行ってきました、リニューアルオープンの三の丸尚蔵館。

改築前のときからそうしていたように、こちらの美術館に行くときは、

何が展示されているのか、今回も内容チェックなしに足を運びました。

 

そして2つ目の展示物を前にして、ちょっと興奮。

というのも、永青文庫で見たばかりの「蒙古襲来絵詞」(摸本と白描画)の

原本が並べられていたもので。

 

11/23の永青文庫感想を再掲すると:

摸本ではあるものの「蒙古襲来絵詞」がなかなか秀逸。

・・・・(中略)

実は「蒙古襲来絵詞」の原本を手に入れる機会が細川家にはあったものの、

当時の当主周辺は興味を抱かず。せっかくのオファーを辞退します。

まだ幼かった護立氏は、「購入しないとはなんたる見誤り!」、と子供心に嘆いたと言われます。

恐るべし幼少期からの鑑識眼!

 

そう、細川家が入手しなかった原本が、そのあとどこに行ったかというと

永青文庫の解説にあったとおり、最終的に宮内庁の買い上げになったのです。

摸本に続き、まさか一気に原本が畳みかけるように目の前に現れるとは予想外。

 

しかも、三の丸で展示されていたのは、「蒙古襲来絵詞」2巻のうち、後半部分。

永青文庫で目にしたのは前半部分なので、これで合わせて両方見られたことになります。

 

館内のスライドでは、展示されていない前半も映像で見ることができます。

↓この写真の上が永青文庫で見た前半。下が今回展示の後半場面。

(第一室は写真撮影OK)

 

 

 

こうして原本を見てみると、永青文庫の摸本(文政4年1821年)は、

絵の質としてはそれほど遜色ないなぁと感じます。

例えば、矢の攻撃を受けたこの落馬寸前のシーン↓などは、摸本も、

複製作業のために描かれた白描画も、迫力満点でしたから。

血潮が飛び散るシーンなど、勢いのいい筆運びで、下敷きにした絵をなぞるような

ためらいがちなところはありませんでした。

 

(下の写真は、三の丸のビデオに映し出された原本の図・今回展示にはない場面。)

 

 

 

ただ、摸本のほうは経年変化までは模倣していないので紙が新しく、

原本の本物らしさと時を経た渋みはないな、と改めて感じます。

原本でかすれている部分は補筆をしているので、原本に似せようというより

むしろ描かれた当初を再現しようという意識があった気がします。

 

こちら、国宝指定を受けているので保管要件などはかなり厳しいはず。

経費的には、永青文庫が所持せず三の丸の所蔵になって、結果的には

(永青の懐具合を鑑みると)よかったのかもしれません。

 

 

 

主人公の竹崎季長。

赤字で季長と書かれています。

巻ものなので、縦皴が結構ついています。

 

 

 

その後季長は待ちきれずに自分で船を調達して先に蒙古軍のいる場所へと移動。

後続部隊が季長の船に乗り込みます。

この場面だけ、かなり抑制された色調になっています。

前半が色鮮やかなだけに、対比的に目を引きます。
 

 

 

岩佐又兵衛よりずいぶん前の時代の作品ながら、

それぞれの個性が出ていて、しかも装束の細かい模様まで描きこまれていて感心しきりです。

 

 

 

 

もうひとつ話題になっているのが、伊東若冲の「動植綵絵」。

現在出ているのはこの4種類。

期間中、展示替えあり。

東京都美術館の伊東若冲展で全30幅が出たとき、展覧会に3回足を運んだので、

十分見た気になっていたけれど、一番右の「菊花流水図」は

記憶から完全に消えていました。

ハート形の羽をもつ鳳凰はやはり透き通るような羽が魅惑的。

 




第2室は「令和の御代を迎えて」という皇室関連展示です。

個人的には既視感があって、そちらはさらっと見ただけ。

国学院博物館で見慣れていた慶事関連展示をランクアップした内容。

一流品揃いではあるのですが、やはりもっぱら力を入れて見たのは第一室。

滞在時間は1時間弱でした。

 

春日権現験記絵についても描きたいけれど、また後日。