東京建築祭の話をちょっと中断。
6月16日で終わってしまう東京オペラシティ アートギャラリー/宇野亜喜良展の話を。
SNSでもすこぶる評判がよく、「日曜美術館」でも特集された展覧会です。
妖しげなでコケティッシュな女性の絵を描く人、というイメージでしたが、
とんでもない。
カテゴライズするのは不可能。型破りでオールマイティ。
画風はなんでもこなし、童話から写実まで。
二次元ものから立体ものまで幅広くカバー。
まさに才能の塊でした。
ここで再び、”わたし的”な感想を。
1)マスターピースへのオマージュ
あれ?見慣れた絵が背景に入り込んでいる、、、
そんな瞬間が多々ありました。
ピカソ、セザンヌ、フランドル派、円山派、、、などなど、
過去の傑作を取り込んだ作品を結構作っていました。
たとえばこのマックスファクター(なつかしい!)の化粧品広告。
ボッティチェリのプリマヴェーラのなかにモデルさんを配置しています。
10年前にウフィツィ美術館で撮影した現物を。↓
女性の体のひねりが、逆くの字から、くの字に反転させているのはわざとかな?
うゎー、こんなものまでいじってる!と感激したのがこちら。
ヴァチカン美術館で見た、壁画・奏楽の天使シリーズのひとつです。
左に見える天使の羽ですぐにわかりました。
(その上に、宇野さんは羽の生えた女性を重ねている。)
作者はメロッツォ・ダ・フォルリ。ルネサンス期のもの。
このシリーズは私のお気に入りで、ヴァチカンでも何枚も写真を撮ってきました。
宇野さんの本作は、下の写真の一番右のマンダリンを弾く女性を土台にしています。
私は中央のバイオリンを弾く女性が一番のお気に入りだけど、
こちらも、体の傾き具合など優美で好きです。
すかさず並べてみました!
2)えぇ?あの新聞小説の挿絵をしてた方だったのかぁ・・
宇野さんの画風というとすぐ浮かぶのがこの下の絵のような女性像。
ところが、それは全作品群のなかの、ほんの一旦。
なんとあの新聞小説の挿絵を手掛けたのが宇野さんだったとは!
それは、、、日経新聞で以前連載していた「韃靼の馬」。
蒙古の話だったなぁと思い出すけれど、挿絵は余り気に留めていなかったなぁ。
今回「韃靼の馬」で使われた挿絵の原画が6枚出ていました。
カラーペン1色、ないし2色で描いていたようです。
文章は辻原登さん。
つい最近まで連載していた日経新聞「陥穽」も辻原さんでした。
その時の挿絵は既に書いたとおり、小杉小二郎さん。小杉放菴のお孫さん。
アップ↓
このへんはまだ宇野さんのイメージだけど・・
北方謙三・文「活路」↓
このあたりになると、画家の名前が伏せられていたら、同定不可能。
この躍動感、かっこいいなぁ。
住み替えの具かわからないけど、細かいしぶきを散らしています。
一見、写真のようなこれも。
「日曜美術館」では、30分でさらさら一つの作品を作り終えていました。
かなりの早描きみたいなので、新聞小説も、苦ではなかったのでは?
高橋克彦・文「京伝怪異帖」↓
3)昔の広告・パッケージ キャッチまで担当
最初の方のコーナーで、注目したもの:明治のチョコレートのパッケージや
カルピスの宣伝といった広告メディア。
左は花のなかに埋もれるハープの図。こうした花の枠はほかにも何種類も描いていて、
スケッチ段階のものも展示されていました。
ちなみにダブルミルクチョコのお値段は70円也。
カルピスの「清純の味」というキャッチは宇野さん作。
当時は独立したコピーライターがいなくて、画家がそれを補っていたとか。
でもそれだけでなく、舞台美術も引き受けるなど、活躍の場の広さが目につきました。
想像以上の充実ぶりで、2回に分けて書きます。
つづく。