久しぶりに詩を書いてみました

「愛する者」

お願いですから
命を助けてあげてくださいと

命を奪おうとしている
何者かに

切に・・・切に・・・

私は懇願していた


その時
目の前をさーっと横切る

ふっくらとした体!
ふさふさとした毛並み!
しっかりとした足しどり!

それは若い頃の愛犬だった


くりかえし
つぶやく自身の声と
ぐっしょり濡れた涙で
私は夢の世界から
一気に
現実の世界に引き戻された


目の前にいるのは
大きな目で私をいつも追いかけていた
オヤツが大好きで
私の膝にのるのが好きで

私を守ろうと
散歩やチャイムで
けたたましく吠えては
私を困らせていた

もはやあの元気な犬ではない

自分の名前も私のことも
すっかりわからなくなり
うつろな目で声もださず
動物園で見るような
サークルの中をただ歩き回っている

ガリガリに痩せ細った
足腰の弱った老いた犬

長生きしてほしいと思う気持ちの裏側に
醜い気持ちが潜んでいることを
私はずっと気がついていた

この者がいなければ
毎日、こんな大変な思いはしないだろうに

私に足かせをはめる
この者がいなければ

いつでも 自由に
どこにでも飛んでいけるのに

自分でも認めたくない
ドロドロとした
醜い気持ち


今朝の夢は
もうひとつの
別なところに隠れていた気持ちを
夏の明るい日差しのもとに
はっきりと
さらけだしてくれた

私はこの者を失いたくない
私のそばにずっといてほしい
いてくれるだけでいいんだ

愛しているのだからと

白鳥鈴奈