絵画教室下落合アトリエ基礎コースの今年度最重要カリキュラム「キュビスム演習」がいよいよ始まりました。テーマは「再構築の感覚をつかむ」です。はてさて、どういうことでしょうか?
目の前のモチーフを見たままそっくりに上手に描く事が、いい絵を描く事だと思われている初心者の方は多いと思います。「見たまま」を描く事を写生といいます。美術を学ぶ基礎段階において、写生は観察力や客観的な空間感ならびに質感などを表現する力をつける訓練として非常に重要です。しかし十分にその力がついたなら、果敢に次のステップを目指しましょう。
モチーフの客観的再現にのみ捕らわれることなく、自らのリアリティーを追及しオリジナルの表現を模索するのが次の段階です。目に映る世界をいったん頭の中で解体し、自分のリアリティーと照らし合わせて組み立てなおす。そして作品として表出することを「再構築」と言います。今回、基礎コースのみなさんにはキュビスムを学ぶことを通して、この「再構築」の概念を身につけてもらおうというのがこのカリキュラムのねらいです。
パブロ・ピカソ【アヴィニョンの娘達】
そもそもキュビスムとは何なのでしょうか?
20世紀初頭にパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックのよって創始され、多くの追随者を生んだ現代美術の大きな動向をキュビスムといいます。その特徴は主に二つ挙げることが出来ます。まずひとつ目は、ルネサンス以来の単一焦点による遠近法を放棄し、複数の視点による対象の把握と画面上の再構築です。そしてふたつ目は、形態上の極端な解体・単純化・抽象化です。
フォーヴィスムが「色の革命」と言われたのに対し、キュビスムは「形態の革命」と言われました。
キュビスムについて板書と画像を使って解説。
ピカソとブラックが研究を深めたキュビスムは主に四つの時代に分けることが出来ます。
①セザンヌ的キュビスム
ジョルジュ・ブラック【エスタックの家並】
②分析的キュビスム
パブロ・ピカソ【ヴォラールの肖像】
③総合的キュビスム
パブロ・ピカソ【グラスとシュズの瓶】
④ロココ的キュビスム
パブロ・ピカソ【若い娘の肖像】
今回このカリキュラムにおいてみなさんには、分析的キュビスムを実践してもらいます。
まずは講師がお手本のデモンストレーションです。
水差しをモチーフにしてキュビスムの手法で描きます。
立ったり座ったりしながら複数の視点を導入して描きます。
物の形にこだわらず、画面の構造的な線のリズムから描き始めます。
片ぼかしの技法で調子をつけていきます。画用紙に木炭で描きました。
みんな興味津々ですね!
今回のモチーフはこちら!
二年前、現在の上級コースの方々が基礎コースだった時の「キュビスム演習」で描いたモチーフとまったく同じモチーフをセットしました。その時に描いた作品を参考作品としてご紹介します。
その他、巨匠達の作品です。
ピカソ【アルルカン】
ピカソ【ウィルヘルム・ウーデの肖像】分析的キュビスム
フェルナン・レジェ 【燭台のある静物】
アルベール・グレーズ【収穫物の脱穀】
さあ、全6回の「キュビスム演習」。たっぷり時間はありますので、4月からの半年間で学んだ内容を総動員し、じっくり取り組んで実りあるものにしましょう!
絵画教室 下落合アトリエ
講師 村尾 成律
www.shimorie.com