上野毛で安藤忠雄氏設計の駅舎見物と、五島美術館所蔵「源氏物語絵巻鑑賞をしたあと

向かったのは、桜新町でした。

 

桜新町というと、学生時代、駅そばに住む友人の家で持ち寄りパーティなどをした思い出の場所。

駅周辺は電線地中化でとても小奇麗な街、という印象です。

 

目的地は、駅からもほど近い長谷川町子美術館/記念館。

初訪問でした。

これまでその存在は知っていたものの、サザエさんの生みの親・町子さんの

業績を概観する美術館だとばかり思っていたのですが、それは大きな誤解でした。

 

建物は道を挟んで2つに分かれていて、美術館のほうは、

町子さん姉妹が収集してきた美術品を展示する場として使われています。

 

↓美術館

 

↓記念館。奥に美術館が見えます。

 

 

もともとお姉さんが油絵、妹の町子さんはマンガに没頭し、

2人で二科展などをよく見に行ったそう。

有名人の作だからいい絵だとは限らない、という信条のもと、

画家の名前抜きでとにかく絵を2人で品評する日々。

 

やがて「サザエさん」ベストセラーなどで余裕が出ると、絵を買い始めます。

画家の名前は相変わらず気に留めず、純粋に独自の美意識で購入を決定しました。

 

いいと思ったら猪突猛進。

山口華楊「雨歇む」の絵などはすでに京都の美術館に収まることが決まっていたものを

拝み倒して交渉してもらい、入手。

加山又造なども、会場入りするやいなやいち早く目を付けてゲット、など。

 

やがて陶芸も収集開始します。

そんなあるとき、築地「田むら」の大旦那が自宅を訪問。

東山魁夷の絵を誇らしげに飾っていたところへ、大旦那が放った一言で

町子さんはヘコみます。

「いくらいい絵があってもうちだけで見るのじゃねぇ。うちの場合は多くのお客さんに

見てもらえます」。

 

もやもや感を抱え、やがて決意します。美術館を作ろう。

弁護士と相談し、申請書を出すものの、美術館設立ブームでなかなか審査が下りず。

ようやく昭和60年に開館にこぎつけます。

収集品は、日本画311点、洋画250点、など、約800点余り。

それを、テーマに沿って、展示替えをしていきます。

今は、収蔵コレクション展「人物を描く」と題して人物画が並んでいました。

 

シャガール、ピカソ、ルノワールや日本人画家の作品など。

岸田劉の水彩画や、被写体として一躍有名になった麗子さんの娘・岸田夏子さんの

作品も。

写実派の森本草介さんの絵もあり、目の付け所が多彩だなぁという印象。

私は10年前、三越の展覧会で初めて森本さんの絵と対面しました。

最近でこそ名前が売れているけれど、2010年開館のホキ美術館が買い集める以前は、

それほど高名な画家さんというわけではなかったのでは?

1992年に没した町子さんが生前中に森本氏の絵に目を付けたとしたら

すごい先見の明だなぁ。

(或いは2012年まで長生きされたお姉さんの毬子さんが購入したものかもしれませんが。)

 

同じく写実派の池田清明さんの作品もありました。

珍しい所ではワイズバッシュの版画作品も。

独自の価値判断で買い集めた様子がうかがわれました。

 

一方、記念館のほうは、推察通り町子さんの画業を概観できる内容でした。

とはいえ、こちらも展示替えがあるようなので、切り口はその都度少しずつ

変わるようです。

 

記念館の一部のみ写真撮影がオーケー。

 

迷いのない早描きで、味のある作品を次々生み出した町子さん。

とにかく描線に魅せられました。

素晴らしい才能。

圧巻でした。

 

 

サザエさんの世界観

 

 

過去のマンガに出てきた落書きが再現されています。

のみならず、ゆびで自分たちも落書きをすることができます。

 

 

 

近くの公園にて