夜よ明けるな、 | 美術家 村岡信明 

美術家 村岡信明 

漂漂として 漠として  遠い異国で過ごす 孤独な時の流れ
これを 私は旅漂と呼んでいる

 

夜よ 明けるな

 

真夜中/アメリカが襲う空爆 

死の予告 サイレンが鳴りひびく

確実に/誰かが殺される そして

東京大空襲の地獄へつづく

 

黒い布を被った40㍗の裸電球

その下で/抱き合う親子

削られていく時 カチッ カチッ カチッ

ささやかな幸せ/最後の夜

 

生きて帰ってきてね、女の涙 母親の涙

父ちゃん 戦争に行っちゃうの

おどおどと 子供の涙

うしろ髪を引きずる 男の涙 父親の涙

 

夜の空が白むほど/引き裂かれる家族

朝が来ると戦場に向かう一銭五厘の男

幸せの すべてを奪う 戦争

夜よ 明けるな!

 

 

註 一銭五厘とは赤額の切手代。当時権力者たちは「一銭五厘で大衆はいくらでも集められる」と言っていた。大衆の人権などどこにもなかった。

 

村 岡  信 明 詩