最後の日、 | 美術家 村岡信明 

美術家 村岡信明 

漂漂として 漠として  遠い異国で過ごす 孤独な時の流れ
これを 私は旅漂と呼んでいる

最後の日

 

オリエント大学最後の講義が終わった。主題は「祈りの美学」真剣なまなざしで聞いていた学生たちが印象的であった。一緒に聞いていた哲学部主任教授(女性)も異宗教・異文化・異民族を超えた持論「死と生の哲学」に強い関心をもってくれた。

 

夕方、バザールに行き、すっかり仲良くなった陶器売り場のキヨーシャに会いに行った。記念に、とラクダに付ける立派な水入れ壺をくれたが、荷物になるからと辞退した。

「センセ、また来てね」と身内のように別れを惜しんでくれた。

「センセ、次は何処に行くの?」 「北極に近い北欧の港町ベルゲン」。と話してから最後の別れの言葉が無意識に出た。それは子供の頃から使っている下町言葉

「あばよ!」

 

2022年7月29日,金