリアンヌ」といわれ、よく、対照される。イギリス人は良く言えば、不屈の精神を持ち、律儀で地道な反面、頑固で形こだわり、そのため冷たい感じがし、プライドも高い。一方、「マリアンヌ」はフランス革命に表わされるように自由と革新の気風にとみ、人間くさく、感情表現も豊かで、ラテン人的な享楽的なところがある。もちろん、フランス人にもイギリス人に通低する質実剛健な「ゴーローワーズ」気質が一方にあることも確かだが・・・。
ドラマの中に出てくる整然とした振る舞いの登場人物たちの内面が、実は、きわめて人間くさく、まさに愛憎織り成す日常生活を送っているのが、とにかく面白い。感情抑制の利いた使用人たちの心の内はどろどろなのだ。脚本家の実力,相当なものがある。
世界的なブームにもなっているこんな優れたドラマも、日曜の夜中にしか放映できないところにいまの日本人の寂しい現実がありはしないか? タレントたちが馬鹿騒ぎするゴールデンタイムの年末番組には辟易を通り越して、ただただ悲しい。
