東京国立近代美術館「ガウディとサグラダ・ファミリア展」その2。

 

会場内にはサグラダ・ファミリアの模型が2つほどあって、

内部構造を解き明かしたこちらの模型↓からわかるとおり、柱が独特の形をしています。

 

内部のイメージである「森」にぴったりの形状ともいえ、

上方に向かってどんどん多面体になっていく構造。

 

 

 

以前この柱の解説を聞いたときに使用されていた説明が、会場内の

ビデオでも流れていました。

ねじれ構造で、多面体の面が上に行くに従い増え、円柱に近づいていく作りです。

 

 

 

堂内の「森」構想は、ガウディが考えたものというより、伝統的な考え方なのだそう。

ガウディはそれぞれの樹木となる柱に写実性を与えた、、、という点がポイント。

柱の見本もあります。

 

 

 

それからこの模型、1面のみ外壁がついていて、その部分を撮影したのが左の写真。

採光をかなり重視しています。

同じ模型の内部を見ると(右の写真)柱も含めあちこちに光を通す仕掛けになっています。

 

 

こちらは2020年時点の内部写真(会場のパネル)。

 

 

 

クリプタ内部の装飾品のコーナーには、1898年作という古い燭台などがありますが、

こちらも面白いことに柱と同様、螺旋が使われていました。

こうしたコンセプトの繰り返しがそこここに見られます。

 

 

 

最近の畳みかけるような工程進捗により、
私が行った2009年にはなかったものが続々完成しています。

 

なかでもマリアの塔はぜひ見てみたい、特に夜。

今回そのマリアの塔の上にある星の冠の試作品が来ています。

この冠が煌々と輝く夜景は高精細映像で見ることができるのですが、

夜空に輝く星は凛として極上の美しさ。

少し低い使徒の塔からの光も受けるそうで、光の演出はあらかじめガウディの構想に

あったもの。

 

工房がスペイン内戦で火災に遭い、ガウディがしたためた資料の多くが失われるなか、

外尾悦郎氏らは、ガウディや神に都度打診するかのように制作を進めています。

決して自分自身の創造をしてはいけない、どう作られるべきかをとことん考える、というのが基本スタンス。

あくまでも定められたあるべき姿に寄り添い、有形無形の指針に沿って謙虚に進めていることを強く感じます。

 

 

このマリアの塔の位置ですが、模型でいうと十字架のある塔の左下に当たります。

 

 

別の角度のこの写真でいうと、一番右の塔がそれです。

 


 

個人的に感激したのはユダの接吻の彫刻模型が来ていたこと。(写真撮影禁止)

下はバルセロナ訪問時の写真。

 

 

左下のこれです。

絵画でも、やはりこの画題(ユダの接吻)の場面はつい注目してしまいます。

スクロヴェーニ礼拝堂にあるジョットのフレスコ画しかり。

 

 

 

サグラダ・ファミリアのどこにどの彫刻が配置されているかについては、こうした一覧がありました。

でもそれ以外に、系統的に各々の彫刻を網羅したかたちにはなっていません。

全体的にどちらかというと大づかみです。

入手できたものを展示するしかないので仕方ありませんが。

 

 

 

サグラダ・ファミリアの展示コーナーより手前の部屋では、

ガウディの新機軸ともいえる構想を紹介していました。

あっと驚く「逆さ吊り実験」です。

 

19世紀のヴィオレ・ル・デュクも唱えた「創造の原理は自然の法則にしたがうことだ」という論理から派生している由。

写真の上部分は、糸・鎖の両端を固定してたらしてできた下向きの逆アーチ。

下は鏡になっていてそれを映し出しています。

つまり、上の吊り下がりを上下反転して塔に応用すると、鏡に映った下の構図になるという仕組み。

ヴィオレ・ル・デュクについては賛否両論分かれるところで、私はプルーストのバイアスが入っているので、評価していません。

 

 

 

1891年当初のサグラダ・ファミリアから進化していった様子がわかります。

 

 

 

ガウディの1888年バルセロナ万博会場通行証。

 

 

 

点数も100をゆうに超える力のこもった展覧会。

鑑賞者によってつかみどころは様々に異なることでしょう。