宇野亜喜良展では、昨日触れたボッティチェリとメロッツォ・ダ・フォルリ以外にも、

様々な古典名画への参照がありました。

1)ブロンズィーノ、セザンヌへのオマージュ


下の2枚は中日新聞/東京新聞の「奥の横道」という連載から出ていた原画です。

 

左は見た瞬間、なつかしさいっぱい。

マニエリスム派の画家ブロンズィーノの「Venus, Cupid, Folly and Time」と題された絵の

一部分です。

プチ留学含めロンドン滞在中には連日ナショナルギャラリー(NG)に入り浸って

11時と15時のギャラリートークに参加。

なので、そのころ常設として掛かっていた絵は、身内のような思い。

 

右は言わずと知れたセザンヌの肖像と、彼がよく描いたサントヴィクトワールの山。

エクサン・プロヴァンスに旅行に行った際、セザンヌのアトリエは訪れたけど、

街中心部から見えるかなと思った山は見えず。残念でした。

 

 

 

ナショナルギャラリーで買った美術館のカタログから。

左で頭を抱える男が嫉妬、右で花びらを撒こうとする子が快楽、

クピドはヴィーナスの冠を取ろうとしている、、、などアレゴリーに満ちた作品。

 

 

セザンヌの数あるサント・ヴィクトワールの絵の中ではアーティゾンの一枚が一番好き。

おおらかさで群を抜きます(わたし的)。

この絵は写真を何度も撮っているけどすぐに見つからないので、過去ブログの写真から。

(ブリヂストン美術館時代のビルのショーウィンドウ部分)。

 

 

 

2)マン・レイ、キスリング

「裏窓のキキ」というこの作品。

マン・レイの「アングルのヴァイオリン」をまるまる利用しています。

その横に、フォルムがそっくりの洋ナシ風オブジェを並べて、

右上には、キスリングが描いたキキの絵。

 

 

 

「アングルのヴァイオリン」=Le Violon d'Ingresというのは

マン・レイのこの写真↓のタイトルでもあるけど、フランス語の慣用句です。

 

アングル(Ingres)は例の古典派の巨匠の名前。

そのアングルは、趣味のヴァイオリンもなかなかの腕前だったとか。

なので、本職じゃないけど、遊びの域を超えるような腕前の趣味を持つことを

アングルのヴァイオリンと形容します。

 

プルースト作品にはこれをもじって、Plume d'Ingres(アングルの筆)という造語が登場。

文才もあるヴァイオリニストのことを冗談半分でそう称していました。

 

 

 

ルーブルで見たアングル作品。↓

こうしたアングル作品をもじって生まれたのが上の写真です。

上のモデルはモンパルナスで売れっ子モデル、いわゆるミューズだったキキ。

 


 

 

画家たちのミューズというと、キキが真っ先に浮かびますが、

実は一番描かれたのは歌手のシュジー・ソリドールだったそう。

 

ルノワールのアトリエがある街、カーニュシュルメールのグリマルディ城(地中海近代美術館)に行ったときにそれを知りました。

ずらりとソリドールの肖像画のみが並んだ部屋がありあます。

彼女こそが、パリの画家たちがこぞって描いたミューズ中のミューズでした。

 

下の左は、クリスティアン・ベラール作。

ファッション画などを得意とした人。(あとの2枚はわからない)

 

 

下左が恋人でもあったレンピッカの作。(レンピッカも女性です)

下右はピカビア作。

 

 

 

3)再びボッティチェリ

 

再びボッティチェリのプリマヴェーラを使った作品。

プリマヴェーラと宇野さんの絵はいかにも親和性がありそう。

 


 

 

 

こちら、全体像を見ると壮観です。

写真とイラストのコラボ作品がズラリ。

こちらも昨日同様マックスファクターのポスターで、Pan-Cakeの文字も見えます。

今の人は食べるパンケーキしか浮かばないだろうな。

 

 

 

4)オマケ

これは古典オマージュとは全く関係ないけど、とにかく美しい――。

伊集院静さんの作品の映画ポスター。

自伝要素のある作品ということで、

映画に出演しているわけではないけれど、

亡き夏目雅子さんを意識して描いていると思えるのですが。

 

 

映画を見た人にはおなじみのポスターでしょう。

この映画名で検索をかけると、この画像もたくさん出てきました。